母子家庭や父子家庭など、ひとり親世帯の学生であっても給付型奨学金を利用可能です。
この記事では、ひとり親世帯でも申し込むことができる給付型奨学金の詳しい内容、申請に必要な提出書類、手続きの流れについて解説します。給付型奨学金を利用する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【監修】株式会社RKコンサルティング
河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
母子家庭や父子家庭など、ひとり親世帯の学生であっても給付型奨学金を利用可能です。
この記事では、ひとり親世帯でも申し込むことができる給付型奨学金の詳しい内容、申請に必要な提出書類、手続きの流れについて解説します。給付型奨学金を利用する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、給付型と貸与型に分けられます。それぞれのメリット・デメリットは、次の通りです。
給付型 | 貸与型 | |
---|---|---|
メリット | ・返済不要 ・ひとり暮らしへの支援額が多い |
・給付型より募集枠が多い ・給付型より所得制限がゆるい |
デメリット | ・人気があり競争率が高い ・採用枠が少ない |
・卒業後に返済義務がある |
これらの奨学金は、母子(父子)家庭で収入が少なく学費を捻出できない人でも、受給条件を満たせば利用可能です。教育ローンは低所得だと受けられませんが、奨学金は「低所得者救済」が目的なので、低所得でも利用できます。
母子(父子)家庭でも給付型奨学金は利用できますが、申し込めば必ず奨学金を受け取れるわけではありません。
給付型奨学金は人気があり、貸与型奨学金と比べて競争率が高いです。受給条件も、貸与型奨学金より厳しくなっています。
給付型奨学金の受給条件は、次の通りです。
給付型奨学金では、収入基準と資産基準の2つの面から親の経済状況について審査されます。
収入基準は、世帯の給与所得者の収入額により、下記の3つの区分に分けられます。
支給額算定基準は、「課税標準額×6%-調整控除額」の計算で算出します。マイナポータルで確認ができます。
資産基準についても把握しておきましょう。資産基準は、給付型奨学金の申し込み時点で、学生本人の資産も含む世帯全体の資産額が合計2000万円未満と定められています。ひとり親の場合には、合計1250万円未満です。
給付型奨学金に申し込むと、学生本人の学力や学習意欲について審査されます。下記の成績以上が必要です。
高校の全履修科目の評価とは、高校1年生と2年生の成績を平均した数値です。
ただし、仮に上記の成績に満たない場合でも、給付型奨学金を利用できる可能性は残されています。次項で解説する「学習意欲」をしっかりと伝えることで、審査に通る場合もあるからです。
給付型奨学金の学力基準には、成績のほかに学習意欲の有無を判断する審査が設けられています。
具体的には、面談やレポートの提出により学習意欲の有無を判断されます。大学で学んだことを、社会に出たときにどのように活用していくか明確なイメージを伝えられるように準備しておきましょう。
大学進学を志すタイミングが遅くても、社会に貢献できるビジョンをしっかと持っていれば問題ありません。
ここでは、給付型奨学金の収入基準である3つの区分について詳しく説明します。
3つの区分は、単純に世帯所得だけを基準に分けられているわけではありません。例えば、2人家族で年収200万円より、3人家族で年収200万円の方が経済的支援を必要としていると考えられます。
下表は、母子家庭で2人家族もしくは、3人家族の場合にどのような区分になるかを表しています。例えば、母子家庭で子どもが学生本人のみで、世帯収入が229万円未満の場合、満額の給付金を受け取れる第1区分に属します。
世帯人数(母子家庭) | 想定世帯構成 | 第1区分年収上限 | 第2区分年収上限 | 第3区分年収上限 |
---|---|---|---|---|
2人 | 母・本人 | 229万円 | 332万円 | 402万円 |
3人 | 母・本人・高校生 | 289万円 | 391万円 | 457万円 |
また、「実家暮らしかひとり暮らしか」、「公立か私立か」によっても支給額が異なります。詳しくは下表を参考にいくら給付金がもらえるか確認してみてください。
大学 | 国公立大学 | 私立大学 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
区分 | 第1区分 | 第2区分 | 第3区分 | 第1区分 | 第2区分 | 第3区分 |
実家暮らし | 2万9200円(※3万3300円) | 1万9500円(※2万2200円) | 9,800円(※1万1100円) | 1万7500円(※2万5800円) | 1万1700円(※1万7200円) | 5,900円(※8,600円) |
ひとり暮らし | 6万6700円 | 4万4500円 | 2万2300円 | 3万4200円 | 2万2800円 | 1万1400円 |
※親が生活保護を受けている、もしくは児童養護施設などから通学する人の月額上限額
給付型奨学金の申し込みは大学入学前に申し込む「予定採用」と、大学在学中に申し込む「在学採用」の2通りがあります。申し込む場所は在学中の高校もしくは、進学先の大学です。
予定採用でも在学採用でも、春と秋の年に2回申し込むことができます。申し込みは何度でも可能なので、一度落ちたからといってあきらめずに何度でも挑戦してみてください。
予約採用 | 在学採用 | |
---|---|---|
申し込みタイミング | 進学前 | 進学後 |
申し込む場所 | 進学前の学校 | 進学後の学校 |
募集回数 | 年に2回(春・秋) | 年に2回(春・秋) |
給付型奨学金の申し込みは、下記の手順で進めます。
予定採用・在学採用のどちらでも申し込み関係書類の準備や、Web上の手続きは学生本人が行います。予定採用と在学採用の違いは、「採用候補者決定通知・進学届」の受け取りや提出の有無です。また、在学採用では大学がJASSOに推薦する形になります。
給付型奨学金の申請に必要な基本の書類は、下記の通りです。
ほかに特別な事情がなければ、上記の書類を用意するだけで問題ありません。ただし、海外居住のためマイナンバーを持っていない場合には、別途「マイナンバー代用書類 提出台紙」の提出が必要です。
さらに、社会的養護を必要とする人の書類として、在籍証明もしくは児童(里親)委託証明書が必要になる場合もあります。
給付型奨学金を利用する際に、注意しておきたいのは次の4点です。
給付型奨学金に限らず、奨学金は大学進学後に振込が開始されます。入学金や初年度の授業料など、進学前に支払うお金には利用できません。
なお、金融機関から借入する教育ローンでは、申し込み前に支払った分についてもローンの対象として融資可能な場合もあります。教育ローンと奨学金の仕組みを混同しないよう注意してください。
給付型奨学金は募集枠が限られるため、受給条件を満たしていた場合でも、審査に落ちてしまう可能性があります。
令和3年度給付型奨学金の新規採用者数は、12万8063人でした。貸与型の第一種奨学金は約18万人、第二種奨学金は約21万人が採用されているので、それらと比較すると少ないです。
奨学金はもらえる上限金額が決まっています。国公立か私立か、ひとり暮らしか実家暮らしかによって変わってきます。
例えば、ひとり暮らしをしていて国公立大学へ進学し、第1区分に分類される学生への奨学金は毎月6万6700円です。第2区分だと4万4500円、第3区分だと2万2300円になります。実家暮らしは、これらより減額されます。
毎月の支給額だけでは学費と生活を両立させられないため、アルバイトを始める人もいるかもしれません。しかし、アルバイトの収入が多すぎると、給付型奨学金の収入基準を上回り、奨学金が打ち切りになる可能性が出てきます。
給付型奨学金は返済義務のない奨学金で、母子(父子)家庭であっても受給条件を満たせば受け取ることができます。貸与型奨学金と比べて条件は厳しく、収入基準と資産基準の2つの面から親の経済状況について審査されます。
収入基準は、世帯人数や世帯収入によって3つの区分が設定されています。給付される奨学金の金額は、これらの区分のほか、国公立か私立か、ひとり暮らしか実家暮らしかによって変わってきます。
給付型奨学金の申請方法や、利用時の注意点なども紹介したので、記事を参考にしてください。
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