給付型奨学金は、返済が不要な奨学金です。日本学生支援機構(JASSO)の制度がよく知られていますが、ほかにもさまざまな種類があります。それぞれ募集人数や条件が異なります。
この記事では、主な給付型奨学金を紹介します。給付型奨学金制度の利用を検討する際の参考にしてください。
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【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
給付型奨学金は、返済が不要な奨学金です。日本学生支援機構(JASSO)の制度がよく知られていますが、ほかにもさまざまな種類があります。それぞれ募集人数や条件が異なります。
この記事では、主な給付型奨学金を紹介します。給付型奨学金制度の利用を検討する際の参考にしてください。
奨学金制度とは、就学のための資金を援助してもらえる制度です。奨学金制度には、大きく分けて給付型と貸与型の2種類があります。
給付型奨学金は借りた資金を返済する必要のない奨学金、貸与型奨学金は借りた資金を卒業後に返済するタイプの奨学金になります。それぞれのメリット・デメリットは、次の通りです。
給付型奨学金 | 貸与型奨学金 | |
---|---|---|
メリット | ・返済が不要 ・ローンの審査に影響がない |
・給付型より募集枠が多い ・学部によっては増額できる |
デメリット | ・人気があり競争率が高い ・採用枠が少ない |
・卒業後に返済義務がある ・ローンの審査に影響を与える可能性がある |
給付型奨学金のメリットは、返済が不要なことです。また、住宅ローンや自動車ローンなどを組むときの審査に影響を与えることもありません。ただし、人気があり競争率が高いうえ、採用枠が少ないです。
一方、貸与型奨学金は給付型奨学金より審査条件が甘く、募集枠が多いです。しかし、大学卒業後は返済の義務があり、ローンを組む際に返済が残っていると、審査に影響を与える可能性があります。
大学進学に使える給付型奨学金を下表にまとめました。
奨学金の名称 | 運営元 | 採用 人数 |
対象者 | 支給額 |
---|---|---|---|---|
給付型奨学金 | 日本学生支援機構(JASSO) | 非公開 | ・高校卒業予定、または高校卒業後2年以内 ・評定平均値3.5以上 ・世帯の市町村民税所得割が非課税、または支給額算定基準の合計が5万1300円未満 |
最大月額7万5800円 |
学奨財団奨学金 | 一般財団法人大学生奨学財団 | 12名 | ・20歳未満 ・保護者の所得が530万円以下 ・偏差値55.0以上の大学 ・大学1年生のGPAスコアが3.0以上 ・大学1年生の取得単位が10以上 |
年間10万円 |
キーエンス給付型奨学金 | 公益財団法人キーエンス財団 | 600名程度 | ・日本国内の4年制大学への入学予定者 | 月額10万円 |
日本人大学生対象給付型奨学金 | 似鳥国際奨学金財団 | 最大110名 | ・日本国内の大学もしくは大学院に在籍、在籍予定の日本人 | 月額5万~8万円 |
大学奨学生(高校時予約・給付型) | 公益財団法人電通育英会 | 100名程度 | ・国・公立高校から各1名(対象校166校) ・評定平均が4.0以上 ・住民税の課税所得の合計が350万円未満 |
受験等助成金:10万円 入学一時金:30万円月額4万円 |
給付型奨学金 | DAISO財団 | 50名程度 | ・20歳以下 ・日本国内の大学に入学予定 ・経済的支援が必要 ・学業優秀、品行方正 |
月額5万円 |
育英奨学事業 | 一般財団法人守谷育英会 | 約70名 | ・東京都内の高校・大学に在学、または進学予定 ・学業・人物ともに優秀 ・学資の支弁が困難 ・日本人の学生 |
月額12万円 |
コカ・コーラ奨学生 | 公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団 | 20名 | ・日本国内の高校に在学し、大学へ進学予定 ・20歳以下 ・地球・環境資源関連領域に興味のある学生 ・経済的支援が必要 |
月額2万円 |
給付型奨学金 | 公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団 | 非公開 | ・指定大学に在学・在学予定 ・財団主催行事への出席を優先できる ・父母の合計年収が800万円未満 ・採用後、三菱UFJ信託銀行に普通預金講座を開設 |
月額3万5000円 |
日本学生支援機構(JASSO)は、憲法・教育基本法に定められている「教育の機会均等」を理念に、経済的理由で修学困難な学生に学資の給付や貸与を行っています。
JASSOの給付型奨学金は、独立行政法人の奨学金の中では採用人数が多いです。令和3年度進学予定者の採用候補者数は全国で9万7486人となっています。
進学先の規定はなく、高校の成績は評定平均値3.5以上、あるいは高い学修意欲が条件です。評定平均値が足りない場合でも、レポートや面談の評価によっては利用できる可能性があります。
受けられる奨学金の金額は、世帯収入によって変わります。例えば、住民税非課税世帯は約91万円が上限となります。給付型奨学金と併用する形で、貸与型奨学金を借りることも可能です。
大学進学の費用を準備するには、奨学金と教育ローンの2つの方法があります。大学進学のお金の準備については、『大学進学に必要なお金を借りる方法』で詳しく紹介しています。
大学生奨学財団(学奨財団)とは、母体企業や企業創業者ではなく、創設者が個人の退職金から拠出して基金とする財団です。多様性や透明性を重視しており、選考委員は管理職や専門職に就く男女8名が務めます。募集人数が12名と少ないです。
給付金額は年間10万円と少ないので、本奨学金と別の奨学金制度を併用するとよいでしょう。
学奨財団の奨学金は、偏差値55.0以上の大学に在籍し、大学1年生のGPAスコアが3.0以上の大学生で、大学1年生での所得単位が10単位以上あることが条件です。また、保護者の前年所得が530万円以下である必要もあります。大学の偏差値については、河合塾の「入試難易度予想ランキング表」を参照してください。
奨学生となった暁には、財団が運営するコミュニティへの参加や、協賛企業との交流会への参加が努力義務となっています。
株式会社キーエンスはファクトリー・オートメーションの総合メーカーです。キーエンス財団は学業優秀かつ品行方正な学生に、奨学金給付による経済的支援を行い、社会に貢献する人材育成に寄与することを目的としています。
募集人数は600名程度と多めで、月額10万円、4年間の総額480万円の奨学金を受け取ることができます。ただし、ほかの給付型奨学金との併用はできません。
キーエンスの給付型奨学金は、日本国内の4年制大学に入学予定の大学新1年生が対象です。学業成績や経済的な状況、小論文などが選考対象となります。
似鳥国際奨学財団とは、ニトリ・ホールディングス創始者の似鳥昭雄氏が代表理事を務める公益財団法人です。
世界各国の学力優秀な学生のうち、経済的理由により修学が困難な者に対して就学援助を行い、各国との友好改善や人材育成に寄与する目的で設立されました。そのため、日本人だけでなく、外国人留学生向けの奨学金制度もあります。
日本人大学生を対象とした給付型奨学金は、上期と下期に分けて合計110名の募集枠を設けています。給付月額は5万円で、優秀者やIT人材奨学生には月額1万?3万円が追加給付されます。
応募資格は23歳以下で、日本国内の学部に在籍予定の人です。ほかの給付型奨学金との併用は不可で、貸与型奨学金や一時奨励金、授業料等減免制度との併用はできます。
また、アルバイトをしていること(月20時間以上または3ヵ月60時間以上)や、毎月1回のレポート提出、交流会への参加が義務付けられています。
電通育英会は、株式会社電通の第4代社長の吉田秀雄氏の言葉「人材の育成は終局の目標である」という信条実現のために創設された公益財団法人です。55年以上の歴史を持ち、2022年4月時点で3,875名を超える奨学生への支援実績があります。
財団が対象とする国・公立高校の3年に在学中の高校生で、学業・人物ともに優秀で評定平均値が4.0以上、住民税の課税所得の合計が350万円未満の家庭の学生が対象です。ただし、医・歯・薬・獣医等の6年制の学部、夜間・通信制大学は対象外となっています。
月額7万円の奨学金のほか、受験などにかかる費用に使える10万円の助成金、入学金として使える入学一時金30万円の支給もあります。また、奨学金とは別に大学在学中の海外留学や海外ボランティアなどの活動には4年間で累計150万円まで支援してもらえるのも特徴です。
大学院進学を希望する場合、大学院奨学金制度への申し込みもできます。
DAISO財団が提供する給付型奨学金は、学業優秀・品行方正でありながら経済的理由により学業の困難な学生に対して奨学金を支給します。そのうえで、社会貢献する有為な人材育成に寄与することを目的としています。
審査基準は経済的支援が必要なこと、20歳以下であること、日本国内の大学に入学予定の人です。応募資格に世帯年収制限が設けられておらず、ほかの奨学金制度よりも基準が甘いです。ただし、「向学心に富み、学業優秀であり、品行方正である」ことが必要です。
また、JASSOを含むほかの奨学金と併用も可能なため、DAISO財団の奨学金月額5万円では足りないという人にもおすすめです。
守谷育英会は、東京都内の高校や短大、大学に在学している、あるいは東京都内に在住している学生への学資支援を行っている一般財団法人です。外国人留学生は対象外で、日本人学生のみを対象としています。
2021年度の応募者総数は780名で、うち採用者数は83名。審査通過倍率は約10倍ですが、大学生は12万円の給付型奨学金を受けられます。
さらに、成績優秀かつ経済的事情で修学が困難な学生に対して、追加月額2万円が給付されます。応募に際して、指導教官または主任教授の推薦書が必要です。ほかの給付型・貸与型奨学金と併用することもできます。
コカ・コーラ教育・環境財団では、次世代を担う人材育成を図るため、経済的理由により大学進学が困難な新大学1年生に対し、奨学金を支給しています。給付人数20名、月額2万円と少人数・少額ですが、ほかの奨学金との併用可で、6年制学部に進学予定の場合は6年間総額144万円が支給されます。
地球・環境資源関連領域に興味のある学生が応募資格となっています。また、経済的支援が必要なこと、20歳以下であることが条件です。
三井住友UFJ信託奨学財団は、指定大学48校の2年生以上で、学業・人物ともに優秀かつ健康であり、学費の支弁が困難な学生に対して給付型奨学金を支給しています。財団は2018年で設立65年を迎え、2021年度までの奨学生総数は6,880名です。
応募条件でもある「学費の支弁が困難な学生」とは、父母の税込年収が800万円未満の世帯。さらに、在学大学の学校長の推薦、将来実業または実業に関する学術の研究に当たる必要があります。
当奨学金制度は、採用後に指定の銀行で普通預金口座を開設する必要があり、また財団主催行事に優先して出席できるのが応募資格です。
奨学金額は日本人大学生が月額3万5000円、日本人大学院生が月額5万5000円です。一方、大学留学生は月額7万円、大学院留学生は月額10万円と留学生に手厚いのも特徴です。
教育ローンと奨学金の違いについては、『教育ローンと奨学金の違いを比較』でそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説しています。また、それぞれの賢い使い分け方についても解説するので、教育資金で悩んでいる人は参考にしてください。
給付型奨学金とは、返済不要で学費や入学資金のための費用が支給される制度です。日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金制度が広く知られていますが、ほかにも民間企業や財団法人による制度が数多く用意されています。
条件は制度によってさまざまで、世帯収入の条件が甘いものもあります。JASSOの給付型奨学金制度の応募条件に当てはまらなかったとしても、探してみるとほかに自分に適した制度が見つかるかもしれません。
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