子どもの進学には多額の入学金や学費、教材費等を準備する必要があり、さらに親元を離れて暮らす場合は家賃や光熱費といったお金もかかります。こうした費用をまかなうために、国が提供する教育ローンを利用する人も多いのではないでしょうか。
この記事では、国の教育ローンの特徴や審査基準、奨学金・金融機関の教育ローンとの違い、審査を有利に進めるポイント、国の教育ローンを断られたときの対処法などを解説します。
【監修】株式会社RKコンサルティング
河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
子どもの進学には多額の入学金や学費、教材費等を準備する必要があり、さらに親元を離れて暮らす場合は家賃や光熱費といったお金もかかります。こうした費用をまかなうために、国が提供する教育ローンを利用する人も多いのではないでしょうか。
この記事では、国の教育ローンの特徴や審査基準、奨学金・金融機関の教育ローンとの違い、審査を有利に進めるポイント、国の教育ローンを断られたときの対処法などを解説します。
国の教育ローンは、学校教育の機会均等および子育て家庭の経済負担を軽減させる目的で、国が直接個人にお金を貸し付ける制度です。「教育一般貸付」ともよばれています。
民間の教育ローンとは異なり、日本政策金融公庫が取り扱う公的なローンで、母子・父子家庭の利用が優先されます。共働きなどで世帯年収が多い家庭は利用できないこともあります。
国の教育ローンの主な特徴は、以下のとおりです。
銀行など民間の金融機関にローンを申し込む際は、返済能力が重視されるため、母子家庭やパート・アルバイトなど収入の不安定な人は審査に通りづらい傾向があります。
しかし、国の教育ローンは、あくまでも学校教育の機会均等を目的としているため、「金銭的に余裕がなく子どもを進学させられない」人が優先されます。
国の教育ローンの金利は、固定金利年1.95%(要件を満たす人は1.55%)です。また、返済期間も最長18年まで可能で、民間のローンと比べて返済負担が軽くなっています。
母子・父子家庭などのひとり親家庭への優遇措置があるのも、国の教育ローンの特徴です。
たとえば、扶養する子どもの人数が3人以上で、世帯年収500万円(事業所得者の場合の所得上限額は356万円)以内の場合は金利が優遇され、固定金利年1.55%で教育ローンを組むことが可能です。このケースの場合、保証料の半額になります。
国の教育ローンは、義務教育である中学卒業後のあらゆる教育機関が対象です。具体的には、大学、大学院、短大、高校、高専(高等専門学校)、専門学校、各種学校、予備校、デザイン学校など多岐にわたります。
国の教育ローンの対象は、高校、大学などの学校に入学・在学する学生の保護者(主に生計を維持する人)で、世帯年収(所得)が下表の金額以内の人です。扶養する子どもの人数によって、上限額が異なります。
扶養する子どもの人数 | 世帯年収(所得)の上限額 |
---|---|
1人 | 790万円(600万円) |
2人 | 890万円(690万円) |
3人 | 990万円(790万円) |
4人 | 1090万円(890万円) |
5人 | 1190万円(990万円) |
※括弧内の金額は事業所得者の場合の所得上限額。世帯年収(所得)には世帯主の他、配偶者等の収入(所得)も含まれる。なお、子どもが2人以下の場合、以下の条件のうち一つを満たすことで、上限額が990万円(790万円)になります。
民間の教育ローンと異なり、経済的に困窮している家庭のほうが審査に通りやすくなります。また、ひとり親家庭や、扶養する子どもの人数が多い家庭のほうが審査の際に有利です。
国の教育ローンの2022年の改正内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
国の教育ローンを利用する際、心配なのは返済の計画です。日本政策金融公庫のホームページでは返済シミュレーターが用意されています。自身の借入額と返済期間を入力し、事前に返済プランを検討してみてください。
毎月の返済額(18 年) | 24,900 円 |
---|---|
利息のみの返済期間の返済額 | 0円 |
ボーナス月の返済額 | 0円 |
1年間の返済額 | 297,800 円 |
返済総額 | 5,335,300 円 |
保証料総額 | 249,583 円 |
国の教育ローンと金融機関の教育ローンの最大の違いは、審査基準です。国の教育ローンの目的は「学校教育の機会均等および子育て家庭の経済負担を軽減」のため、困窮している家庭を優先しています。
一方、銀行などの民間金融機関は返済能力が審査されます。審査の基準も、「安定した収入があるかどうか」や「他社からの借入があるかどうか」などが中心で、収入が低いひとり親家庭などは審査に通りにくいのが現状です。
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奨学金と教育ローンは、お金を借りる契約者が異なります。
教育ローンはおもに保護者・養育者が「子どもの学費のために借りるお金」なのに対し、奨学金は学生本人が「自分の学費のために借りるお金」です。奨学金は、借りた本人に返済の責任があるため、在学中は返済が免除され、卒業をしてから返済するのが一般的です。
教育ローンを学生本人が借りられないわけではありません。ただし、「年間200万円以上の安定した収入」など条件があるため、実際には社会人学生など限られた人しか利用できません。
奨学金と教育ローンの違いについては、こちらの記事 でも詳しく解説されています。合わせてご確認ください
国の教育ローンの審査を有利にすすめるポイントは、以下のとおりです。
国の教育ローンは学生の保護者・養育者を対象にしているため、原則として実の親が申し込むほうが有利です。
ただし、6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族でも申し込みは可能です。学生(子ども)から見て祖父母や兄弟・姉妹は2親等の血族、叔(伯)父・叔(伯)母は3親等の血族にあたるので申請はできますが、親のほうが優先されます。
家族が賃貸住宅でなく持ち家に住んでいると、審査に有利になるとされています。理由は、持ち家があることで所在確認がしやすく、連絡がつきやすいからです。
また持ち家に住んでいて住宅ローンを組んでいる場合、滞りなく返済しているという実績は、教育ローンの審査にも有利に働きます。
教育資金融資基金の保証とは、借り手が万が一返済困難になった場合、借り手に代わって取扱金融機関に対して弁済を行う仕組みのことです。
教育資金融資基金の保証は、国の教育ローン申し込み者の9割程度が利用しています。
※返済が困難になった場合、教育資金融資保証基金が取扱金融機関に対して弁済を行う。
出典:教育資金融資保証基金「信用保証制度の概要」をもとに作成
国の教育ローン審査に落ちる人には、次のような特徴があります。
他社からの借り入れが多い人は、国の教育ローンに限らず審査に通りづらくなります。むやみに借り入れをしていると「計画性がない」と判断され、お金を借りることは難しくなるでしょう。また、一部でも返済が滞っている事実があればさらに審査に通りづらくなります。
過去に自己破産や金融事故を起こしたことがある人も、ローン審査には不利になります。しかし、過去を隠して申請しても必ず判明するため、虚偽の申告をしてはいけません。
特に自己破産や任意整理、個人再生等の債務整理を行った履歴は最大で10年記録が残ります。ローンの審査時には必ずチェックされるため、隠し通すのは不可能です。
国の教育ローンを断られてしまった場合の対処方法は、以下のとおりです。
生活福祉資金貸付は、所得の少ない世帯や要介護者のいる世帯に、資金の貸し付けと相談支援を行う社会福祉制度です。貸し付けの対象は「世帯」であり、家族全員の就労、就学、疾病、家計の収支、貯金や負債などの状況確認が必要です。
生活福祉資金貸付は目的に応じて支給され、その一つが「教育福祉資金」です。学校教育法に規定される高校、高等専門学校、短期大学、大学、専修学校などの未払いの授業料に充てられます。
国の教育ローン審査に落ちたのが学生の父親である場合、妻(学生の母親)や学生の祖父母が申し込むことで、審査を通過できる場合もあります。
ローン審査では「個人」の情報を見るため、たとえば父親が過去に金融事故を起こしていたのであれば、年収等の要件をクリアしていても審査では落とされる可能性があります。この場合、妻や祖父母が審査に不利な履歴を持っていなければ、審査を通過する可能性もあります。
国の教育ローン審査に落ちた理由が「年収の高さ」の場合、銀行の教育ローンなら通る可能性が十分にあります。前述の通り、国の教育ローンは「所得の低い世帯の救済」を目的としているため、所得が高いと落とされることが多くなります。
一方、銀行は返済能力のある高所得者ほど貸してくれる可能性が高くなるので、年収の高さが理由で国の教育ローン審査に落ちた場合、銀行の教育ローンを利用するとよいでしょう。
国の教育ローンを申し込み、貸付が行われるまでの流れは、以下のとおりです。
1.申し込み
インターネット、郵送、来店によるいずれかの方法で申し込みます。受験前、合格前であっても申し込みは可能です。
2.審査結果の連絡
申し込み必要書類がそろった後、審査が開始されます。審査結果が出次第、(通過の場合は)「ご融資のお知らせ(兼借用証書)」などの書類が自宅に送付されます。
3.契約
契約に必要な書類をそろえ、郵送または来店で日本政策金融公庫へ提出します。必要書類は以下のとおりです。
4.貸付(入金)
貸付金は、申込人名義の金融機関の口座に日本政策金融公庫から直接入金されます。
国の教育ローンは、「子どもを進学させたいけれど、金銭的に余裕がない」家庭を救済する貸付制度です。世帯所得が低いほど審査に通りやすくなるので、収入が低いという理由で子ども進路に迷っている人は利用することをおすすめします。本記事を参考に、まずは、審査に有利になるポイントを確認し、返済シミュレーションをしてみましょう。
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