休職を検討している人が気になるのは、休職中の給料がどうなるかでしょう。「仕事を1ヵ月休んだ場合、給料はどうなる?」「休職中でも給料は受け取れる?」「もらえるとしたらいくら?」など知りたいことはありませんか。
休職中に給料をもらえるかどうかは、会社員なのか公務員なのか、給与補償制度を設けている会社なのかどうかによって異なります。
この記事では、休職中の給料がどうなるのかについて解説します。
- 休職中に給料をもらえるかどうか
- もらえる場合いくらなのか
- 休職するときの注意点
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【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
休職を検討している人が気になるのは、休職中の給料がどうなるかでしょう。「仕事を1ヵ月休んだ場合、給料はどうなる?」「休職中でも給料は受け取れる?」「もらえるとしたらいくら?」など知りたいことはありませんか。
休職中に給料をもらえるかどうかは、会社員なのか公務員なのか、給与補償制度を設けている会社なのかどうかによって異なります。
この記事では、休職中の給料がどうなるのかについて解説します。
休職とは「従業員が何らかの理由で働くことができなくなった場合に、会社が従業員に対して労働契約を維持しながら労働義務を一時的に免除すること」を指します。
会社を辞める場合は収入がなくなりますが、休職制度があれば、ある程度の収入が維持できる可能性があります。しかし、休職制度設置は会社に義務付けられていません。会社ごとに休職制度の有無は異なるため、休職を検討している人は自社の就業規則を確認しておきましょう。
法律上、会社が休職中の従業員に対して給料を支払う義務はないため、休職中は無給となることが一般的です。休職中の賃金や休職期間、休職が認められる事由など、休職に関するルールは会社が任意に定めるものです。勤務先の就業規則を確認しましょう。
会社を休んでいる間に給与の支払いがない場合、健康保険や労災保険から手当や給付金を受け取れます。休職理由によって受け取れる手当や給付金の種類は異なりますが、休職前の給与の3分の2程度をカバーできます。
公務員が業務外のけがや病気が原因で療養が必要となった場合、給与が全額保証される「病気休暇」を90日間取得できます。その後も1年間は、給与の80%が支給されます。
休職から1年を経過すると無給となりますが、3年間は復職が可能なので、公務員は民間企業の会社員より恵まれているといえるでしょう。
給与補償制度とは、けがや病気などの理由で就労できなくなった場合、その従業員の給与を補償する制度です。給与補償制度を導入している企業では、休職中でも給与の一部が保証される可能性があります。
会社が制度を導入しているかどうかは、就業規則を確認すればわかります。
休職をする際の注意点は、以下の通りです。
休職中であっても、会社に勤務していることに変わりはありません。休職中に給与が支払われない場合でも、社会保険料を納める必要があります。
また、社会保険料の減額措置などもありません。休職中であっても、勤務時と同等の社会保険料の負担が発生することを理解しておきましょう。
自己都合で休職する場合には、休職中でも会社と連絡が取れるようにしておくことが望ましいです。
会社は従業員が休職している間、人員配置を調整して復職を待っています。休職中の従業員の状況を把握できれば、人員配置の目途が立ちやすく、復職がスムーズに進むでしょう。
病気やけがの療養のために会社を休むときに受け取れるお金について解説します。
病気やけがの原因が「業務外」の場合は健康保険から傷病手当金を、「業務上」の場合は労災保険から休業(補償)給付を受け取ることができます。
傷病手当金は、業務外のけがや病気(私傷病)の療養のために、会社を休むときに受け取れるお金です。病気には適応障害やうつなどの心の病気も含まれます。連続3日休んだあと、4日目から最長1年半、日割り計算で休職前の給料(標準報酬月額)の3分の2を受け取れます。
申請には、給与の支払いの有無について会社からの証明が必要になります。1ヵ月以上など休職期間が長期にわたる場合は、1ヵ月単位、給与の締日ごとに申請するのがおすすめです。
受給金額の基準となる標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金の保険料を算出する際にも用いられます。健康保険の場合は第1級の5万8000円から第50級の139万円までの50等級に区分されています。
どの等級に区分されるかは毎年4月・5月・6月に支払われた賃金(基本給に通勤手当、残業手当などの各種手当を加えた月収)をもとに決められ、変動がない限りその年の9月から翌年8月まで適用されます。
自分がどの等級に属するか知りたい場合は、給与から天引きされている健康保険料と加入している健康保険の保険料額表を照合してみましょう。
傷病手当金の概要は、以下の通りです。
以下のすべてを満たすこと
支給開始日から1年6ヵ月
支給開始前12ヵ月間の標準報酬月額の平均額÷30×2/3×日数
(※)30日で割ったところで1の位を四捨五入、2/3を掛けた金額に小数点があれば、小数点第1位を四捨五入
傷病手当金支給申請書に必要事項を記入し、加入している健康保険に提出する
(※)原則、申請手続きは勤務先を経由して行う
病気で長期休暇した場合は、給料の3分の2が支給されます。
なお、加入している健康保険によって傷病手当金の扱いが異なるので、自分の加入している健康保険のルールを確認してください。
健康保険の種類 | 加入する人 | 傷病手当金の扱い |
---|---|---|
協会けんぽ | 主に中小企業の会社員 | 前述の通り |
組合健保 | 主に大企業の会社員 | 前述の内容に加え、付加給付を受けられる場合がある |
共済組合 | 公務員 | 受給金額の計算方法が「÷30日」ではなく「÷20日」 |
国民健康保険 | 自営業者や未就業者 | 傷病手当金がない(給与取得者であることが前提のため) |
自営業者やフリーランスの方が加入する国民健康保険には傷病手当金がないため、病気やけがのリスクには民間の医療保険に加入するなどして自分で備える必要があります。
最低限加入しておくべき保険の選び方については、こちらの記事「最低限入っておくべき保険は何?目的別・年代別に解説」も参考にしてください。
休業(補償)給付は、通勤中や業務上のけがや病気の療養のために会社を休むときに受け取れるお金です。通勤中の事故(通勤災害)が原因の場合は「休業給付」、業務上の事故(業務災害)が原因の場合は「休業補償給付」と呼びます。
療養開始から1年半、休業(補償)給付と休業特別支給金を合わせて、休職前の給与の80%を受け取れます。1年半を経過してもなお療養が必要な場合や、障害が残ってしまった場合は、傷病(補償)年金を受け取れます。
なお、休業(補償)給付には、傷病手当金と同じく3日間の待機期間があります。この3日間は、業務災害の場合に限り、会社から労働基準法の規定に基づく休業補償が支払われます。
法律上、休業補償の金額は1日あたり平均賃金の60%以上とされていますが、実際には100%支払われることが多いようです。
休業給付・休業補償給付の概要は、以下の通りです。
以下のすべてを満たすこと
療養開始から1年6ヵ月
休業(補償)給付=給付基礎日額×60%×日数休業特別支給金=給付基礎日額×20%×日数
(※)給付基礎日額は、事故発生日または診断日の直前3ヵ月間に支払われた給与の総額(ボーナスを除く)をその期間の暦日数で割った金額
休業(補償)給付支給申請書に必要事項を記入し、所管の労働基準監督署に提出
(※)原則、申請手続きは勤務先を経由して行う
障害年金とは、病気やけがで生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代も含めて受け取れる年金です。障害年金は「障害基礎年金」と、「障害厚生年金・障害手当金」の二段構成です。
厚生年金に加入している間に、障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になった場合は障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。
障害の状態が2級に該当しない程度の障害の場合は、3級の障害厚生年金、初診日から5年以内に病気やけがが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残った場合は、障害手当金が支給される仕組みです。
障害基礎年金、障害厚生年金・障害手当金を受け取るためには、年金の請求手続きが必要です。年金事務所や市(区)役所または町村役場に相談してください。
障害基礎年金の概要は、以下の通りです。
以下のすべてを満たすこと
永久認定の場合は死亡するまで、有期認定の場合は一定期間
1級67歳以下:99万3750円+子の加算額
1級68歳以上:99万750円+子の加算額
2級67歳以下:79万5000円+子の加算額
2級68歳以上:79万2600円+子の加算額
(※)子の加算額:2人まで1人につき22万8700円、3人目以降1人につき76万200円
障害厚生年金の概要は、以下の通りです。
以下のすべてを満たすこと
永久認定の場合は死亡するまで、有期認定の場合は一定期間
1級:報酬比例の年金額×1.25+(配偶者の加給年金額22万8700円)
2級:報酬比例の年金額+(配偶者の加給年金額22万8700円)
3級:報酬比例の年金額
(※)3級の最低保障額:67歳以下59万6300円、68歳以下59万4500円
障害手当金の概要は、以下の通りです。
以下のすべてを満たすこと
永久認定の場合は死亡するまで、有期認定の場合は一定期間
最低保障額:59万6300円
家族の介護のために会社を休むときに受け取れるお金について解説します。
介護休業給付金は、常時介護を必要とする家族のために介護休業を取得するときに受け取れるお金です。介護休業給付金と育児休業給付金は同じ雇用保険における雇用継続給付の一種なので、受給要件や受給金額がよく似ています。
受給金額は育児休業給付金と同じく休職前の給料の67%ですが、介護休業給付金には社会保険料の免除制度はありません。
介護休業給付金を受け取れる期間は、一度の介護休業につき最長93日間で、介護対象となる同じ家族に対して最大3回まで申請することができます。
介護休業給付金の概要は、以下の通りです。
以下のすべてを満たすこと
以下の両方を満たすこと
介護対象となる同じ家族について93日(約3ヵ月)を限度に3回まで
休業開始前6ヵ月間の賃金日額(※)×67%×日数
(※)休業開始前6ヶ月間に支払われた給与の総額(ボーナスを除く)を180日で割った金額
勤務先の所在地を管轄するハローワークに下記の必要書類を持参する
<初回>
<2回目以降>
(※)原則、申請手続きは勤務先を経由して行う
なお、育児休業給付金と同じく、介護休業給付金にも上限額と下限額があります。
上限額 | 下限額 | |
---|---|---|
賃金月額 | 49万9800円 | 7万5000円 |
受給額(賃金月額×67%) | 33万4866円 | 5万250円 |
育児休業給付金と同様、介護休業中に会社から給料が支払われている場合、給料と介護休業給付金の合計額が「賃金日額×80%」を超えると、超過した分だけ介護休業給付金も減額されます。
介護費用やその負担を軽減する方法についてはこちらの記事「親の介護費用はいくら?支援制度や費用負担について話し合うときのポイント」でも解説していますので、併せてご覧ください。
会社都合で休職せざるを得ないケースでは、自己都合とは異なり、手当の支払いに関して法的なルールが定められています。
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由のある休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とされています。これが休業手当です。
休業手当の概要は、以下の通りです。
労働基準法の労働者
(※)アルバイトやパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者なども含む
会社都合による休業
休業日数
給与の6割
会社に対して申請する
出産や育児のために会社を休むときに受け取れるお金について解説します。
出産手当金は、出産のために産前・産後休暇(産休)を取得するときに健康保険から受け取れるお金です。出産日以前の42日から出産翌日以降56日目まで、日割りで休職前の給料の3分の2を受け取れます。
妊娠悪阻(つわり)(※)や切迫早産、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの治療のために産休前に休まなければならなくなった場合には、傷病手当金を受け取れます。
その後、そのまま出産手当金を受給できる期間に入れば、出産手当金を受け取れます。原則、傷病手当金と出産手当金の両方を受給することはできません。ただし、出産手当金が傷病手当金よりも少ない場合には、傷病手当金を請求することでその差額を受け取ることができます。
(※)妊娠悪阻は医師の診断書があれば、自宅療養の場合でも傷病手当金の対象となります。
また、出産を機に退職する場合も、以下の条件を満たしていれば出産手当金を受け取ることができます。
さらに、出産手当金を受け取っている間は社会保険料(健康保険や年金)の支払いが免除されます。
育児休業給付金は、生まれた子どもの世話のために育児休業(育休)を取得するときに、雇用保険から受け取れるお金です。女性は産休を取得後、そのまま育休を取得するのが一般的ですが、最近は男性の育休取得も一般的になりつつあります。なお、育児休業給付金は男女関係なく受け取れます。
また、出産手当金と同じく、育児休業給付金を受け取っている間も社会保険料の納付が免除されます。ただし、職場に復帰することを前提とした制度のため、休職時点で退職が決まっている場合には対象外となります。
育児休業給付金を受け取れるのは子どもが1歳になるまでですが、「保育施設に入れなかった」などの事情がある場合は、申請を行うことで最長2歳になるまで延長が認められています。
受給できる期間は1歳(2歳)の誕生日の前々日までです。受け取れる金額は最初の180日間は休職前の給料の67%、181日目以降は50%となっています。
また、育児休業中に会社から給料が支払われている場合、給料と育児休業給付金の合計額が「賃金日額×80%」を超えると、超過した分だけ育児休業給付金も減額されます。育児休業中も週に何日かは出社して、その分の給料をもらっている場合などは注意しましょう。
自己都合による休職でも給与がもらえるかどうかは、会社員か公務員かで異なります。会社が休業補償制度を設けていない限り会社員は給料を受け取れませんが、公務員は給料を一定期間受け取ることができます。
ただし、出産や傷病など、休職の理由によっては手当や一時金が受け取れます。会社都合による休職の場合は、会社員・公務員ともに休業手当を受け取ることが可能です。
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