教育資金を調達する代表的な手段に、教育ローンと奨学金があります。どちらも授業料や通学費用を賄うためのものですが、異なる特徴が数多くあります。
この記事では、教育ローンと奨学金の違いや、それぞれのメリット・デメリット、賢い使い分け方について解説します。どの方法が自分に合っているのか、無理なく返済するにはどうすればよいか参考にしてください。
【監修】株式会社RKコンサルティング
河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
教育資金を調達する代表的な手段に、教育ローンと奨学金があります。どちらも授業料や通学費用を賄うためのものですが、異なる特徴が数多くあります。
この記事では、教育ローンと奨学金の違いや、それぞれのメリット・デメリット、賢い使い分け方について解説します。どの方法が自分に合っているのか、無理なく返済するにはどうすればよいか参考にしてください。
教育ローンと奨学金の違いは、下表の通りです。なお、奨学金は返済不要の給付型と、卒業後に返済が必要な貸与型に分けられます。貸与型も、無利息の第一種奨学金と、有利息の第二種奨学金に分けられます。
教育ローン | 奨学金(貸与型) | |
---|---|---|
契約者 | 学生の保護者 | 学生本人 (保護者が保証人) |
申請期限 | いつでもOK | 時期が決まっている |
借入方法 | 一括 | 毎月分割 |
返済開始時期 | 借入翌月 | 卒業後 |
返済期間 | 国のローン:最長18年 民間ローン:最長10~20年 |
最長20年 |
金利 | 利率は借入時点で決まる | 在学中は無利息 有利息型の場合、卒業後、返済開始時点の利率が適用される |
条件 | 保護者に安定した収入があること | 保護者の収入が一定基準以下であること ※無利息型の場合には学力条件あり |
両者の最大の違いは、契約者が誰になるかという点です。教育ローンは保護者が契約し、保護者が返済義務を負います。一方で、奨学金は学生本人が借入する形となり、卒業後に学生本人が返済する必要があります。
奨学金は、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金が一般的ですが、各地方自治体でも貸付を行っています。民間企業の奨学金では、新聞奨学生制度が有名です。
教育ローンでは、国の教育ローン(教育一般貸付)がよく利用されています。民間の銀行や信用金庫などで借入できる教育ローン商品、学生ローンも多いです。
教育ローンと奨学金は併用することもできます。
奨学金と教育ローンの違いを説明しましたが、自分にはどちらの方法が合っているのか分からないという人もいるでしょう。
まずは、奨学金を利用するメリット・デメリットを紹介します。
奨学金のメリットとして、以下の2点が挙げられます。
奨学金は、在学期間中無利息で借入できます。利息は、卒業して返済が開始した時点から発生します。
また、設定されている金利も教育ローンに比べて低いので、返済負担が比較的軽いのもメリットです。
教育ローンでは、契約者が保護者で、安定的な収入があることが条件とされます。一方、奨学金の契約者は学生本人で、安定した収入が求められることはありません。世帯収入が「○○万円以下」のように、一定金額以下であることが条件として設定されています。
JASSOの第二種奨学金(貸与型・有利息)における保護者の収入目安は、以下の通りです。
世帯人数 | 年間の給与収入目安 |
---|---|
2人 | 1039万円以下 |
3人 | 1012万円以下 |
4人 | 1096万円以下 |
5人 | 1314万円以下 |
保護者の収入が給与収入かそれ以外か、進学先が国公立か私立大学かなど、諸条件によって収入の目安は異なります。
奨学金を利用するデメリットとして、以下の2点が挙げられます。
第二種奨学金(貸与型・有利息)は、卒業後、返済開始した時点の金利が適用されます。つまり、借入時点では、支払う利息がいくらになるのかわかりません。
金利は景気動向や国の財政状況によって変動します。在学期間中に金利が上昇すれば、返済金額が予想よりも増えてしまうこともあります。事例を紹介すると、令和元年4月時点の金利が0.153%だったのに対し、令和4年4月時点は0.468%に上昇しています。
貸与型奨学金は、卒業後に学生本人が返済する必要があります。第二種では利息も発生します。無事に就職できたとしても、長期間にわたってお金を返していかなければならないのは、心理的な負担も大きいでしょう。
メリット・デメリットを踏まえたうえで、奨学金の利用が向いている人は以下の通りです。
続いて、教育ローンのメリット・デメリットについて解説していきます。
教育ローンで教育資金を調達するメリットは、以下の2点です。
教育ローンは、資金の使用用途の範囲が広く設定されていることが多いです。国の教育ローンと、民間金融機関のローンが使い道として認めている資金の例は、次の通りです。
国の教育ローン (日本政策金融公庫 教育一般貸付) |
民間金融機関の教育ローン (横浜銀行 教育ローン) |
---|---|
・学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など) ・受験費用(受験料、受験時の交通費・宿泊費など) ・1人暮らしの場合の住居費用(アパート・マンションの敷金・家賃など) ・教科書代、教材費、PC購入費、通学費用、修学旅行費用、学生の国民年金保険料など ・融資金にかかる保証料 |
・教育機関への納付金(入学金・授業料・施設維持費等) ・就学に関する諸費用(学習塾代・下宿費・教科書代・通学費用など) ・海外留学費用(6ヵ月以上の留学に限る) |
教育ローンは、学校に納付する入学金や授業料のほか、ひとり暮らしにかかるアパート・マンションの費用や通学費用にも使える点が奨学金との大きな違いです。
奨学金は学生本人の名義で借入するため、返済義務も学生が負うことになります。卒業後の収入から毎月返済するのは、若くて収入が少ないうちは負担が大きくなるでしょう。
一方で、教育ローンは保護者が返済していくため、学生は返済義務を負いません。子どもに金銭的な負担をかけずに済むでしょう。
教育ローンで教育資金を調達するデメリットとして、以下の2点が挙げられます。
教育ローンは奨学金に比べて金利が高いです。金利の例は、下表の通りです。
奨学金 (日本学生支援機構 第二種奨学金) |
教育ローン (日本政策金融公庫 教育一般貸付) |
---|---|
0.468% | 1.95% |
金利の差は1%以上です。例えば、100万円の借入をしている場合、金利に1%の差があれば年間の返済額には1万円前後の差が生まれます。
教育ローンは、原則として借入した翌月(もしくは翌々月)から返済が始まります。しっかりと返済計画を立てないと、経済的に困窮してしまう可能性もあるので注意してください。
ただし、何かと出費が多い在学中の返済を抑えたい場合は、「元金据置き」にすることもできます。元金据置きとは、一定期間ローンの利息部分だけを支払い、元金部分の返済を行わないことです。
ただし、元金据え置きにすることで、返済期間が長くなり、支払総額が高くなる可能性もあります。
メリット・デメリットを踏まえると、教育ローンが向いている人は次の通りです。
教育ローンと奨学金は併用できます。併用する場合には、次のように金利の低いものから検討するのがおすすめです。
なお、それぞれ運営元が違うため、併用するためにはそれぞれの審査に通過する必要があります。
一般的な大学の入学金と授業料は、以下の通りです。
国立大学(省令基準) | 私立大学(平均値) | |
---|---|---|
入学金 | 28万2000円 | 文系:22万8262円 理系:25万5566円 |
年間授業料 | 53万5800円 | 文系:79万3513円 理系:111万6880円 |
入学時の支払額 ※施設設備費含む |
81万7800円 | 文系:117万2582円 理系:154万9688円 |
2年目以降 ※施設設備費含む |
53万5800円 | 文系:94万4320円 理系:129万4122円 |
特に金額が大きいのは、4年間を通して支払う必要がある授業料です。ただし、授業料は一括払いだけでなく、前期・後期分を分割で返済することも可能なので、都度入金される奨学金で賄った方が金利負担を抑えられるでしょう。
入学時には入学金と1年目の授業料を支払わなければならないため、まとまったお金が必要になります。奨学金は入学後から振り込まれるため、入学資金には充てられません。入学前に必要な費用には教育ローンを使うのがよいでしょう。
自己資金が少なくても、教育ローンや奨学金を使うことで必要な教育資金を調達できます。教育ローンは、使用用途の範囲が広い一方で金利が高い傾向があります。奨学金は給付型や無利息で借りられるタイプもあるものの、振り込まれるのは入学後になるため、入学金などには利用できません。
教育資金に困っている人は、本記事を参考に教育ローンや奨学金の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
キーワードで記事を検索