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親の介護に必要な費用相場は?親にお金がないときの対処法

執筆者:マネーFix 編集部

【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩

一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。

親が介護の必要な状態になったにもかかわらず、親にお金がないケースは十分に考えられます。その場合、介護費用を誰が出すかは大きな問題です。

「介護費用をどこから捻出すればいい?」「介護に充てられるお金がなくて困っている」と悩む人もいるのではないでしょうか。

この記事では、介護が必要になった際にどのくらいの費用がかかるのかを解説します。また、親に資金がない場合の対処法についても紹介します。

この記事でわかること
  • 介護が必要な親を施設に入れるための費用
  • 親の介護費用は誰が出すべきか
  • お金を工面できない場合に利用できる支援制度

親の介護にかかる費用相場

親が介護状態になった年齢や、要介護度やどこで介護を行うかによってかかる費用は異なります。

一時的な費用 平均74万円
月々の介護費用 平均8.3万円
介護期間 平均5年1ヵ月

生命保険文化センターの「令和3年生命保険に関する全国実態調査」によると、親の介護にかかる費用の平均は8万3000円(1ヵ月あたり)です。

介護をするにあたっては、住宅をリフォームしたり介護ベッドを購入したりするなど、一時的な費用もかかります。同調査によると、その平均額は74万円です。

介護にかかる期間は、平均5年1ヵ月です。毎月の介護費用と介護にかかる期間、そして一時的に費用を計算すると、合計で約580万円が必要になります。

なお、これはあくまでも平均値であり、要介護度や介護を行う場所によって費用は異なります。

要介護度で見る介護費用の相場

前述の調査によると、要介護度別の介護費用の相場は下表の通りです。

要介護度 一時的に必要な費用 1ヵ月あたりの費用
要介護1 39万円 5万3000円
要介護2 61万円 6万6000円
要介護3 98万円 9万2000円
要介護4 48万円 9万7000円
要介護5 107万円 10万6000円
出典:生命保険文化センター「令和3年生命保険に関する全国実態調査」(以下同)

要介護度が高くなるにつれ、1ヵ月あたりの介護費用が増えることがわかります。特に要介護3以上になると、約9万~10万円の費用が必要です。

一時的に必要な費用についても要介護度によって異なり、要介護3および要介護5だと100万円程度かかっていることがわかります。

介護場所で見る介護費用の相場

介護する場所によってもかかる費用は異なります。

在宅での介護の平均値は4万8000円ですが、老人ホームなど施設での介護となると12万2000円です。

在宅での介護と、施設での介護の月額費用の分布について調査した結果が下表です。

費用(1ヵ月) 在宅での介護 施設での介護
1万円未満 7.2% 0.4%
1万~5万円未満 39.9% 11%
5万~10万円未満 15.6% 17.8%
10万~15万円未満 5.5% 28.8%
15万円以上 5.8% 30.7%

在宅での介護は5万円未満が約半数を占めているのに対し、施設での介護は15万円以上が最も多く、全体の30%を占めていることがわかります。

親の介護費用は誰が出す?

親の介護費用については、親自身の収入や貯蓄で賄うのが一般的です。ただし、いつ介護状態になるかは予測できません。また、介護状態になったときに親自身に貯蓄や収入がないことも考えられます。

そのため、親の介護費用を誰が出すかも含め、早めに介護費用について話し合っておくようにしましょう。

親の介護費用について話し合っておきたいこと
  • 親が介護に希望する内容
  • 親の資産状況
  • 家族・兄弟の役割分担

親が介護に希望する内容

両親が介護状態になった際に、どのような介護を希望するのかを知っておくのは重要なことです。

  • 自宅で家族による介護を受けたい
  • できるだけ在宅サービスを利用したい
  • 介護施設へ入所したい

望まない介護サービスを受けることは、ストレスにもつながるので、できるだけ避けることが大切です。希望をかなえるためには、どのような手続きが必要なのか、費用はどのくらいかかるのかを確認しておきましょう。

親の資産状況

前述の通り、一般的に介護費用を捻出するのは親自身です。そのため、まずは親自身が介護状態になった際に、その費用を払えるだけの資産を保有しているかどうかを確認する必要があります。

両親の資産状況を確認する際には、以下の点をチェックしておくとよいでしょう。

  • 保有している銀行口座
  • 年金収入の状況
  • 有価証券の有無
  • 生命保険の契約状況
  • 不動産などの資産の有無
  • 負債の状況

また、ネット銀行やネット証券の口座を持っている場合は、ログインIDやパスワードを把握しておくことも忘れないようにしてください。

家族・兄弟の役割分担

在宅で介護を受けるにしても、施設へ入所するにしても、家族間もしくは兄弟間での役割分担を決めておく必要があります。

公的な介護サービスを受けるには、自治体の窓口に申請しなければなりませんし、医師の診断書なども入手する必要があります。民間の介護サービスを受けるには、契約手続きも必要です。

自治体の窓口への申請は、親の近くに住んでいる方が手続きがスムーズに進みます。また、民間の介護施設に入所するなら、候補を絞って検討する必要があります。資料の入手など、時間がある人が積極的に行うとよいでしょう。

家族の中でキーパーソンを決めておく

親に介護が必要になったときに備えて、あらかじめ「キーパーソン」を決めておくとよいでしょう。

キーパーソンとは、家族代表として病院やケアマネージャーとのやりとりをする人など、介護を進めるにあたっての中心的な役割をする人を指します。

キーパーソンが決まっていないと、突然親が意思疎通できない状況になってしまった場合などに、兄弟姉妹間で揉める可能性が高まります。普段は仲が良くても、「私は遠くに住んでいるから難しい」「子どもの世話だけで手一杯」「一緒に住んでいる人がやるべき」など、押し付け合いに発展してしまうケースもあるので注意が必要です。

介護費用を分担する

キーパーソンを決めると同時に、費用の分担についても話し合っておくことをおすすめします。

キーパーソンが介護費用の全額を負担する必要はありません。むしろ、キーパーソンだけに負担が偏りすぎないよう、それ以外の家族が費用面で積極的に援助するなど、それぞれの負担量を調整することで、円満に介護を進められる可能性が上がるでしょう。

介護費用が不足することがわかった際には、子どもや親族が負担するケースも考えられます。その際の負担割合について、あとでトラブルにならないよう、お互いが納得するまで話し合っておくことが大切です。

子どもや親族が介護費用を負担する場合の負担割合については、以下のようなパターンが考えられます。

  • 同じ割合で平等に出す
  • 一番お世話になっている人が多めに出す
  • お金に余裕のある人が出す
  • 物理的なお世話があまりできない人が出す
分担の例
  • 長女(親と同居)…キーパーソン。自宅での介護や通院の世話などを担当。費用負担1割
  • 長男(遠方在住)…実際の介護はほぼノータッチ。お金は出す。費用負担9割

1人だけが「介護疲れ」になったり、経済的に困窮したりしないよう、家族みんなで支えるためのルールを作っておくと安心です。

親の介護のお金がないときはどうする?

介護費用は一般的には親が支払うものですが、親に支払い能力がない可能性もあります。その場合には、家族や親族が負担することになりますが、家族や親族みんなで力を合わせても介護費用が賄えない場合もあるでしょう。

お金がなくて、介護費用を払えない場合の対処法は以下の通りです。

  • 障害者控除が適用されるか確認する
  • 世帯分離をする
  • 助成制度を利用する
  • 生活保護を受給する

障害者控除が適用されるか確認する

障害者控除とは、所得控除の1つで、納税者本人あるいは扶養家族や控除の対象となっている配偶者が障害者である場合に利用できます。

所得税法の障害者には、障害者、特別障害者、同居特別障害者の3つがあり、それぞれ控除額が以下の通り異なります。

  • 障害者:27万円
  • 特別障害者:40万円
  • 同居特別障害者:75万円

ここでいう同居特別障害者とは、特別障害者と生計を1つにしている配偶者もしくは扶養親族で、納税者本人や配偶者、生計を1つにしている親族のいずれかと常に同居している人を指します。

世帯分離をする

同居したまま住民票を別にすることを世帯分離といいます。

介護保険を利用する際の介護費用自己負担額は、世帯の所得によって決まります。そのため、介護が必要な親を別の世帯とすることで、親の世帯所得が減り、介護費用の負担額が抑えられる可能性があります。

助成制度を利用する

国や自治体が行っている、さまざまな助成制度を利用することもできます。具体的には、特定入所者介護サービス費や高額介護サービス費、高額療養費制度などが挙げられます。

特定入所者介護サービス費

介護保険施設に入居している人で、所得や資産などが一定以下の場合、負担限度額を超えた部分が介護保険から支給されます。

高額介護サービス費

介護サービスの月々の利用者負担額の合計が上限額を超えた場合、その超えた部分が介護保険から支給される制度です。上限額は利用者の所得に応じて区分されています。

高額療養費制度

その月の1日から末日までにかかった医療費が、所得に応じた規準を超えた場合、その超えた部分が加入している健康保険から還付される制度です。

高額医療・高額介護合算療養費制度

同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険の両方に自己負担が発生した場合、合算した後の合計額が軽減される仕組みです。

自治体による助成制度

自治体が行っている助成制度の中に、家族介護慰労金があります。要介護度4~5の人を、介護サービスを利用せずに1年間自宅で介護している家族に対して年間10万~12万円が支給されます。

生活保護を受給する

生活保護とは、資産やその人が持っている能力などすべてを活用してもなお生活に困る人に対し、その困窮度合いに応じた保護を受けられる制度です。

生活保護を受けるためには、要件を満たす必要があります。要件を満たせば、最低生活費との差額が保護費として受給され、介護費用を保護費で賄うこともできます。

生活保護を受けていても入所できる施設もあるので、本当に生活が苦しい場合は利用を考えましょう。

介護費用で困ったときの相談先

「介護が大変でつらい」「介護費用を工面できない」「どの支援制度が使えるかわからない」など、介護に関することで悩んだときは、以下の窓口で相談できます。

  • 地域包括支援センター
  • 社会福祉協議会

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、介護・福祉・保健医療に関する支援を行う「高齢者の総合相談窓口」です。

日本全国すべての市町村に設置されていて、ケアマネージャー(介護支援専門員)や社会福祉士、看護師などの専門家に相談できます。公的機関なので、相談費用は無料です。

必要に応じて医療機関や介護施設などにつないでくれるため、どこに相談したらよいのかわからない場合にも利用することが可能です。地域によっては、積極的に健康体操やセミナー、当事者の会などのイベントを行って知識啓発に努めているところもあります。

社会福祉協議会

社会福祉協議会は、地域のさまざまな福祉サービスを担っています。高齢者だけでなく障害者や子どもなど、助けを必要としている色々な人のサポートを実施しています。前述した地域包括支援センターの運営を社会福祉協議会が担当していることもあります。

社会福祉協議会が行っているサポートの例は、以下の通りです。

  • 1人暮らしの高齢者の見守り
  • 車いすの貸し出し
  • ボランティアの派遣
  • 認知症カフェなどの交流イベント

老後の介護費用の相談はFPがおすすめ

介護費用について不安を感じた場合には、ファイナンシャルプランナー(FP)への相談がおすすめです。

FPはお金の専門家で、介護費用をどのように用意すればよいか相談者の事情にあわせてアドバイスしてくれます。介護費用に利用できる制度についても教えてくれるでしょう。

介護費用だけでなく、家計の見直しや貯蓄のやり方、保険などお金に関する悩みに幅広く対応できるのはFPならではといえるでしょう。

FP相談を検討している方は、以下の記事も参考にしてください。
老後のお金の相談はどこで誰にする?資金計画やライフプランの立て方を解説介

この記事では、以下の内容を紹介しています。

  • 介護費用としていくら用意しておくべき?
  • 介護費用で家計が圧迫されていて不安
  • 民間の介護保険には加入しておいた方がいい?
  • このまま出費が続いても、自分の将来のためのお金は用意できる?

FPに相談することで、老後資金を貯めていくうえで心強いサポートを得られるようになります。この記事を参考に、自分に合ったFP相談サービスを探してみてください。

まとめ

親の介護費用は一般的には親が負担するものですが、中には資産がなく家族や親族が負担しなければならないケースもあります。その場合には、親がどのような介護を望んでいるのか、かかる費用を把握したうえで負担割合を相談する必要があります。

介護資金の調達に悩んだ際には、FPへ相談してみましょう。介護費用の調達方法だけでなく、介護に利用できる制度などをアドバイスしてくれます。

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