老後の生活資金を得る方法としては、退職金のほかに「確定拠出年金」もあります。
どちらがお得なのかは、その人の状況によって変わってきます。
この記事では、確定拠出年金と退職金を比較し、それぞれの受け取り方について解説します。
どちらが自分に向いているか判断する際の参考にしてください。
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老後の生活資金を得る方法としては、退職金のほかに「確定拠出年金」もあります。
どちらがお得なのかは、その人の状況によって変わってきます。
この記事では、確定拠出年金と退職金を比較し、それぞれの受け取り方について解説します。
どちらが自分に向いているか判断する際の参考にしてください。
確定拠出年金と退職金の違いは、下記の通りです。
企業型確定拠出年金 | 個人型確定拠出年金 | 退職金 | |
---|---|---|---|
積立金の運用 | 〇 | 〇 | × |
受給額 | 拠出額と運用実績による | 拠出額と運用実績による | 社内規定に基づく |
受け取る時期 | 60歳以降の退職時 | 原則60歳以降 | 退職時 |
受け取る方法 | 加入している運営管理機関に書類を提出 | JIS&T社に必要書類を提出 | 企業による |
税制優遇措置 | あり | あり | あり |
確定拠出年金とは、自己の責任において掛金を運用し、その運用結果に基づいた給付額を60歳以降に受け取る制度です。
金融商品の選定は自分で行い、運用商品は原則3~35種類の中から選びます。
確定拠出年金には、以下の2種類があります。
● 企業型確定拠出年金
● 個人型確定拠出年金
企業型確定拠出年金(通称、企業型DC)とは、従業員の代わりに企業が掛金を拠出し、従業員自身が掛金の運用を行う制度です。
そのため、金融商品の選定や資産配分の決定は、従業員自身が行います。
給付金の受け取りは、原則60歳以降の退職時です。
掛金の上限は、以下の通りです。
企業型確定拠出年金の場合、運用期間中の運用益が非課税になります。
また、給付金を受け取る際には、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として分割して受け取る場合は公的年金等控除の対象です。
個人型確定拠出年金(通称、iDeCo)とは、毎月自分で決めた掛金を拠出し、60歳以降に給付金として受け取る制度です。
掛金の運用は自分で行い、投資商品も自分で選びます。掛金の金額変更は、年1回のみ可能です。
個人型確定拠出年金の掛金の上限は、以下の通りです。
企業年金がない場合:月額2万3000円
企業型DCのみ加入:月額2万円(※1)
確定給付型年金のみ加入:月額1万2000円
確定給付型年金と企業型DCに加入:月額1万2000円(※2)
(※1)企業型DCの事業主掛金額との合計額が月額5万5000円以内
(※2)企業型DCの事業主掛金額との合計額が月額2万7500円以内
(※3)国民年金基金の掛金または国民年金の付加保険料と合算した金額
個人型確定拠出年金も、企業型確定拠出年金と同様、税制優遇を受けることができます。
運用期間中の運用益は非課税です。
また、給付金を受け取る際は、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として分割して受け取る場合は公的年金等控除の対象となります。
確定拠出年金のメリットは、以下の3つです。
1.税制優遇が受けられる
運用期間中の運用益が非課税になるだけでなく、給付金受取時も税額控除が受けられます。
2.離転職時に資産の持ち運びができる(ポータビリティ)
退職した際は、企業型確定拠出年金の積立金を個人型確定拠出年金に移行できます。
また、就職した際は個人型確定拠出年金から企業型確定拠出年金に移行できます。
さらには、転職時も、転職元の企業型確定拠出年金から、転職先の企業型確定拠出年金に移行することが可能です。
3.自分で自由に金融商品を選定できる
確定拠出年金の場合、掛金の運用を行うのは自分自身です。
そのため、投資に関するノウハウを持っている人なら、比較的高い利回りを実現できる可能性があります。
確定拠出年金のデメリットは、以下の2つです。
1.資産運用による損失のリスクがある
投資は必ずしも利益が出るわけではないため、ある程度の運用リスクは許容しなければなりません。
そのため、確定拠出年金の掛金には余剰資金を充てるのが賢明です。
2.60歳まで引き出せない
引き出せるのは60歳を過ぎてからなので、それまでに急に資金が必要になっても取り崩すことはできません。
掛金の積み立ては、生活に無理のない範囲で行うことが大切です。
退職金は、企業から退職する際に支給されるお金のことです。
受け取る退職金の額は、勤続年数によって変動します。
退職金も確定拠出年金と同様、受取時に税制優遇を受けられます。
退職金のメリットは、以下の3つです。
1.受取時に税制優遇を受けられる
一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として分割して受け取る場合は公的年金等控除の対象となります。
2.確実に決まった金額を受け取ることができる
退職金は積立中に運用を行うわけではないので、運用により金額が目減りしてしまうことはありません。
3.60歳到達前でも受け取ることができる
退職金が発生するのはあくまで退職時で、年齢は受け取りの要件ではありません。
退職金のデメリットは、以下の2つです。
1.金額を自分の裁量で増やせない
退職金の金額は、企業側が勤続年数などによって決定します。
将来の資産をさらに増やしたい場合は、自分で資産運用を行う必要があります。
2.自己都合退職の場合、満額支給されない
自己都合で退職する場合、退職金は満額支給されないのが一般的です。
中央労働委員会「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、退職金の平均金額は定年退職で1213万8000円、自己都合退職の場合414万4000円という結果になっています。
実際には年齢や勤続年数によっても変わってくるため単純比較はできませんが、参考にしてください。
結論から言うと、確定拠出年金と退職金、一概にどちらがお得とはいえません。
それぞれにメリット、デメリットがあるため、どちらがお得なのかはケースバイケースだといえるでしょう。
確定拠出年金と退職金の受け取り方は、以下の3つです。
● 一時金として受け取る
● 年金として受け取る
● 一時金と年金を組み合わせて受け取る
それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
一時金として受け取る | 税制面の優遇が大きい | 使いすぎてしまう可能性がある |
年金として受け取る | 受取総額が大きくなる | 毎年の収入が増えるため税負担が大きくなる |
一時金と年金を組み合わせて受け取る | それぞれのメリットを享受できる | 企業によっては受け付けていない |
メリット・デメリットはそれぞれ異なるため、向き不向きもまた異なります。では、それぞれの受け取り方の詳細を見ていきましょう。
確定拠出年金や退職金を一時金として受け取る方法とは、すなわち、一括して受け取る方法のことです。
確定拠出年金や退職金を一時金として受け取る場合は、退職所得として所得税・住民税の課税対象になります。
控除額は、以下の通りです。
勤続年数 | 控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※勤続年数1年未満の部分は1年として算入
例えば、勤続年数が10年と30年の場合、控除額はそれぞれ以下のようになります。
一時金の金額が上記を下回る場合は非課税ですが、超えた場合には税金がかかります。
その場合の税率と控除額は下表の通りです。
「課税退職所得金額」とは、一時金の金額から先の控除額を引いたものになります。
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
課税退職所得金額が大きくなるにつれて税率は高くなりますが、控除額も大きくなることがわかります。
また、確定拠出年金や退職金を一時金として受け取る場合、課税退職所得金額の1/2のみが課税対象となります。
計算式は、以下の通りです。
【計算方法】
(課税退職所得金額×1/2×税率)-控除額
例えば、課税退職所得金額が4000万円の場合の税額は次の通りです。
(4000万円×1/2×0.45)-479万6000円=420万4000円
確定拠出年金や退職金を年金として受け取る方法とは、すなわち、退職金を分割で受け取る方法のことです。
確定拠出年金や退職金を年金として受け取る場合は、雑所得として課税対象となりますが、控除を受けられます。
控除額は、以下の通りです。
収入金額 | 控除額 |
---|---|
60万円以下 | 0円 |
60万円超130万円未満 | 収入金額の合計額-60万円 |
130万円超410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75-27万5000円 |
410万円超770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85-68万5000円 |
770万円超1000円未満 | 収入金額の合計額×0.95-145万5000円 |
1000万円以上 | 収入金額の合計額-195万5000円 |
収入金額 | 控除額 |
---|---|
110万円以下 | 0円 |
110万円超330万円未満 | 収入金額の合計額-110万円 |
330万円超410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75-27万5000円 |
410万円超770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85-68万5000円 |
770万円超1000円未満 | 収入金額の合計額×0.95-145万5000円 |
1000万円以上 | 収入金額の合計額-195万5000円 |
例えば、65歳以上で収入金額が900万円の場合の課税対象所得は次の通りです。
900万円×0.95-145万5000円=709万5000円
ちなみに確定拠出年金や退職金を年金として受け取る場合は、雑所得として扱われるため、給与などほかの収入と合算されて税額が計算されます。
確定拠出年金や退職金を、一時金と年金とを組み合わせて受け取る方法とは、一部を一時金として一括で、残りを年金として分割で受け取る方法のことです。
税金の計算には、一時金受取部分に関しては退職所得の算出方法が、年金受取部分に関しては雑所得のものが算出方法が適用されます。
そのため、一時所得における控除の上限となる金額までを一時金受取部分にして税制優遇を最大限に受け、残りを年金受取部分として受取総額を増やすことも可能です。
確定拠出年金と退職金は、両方もらえます。
会社に勤め続けて退職金を増やしながら、確定拠出年金で掛金を資産運用することが可能です。
両方もらえれば、老後の資金面での不安はさらに解消されるでしょう。
なお、確定拠出年金に掛ける金額は、現状の暮らしの維持も踏まえて決めるべきです。
掛金を多くすれば、老後の資金はより豊かになる可能性が高くなりますが、今を楽しむことも考えるなら、配分についてよく検討することが大切です。
確定拠出年金と退職金は、どちらも老後の生活費に充てるための資金にできますが、さまざまな違いがあります。
確定拠出年金と退職金のどちらがお得なのかはケースバイケースなので、自分の場合はどちらを優先すべきか比較検討してみましょう。
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