老後資金の一部となる「退職金」は、多くの企業で導入されています。
ただし、勤務していた会社から出る退職金で老後の生活を賄えていた時代と異なり、現在では自分で運用しながら退職金を作る「自助努力」が求められています。
平均寿命の延びによって、老後の生活期間は今後長くなると予想されます。
そのため、老後資金の形成を考えるうえで退職金がどのくらいあるのか知っておくことがますます大切です。
本記事では、退職金制度の内容、老後資金の形成を考える際のポイントを解説します。
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老後資金の一部となる「退職金」は、多くの企業で導入されています。
ただし、勤務していた会社から出る退職金で老後の生活を賄えていた時代と異なり、現在では自分で運用しながら退職金を作る「自助努力」が求められています。
平均寿命の延びによって、老後の生活期間は今後長くなると予想されます。
そのため、老後資金の形成を考えるうえで退職金がどのくらいあるのか知っておくことがますます大切です。
本記事では、退職金制度の内容、老後資金の形成を考える際のポイントを解説します。
「退職金制度」とは、企業を退職する従業員に対してお金を支払う制度のことで、企業によって独自の制度が設けられています。
ちなみに、法律で「退職金を支払わなければならない」と決められているわけではなく、退職金制度を設けていない企業もあります。
退職金制度の内容は、企業によって異なり、就業規則に記載されています。
自分が勤めている企業に退職金の制度があるかどうか、支給額はどう決まるのかなど、一度確認しておくことをおすすめします。
退職金制度には、主に以下の4つが挙げられます。
それぞれの制度のメリット・デメリットとしては、以下が挙げられます。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
退職一時金 | 退職所得控除の対象になる | 一時金で受け取るため、その後の運用は自分で行わなければならない |
中小企業退職金共済 | 退職金額を把握しやすい | 短期間で退職した場合は、支給されないケースがある |
確定給付企業年金 | 運用を企業に任せられる | 給付額が引き下げられる可能性がある |
確定拠出年金 | 税制の優遇を受けながら退職金(年金)を作ることができる | 運用結果次第では、元本割れする可能性がある |
退職一時金とは、企業に勤めていた人が退職する際に企業から支払われる一時金のことをいいます。
定年退職の場合だけでなく、自己都合の中途退職の場合であっても、原則として支払われます。
退職一時金は、企業側が用意するものであり、第三者機関にお金を積み立てて運用し、従業員側が退職の際にまとまった金額を受け取る仕組みです。
ちなみに、年金額は、勤続年数や退職時の役職などによって決まります。
具体的にどのような計算方法で退職金額が決まるかは企業側が決めており、退職金規定に記載しています。
中小企業退職金共済は、中小企業で働く人々のために設けられた退職金制度です。
独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しており、「中退共」(ちゅうたいきょう)の略称で呼ばれています。
企業(事業主)は、中退共と退職金共済契約を結び、毎月掛け金を納めます。
そして、中退共が従業員に対して退職金を支払う仕組みになっています。
加入要件は、業種によって異なり、原則として従業員全員が加入しなければなりません。
掛け金は、企業(事業主)が全額負担します。
退職金額は、退職時までの掛け金に基づいて決まるため、計算しやすい点がメリットといえます。
確定給付企業年金は、「確定給付企業年金法」に基づいており、「規約型」「基金型」の2種類があります。
「規約型」は、掛け金を生命保険会社などが管理して運用・給付を行います。
「基金型」は、企業年金基金が掛け金を管理して運用・給付を行います。
「企業が掛け金の拠出から退職金の給付までの全責任を負う」点が大きな特徴です。
これには従業員の同意を得る必要があるため、労働組合と企業の関わり方が重要となります。
「確定給付」という名前が付いている通り、退職金額はあらかじめ企業によって約束されていますが、運用成果や企業の業績によっては、給付額が減額される可能性もあります。
給付は、原則として年金給付ですが、企業によっては一時金として受け取るか、年金給付として受け取るかを選択できるケースもあります。
企業型確定拠出年金は、掛け金を事業主が拠出し、加入者である従業員が運用商品を選んで運用して年金を作る仕組みです。
運用の成果によっては、受け取る年金額が一人一人異なる点が特徴です。
また、確定拠出年金には、「個人型(iDeCo)」があります。
その企業を途中退職した場合は、それまで積み立てた資産を個人型の確定拠出年金に移管でき、転職先の企業に確定拠出年金制度が用意されている場合はそちらに移管できます。
また、掛け金の拠出、運用時、受け取り(給付)の際には、税制の優遇が受けられる点が魅力で、一時金で受け取るか、年金で受け取るか、それとも両方を併用するかを選択できます。
給付の請求は、運営管理機関に対して行います。
企業側からすれば、退職金を用意することで得られるメリットとしては、「優秀な人材の確保」があります。
退職金制度が導入されているかどうかについては、就職先を選ぶ側としても重要なポイントです。
さらに、その内容が充実したものであれば、より多くの人が関心を持ち、従業員側としては長期間働くためのモチベーションとなるでしょう。
給与の一部を退職金として支払うことで、社会保険料負担を少なくできます。
退職金制度を導入することで、企業としても人件費の削減につなげることが可能です。
退職金は、もらう側からすればとくにデメリットはありません。
デメリットを挙げるとするなら、それは退職金を支払う企業側の問題といえるでしょう。
退職金制度を導入する際に企業が一番悩むのが、その資金をどこから捻出するかです。
費用の捻出が難しい場合は、福利厚生の内容を見直す必要も出てくるでしょう。
また、新しい退職金制度を導入するに当たっては、労働組合との話し合いも労力になります。
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」よると、学歴および勤務年数における退職金の給付額は、以下の通りです。
勤続20~24年 | 勤続25~29年 | 勤続30~34年 | 勤続35年以上 | |
---|---|---|---|---|
大卒・院卒 | 1,267万円 | 1,395万円 | 1,794万円 | 2,173万円 |
高卒 | 525万円 | 745万円 | 928万円 | 1,954万円 |
勤務年数が長くなるにつれて差が少しずつ埋まっていくものの、基本的に高卒と大卒・院卒とでは約2倍の開きがあります。
「退職金」には、所得税および住民税がかかります。
通常はその支払いを受ける際に、所得税、復興特別所得税、住民税が徴収されており、翌年の住民税負担はありません。
所得税と住民税の詳しい内容を知りたい人はこちら
自分の退職金がいくらなのか調べる方法は、企業の就業規則や賃金規程を確認することです。
就業規則や賃金規程については、文書で保管されているケース、イントラネット上にアップされているケースがあります。
規則や規程には、その企業がどのような退職金制度を導入しているのか、退職金支払いの要件、退職金額の計算方法などが記載されています。
不明点等は、人事労務担当に確認しましょう。
退職金の支給実態を見ると、支給額が年々少なくなっていることが分かります。
これは、年功序列だった企業の評価制度が実力主義へと徐々に変わってきていることが背景にあるといわれています。
退職金の計算方法にポイント制を導入するなど、在籍期間中に企業に対してどのくらい貢献したかを重視する企業が増えているのです。
さらには、確定給付企業年金制度から確定拠出年金制度への移行も1つの原因となっています。
企業が約束していた金額を支払えない可能性が高くなり、そのぶん、自助努力で退職金を準備してもらう考え方に変わってきた現状が、支給額の減少につながっています。
自分の退職金規程を確認したうえで、どのくらい退職金を受け取れるかを把握し、金額が少ないと感じたら、早めに老後資金を形成するための対策を立てておくことが重要です。
今から老後の資金形成のためにできることとしては、以下のような例が挙げられます。
資産形成のための運用知識や新しいスキルなどは、すぐに身に付くものではありません。
老後にどのくらいの資金が必要なのかを把握したうえで、その金額を目標にし、まずは自分ができることから始めていきましょう。
ここでは、退職金制度について、会社員の人が抱く質問と回答例を紹介します。
Q.退職金は、辞めてからどれくらいでもらえる?
A.退職金が支給される時期は、企業によって異なります。また、受け取り方によっても異なるので、退職金規程で確認しておきましょう。
Q.退職金は、確定申告が必要?
A.原則として確定申告は不要です。なぜなら、事前に税金が引かれて支給されるからです。ただし、退職前に必要事項を記入した「退職所得の受給に関する申請書」を勤務先に提出する必要があります。
Q.退職したときには、必ず退職金がもらえる?
A.企業に退職金制度が用意されている必要があります。勤務年数が短すぎると退職金が支給されないケースもあります。
Q.2022年10月の国の制度改正により、企業型確定拠出年金に加入していても要件を満たせばiDeCoにも加入できることになったけれど、加入した方が良い?
A.掛け金を拠出する余裕があるなら、iDeCoにも加入し、同時に老後資金を形成していくことをおすすめします。
老後資金の一つとして捉えられていた退職金ですが、終身雇用の形態が変わりつつある現在、その制度も変化しています。
自分がどれだけ退職金をもらえるのかを把握したうえで、老後の生活にどのくらいの資金が必要なのか考えておきましょう。
確定拠出年金を導入する企業が増えてきている点も、注目すべきでしょう。
運用成果によって受け取れる金額が変わってくるため、「このくらいはもらえる」と思っていた金額と比べて、予想以上に少なくなる可能性も十分に考えられます。
自分の人生は、自分で守らなければならないことをしっかりと自覚するべきです。
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