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国の教育ローンの審査基準やひとり親家庭の優遇措置を解説

執筆者:マネーFix 編集部

【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩

一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。

子どもの進学には多額の入学金や学費、教材費等を準備する必要があり、さらに親元を離れて暮らす場合は家賃や光熱費といったお金もかかります。こうした費用をまかなうために、国が提供する教育ローンを利用する人も多いのではないでしょうか。

「国の教育ローンで借りれる額はいくら?」「国の教育ローンを借りるときの母子・父子家庭の金利は?」「国の教育ローンは母子・父子家庭でも申し込みできる?」など疑問があると思います。

この記事では、国の教育ローンの特徴や審査基準、奨学金・金融機関の教育ローンとの違い、審査を有利に進めるポイントなどを解説します。

この記事でわかること
  • 教育ローンの概要
  • 教育ローンの返済シミュレーション
  • 教育ローンの審査

国の教育ローンの概要

国の教育ローンは、学校教育の機会均等および子育て家庭の経済負担を軽減させる目的で、国が直接個人にお金を貸し付ける制度です。「教育一般貸付」ともよばれています。

民間の教育ローンとは異なり、日本政策金融公庫が取り扱う公的なローンで、母子・父子家庭の利用が優先されます。そのため、共働きなどで世帯年収が多い家庭は利用できないこともあります。

借入できる上限額

国の教育ローンの借入可能額は、子ども1人につき最大350万円です。ただし下記のいずれかに該当する場合に限り、上限450万円となります。

  • 自宅外通学
  • 修業年限5年以上の大学(昼間部)
  • 大学院
  • 海外留学(修業年限3ヵ月以上の外国教育施設)

対象となる学校種別

国の教育ローンは、義務教育である中学卒業後のあらゆる教育機関が対象です。具体的には、大学、大学院、短大、高校、高専(高等専門学校)、専門学校、各種学校、予備校、デザイン学校など多岐にわたります。

年収制限

国の教育ローンの対象は、高校、大学などの学校に入学・在学する学生の保護者(主に生計を維持する人)で、世帯年収(所得)が下表の金額以内の人です。扶養する子どもの人数によって、上限額が異なります。

世帯年収(所得)の上限額
扶養する子どもの人数 世帯年収(所得)の上限額
1人 790万円(600万円)
2人 890万円(690万円)
3人 990万円(790万円)
4人 1090万円(890万円)
5人 1190万円(990万円)
(※)括弧内の金額は事業所得者の場合の所得上限額

なお、子どもが2人以下の場合、以下の条件のうち1つを満たすことで、上限額が990万円(790万円)になります。

  • 勤続(営業)年数が3年未満
  • 居住年数が1年未満
  • 世帯のいずれかの人が自宅外通学(予定)者
  • 借入申込人またはその配偶者が単身赴任
  • 海外留学資金
  • 借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率が30%超
  • 親族に「要介護(要支援)認定」を受けている人がおり、介護に関する費用を負担
  • 大規模な災害により被災した人
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて世帯の収入または所得が減少した人

審査基準

民間の教育ローンと異なり、経済的に困窮している家庭のほうが審査に通りやすいのが特徴です。また、ひとり親家庭や、扶養する子どもの人数が多い家庭の方が審査の際に有利とされています。

保証料

国の教育ローンで融資を受けるためには、連帯保証人が必要です。

連帯保証人は原則、別居・別生計の一定の親族となるため、家庭によっては連帯保証人をお願いできる人がいない場合があります。このような場合に利用できるのが保証基金(保証機関)で、融資額に応じた保証料を負担します。

融資額100万円、返済期間10年の場合の保証料は下表の通りです。

  • 利息のみ期間なし:3万795円
  • 利息のみ期間2年:3万6954円
  • 利息のみ期間4年:4万3113円
(※)2022年8月以降、保証料が下げられました

条件を満たすと保証料の優遇が受けられる

保証料に関しては、以下の条件を満たすと通常の2分の1に優遇されます。

  • 母子(父子)家庭
  • 交通遺児家庭
  • 扶養する子どもが3人以上の世帯で世帯年収500万円(所得356万円)以内

以前は保証料の優遇は3分の2でしたが、2022年に2分の1に引き下げられました。

国の教育ローンの4つのポイント

国の教育ローンのポイントは、以下の通りです。

  • 母子家庭や収入の不安定な人でも申し込める
  • 金利が低く返済負担が軽い
  • ひとり親世帯への優遇措置がある
  • 奨学金と併用することもできる

母子家庭や収入の不安定な人でも申し込める

国の教育ローンは母子・父子家庭でも申し込むことができます。

銀行など民間の金融機関にローンを申し込む際は、返済能力が重視されるため、パート・アルバイトなど収入の不安定な人や、母子(父子)家庭の人は審査に通りづらい傾向があります。

しかし、国の教育ローンは、あくまでも学校教育の機会均等を目的としているため、「金銭的に余裕がなく子どもを進学させられない」人が優先されます。

金利が低く返済期間が長い

国の教育ローンの金利は、固定金利年2.40%です。ただし、以下の条件を満たす場合は0.40%の金利優遇が受けられます。

  • 交通遺児家庭
  • 母子家庭、父子家庭
  • 世帯年収200万円(所得122万円)以内
  • 扶養する子どもが3人以上で世帯年収500万円(所得356万円)以内

返済期間は、最長18年まで可能で、民間のローンと比べて返済負担が軽くなっています。以前は特定の用件を満たす場合以外は15年でしたが、すべての家庭で一律18年に変更されました。

国の教育ローンの金利は、2024年5月1日より2.40%(固定金利・保証料別)に上がっています。2023年6月時点の金利は1.95%(固定金利)だったので、上昇傾向に転じています。

国の教育ローンの金利見直しは、毎年5月と11月に行われています。したがって、2024年11月頃までは2.40%の金利が適用になります。

ひとり親世帯への優遇措置がある

母子・父子家庭などのひとり親家庭への優遇措置があるのも、国の教育ローンの特徴です。

例えば、扶養する子どもの人数が3人以上で、世帯年収500万円(事業所得者の場合の所得上限額は356万円)以内の場合は金利が優遇され、固定金利年2.00%で教育ローンを組むことが可能です。母子・父子家庭の場合は、国の教育ローンの金利は2.00%になります。

奨学金と併用することもできる

国の教育ローンは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金と併用することもできます。例えば、入学納付金は国の教育ローン、在学中の費用は奨学金という使い分けも可能です。

国の教育ローンの返済シミュレーション

国の教育ローンを利用する際、心配なのは返済の計画です。日本政策金融公庫のホームページでは返済シミュレーターが用意されています。自身の借入額と返済期間を入力し、事前に返済プランを検討してみてください。

シミュレーション条件
  • 450万円を借りる
  • 18年で返済する
  • ボーナス払いなし
  • 金利2.40 %
毎月の返済額(18 年) 2万5800 円
利息のみの返済期間の返済額 0円
ボーナス月の返済額 0円
1年間の返済額 30万9300 円
返済総額 554万1000 円
保証料総額 24万9583 円

国の教育ローンの審査は厳しい?民間の教育ローンとの違い

国の教育ローンと金融機関の教育ローンの最大の違いは、審査基準です。国の教育ローンの審査は、一般的に民間金融機関の教育ローンに比べて厳しくありません

国の教育ローンの目的は「学校教育の機会均等および子育て家庭の経済負担を軽減」のため、困窮している家庭を優先しています。そのため、審査基準は比較的緩やかであり、多くの学生が利用できるように設定されています。

一方、銀行などの民間金融機関は返済能力が審査されます。審査の基準も、「安定した収入があるかどうか」や「他社からの借入があるかどうか」などが中心で、収入が低いひとり親家庭などは審査に通りにくいのが現状です。

国の教育ローンを検討するのと並行して、民間の教育ローンの情報も集めておきましょう。国の教育ローンの審査に通らなかったときに備えて、複数の金融機関から借入プランの提案を受けるのもおすすめです。

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奨学金と教育ローンの違い

奨学金と教育ローンは、お金を借りる契約者が異なります。

教育ローンは主に保護者・養育者が「子どもの学費のために借りるお金」なのに対し、奨学金は学生本人が「自分の学費のために借りるお金」です。奨学金は、借りた本人に返済の責任があるため、在学中は返済が免除され、卒業してから返済するのが一般的です。

教育ローンを学生本人が借りられないわけではありません。ただし、「年間200万円以上の安定した収入」など条件があるため、実際には社会人学生など限られた人しか利用できません。

奨学金と教育ローンの違いについては、こちらの記事でも詳しく解説されています。合わせてご確認ください。
参考:【子どもの教育費】奨学金と教育ローンの違いとは?メリット・デメリットを解説

国の教育ローンの審査を通りやすくするために

国の教育ローンの審査を有利にすすめるポイントは、以下の通りです。

  • 親が申し込む
  • 家の所有(持ち家)
  • 教育資金融融資基金の保証を利用する

親が申し込む

国の教育ローンは学生の保護者・養育者を対象にしているため、原則として実の親が申し込む方が有利です。

ただし、6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族でも申し込みは可能です。学生(子ども)から見て祖父母や兄弟・姉妹は2親等の血族、叔(伯)父・叔(伯)母は3親等の血族にあたるので申請はできますが、親の方が優先されます。

家の所有(持ち家)

家族が賃貸住宅でなく持ち家に住んでいると、審査に有利になるとされています。理由は、持ち家があることで所在確認がしやすく、連絡がつきやすいからです。

また持ち家に住んでいて住宅ローンを組んでいる場合、滞りなく返済しているという実績は、教育ローンの審査にも有利に働きます。

教育資金融資基金の保証を利用する

教育資金融資基金の保証とは、借り手が万が一返済困難になった場合、借り手に代わって取扱金融機関に対して弁済を行う仕組みのことです。

教育資金融資基金の保証は、国の教育ローン申し込み者の9割程度が利用しています。


(※)返済が困難になった場合、教育資金融資保証基金が取扱金融機関に対して弁済を行う。

出典:教育資金融資保証基金「信用保証制度の概要」をもとに作成

国の教育ローン審査に落ちる人の特徴

国の教育ローン審査に落ちる人には、次のような特徴があります。

  • ほかに多額の借金がある
  • 自己破産や金融事故の履歴がある

ほかに多額の借金がある

他社からの借入が多い人は、国の教育ローンに限らず審査に通りづらくなります。むやみに借入をしていると画性がない」と判断され、お金を借りることは難しくなるでしょう。

また一部でも返済が滞っている事実があれば、さらに審査に通りづらくなります。

自己破産や金融事故の履歴がある

過去に自己破産や金融事故を起こしたことがある人も、ローン審査には不利になります。しかし、過去を隠して申請しても必ず判明するため、虚偽の申告をしてはいけません。

特に自己破産や任意整理、個人再生等の債務整理を行った履歴は最大で10年記録が残ります。ローンの審査時には必ずチェックされるため、隠し通すのは不可能です。

債務整理(任意整理)をするかどうか迷っている方は、こちらの記事を参考にしてください。
参考:債務整理後の教育ローンや奨学金|中野債務整理手続きセンター(東京)

国の教育ローンの審査に落ちてしまったら

国の教育ローンに落ちてしまったときの対処方法は、以下の通りです。

  • 生活福祉資金貸付など国の支援制度を利用する
  • 祖父母や配偶者の名義で申し込む
  • 銀行のローンに申し込む

生活福祉資金貸付など国の支援制度を利用する

生活福祉資金貸付は、所得の少ない世帯や要介護者のいる世帯に、資金の貸し付けと相談支援を行う社会福祉制度です。貸し付けの対象は「世帯」であり、家族全員の就労、就学、疾病、家計の収支、貯金や負債などの状況確認が必要です。

生活福祉資金貸付は目的に応じて支給され、その1つが「教育福祉資金」です。学校教育法に規定される高校、高等専門学校、短期大学、大学、専修学校などの未払いの授業料に充てられます。

祖父母や配偶者の名義で申し込む

国の教育ローン審査に落ちたのが学生の父親である場合、妻(学生の母親)や学生の祖父母が申し込むことで、審査を通過できる場合もあります。

ローン審査では「個人」の情報を見るため、たとえば父親が過去に金融事故を起こしていたのであれば、年収等の要件をクリアしていても審査では落とされる可能性があります。この場合、妻や祖父母が審査に不利な履歴を持っていなければ、妻名義や祖父母名義で審査を通過する可能性もあります。

銀行のローンに申し込む

国の教育ローン審査に落ちた理由が「年収の高さ」の場合、銀行の教育ローンなら通る可能性が十分にあります。前述の通り、国の教育ローンは「所得の低い世帯の救済」を目的としているため、所得が高いと落とされることが多くなります。

一方、銀行は返済能力のある高所得者ほど貸してくれる可能性が高くなるので、年収の高さが理由で国の教育ローン審査に落ちた場合、銀行の教育ローンを利用するとよいでしょう。

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国の教育ローン貸付までの流れ

国の教育ローンを申し込み、貸付が行われるまでの流れは、以下の通りです。

1.申し込み
インターネット、郵送、来店によるいずれかの方法で申し込みます。受験前、合格前であっても申し込みは可能です。

2.審査結果の連絡
申し込み必要書類がそろった後、審査が開始されます。審査結果が出次第、(通過の場合は)「ご融資のお知らせ(兼借用証書)」などの書類が自宅に送付されます。

3.契約
契約に必要な書類をそろえ、郵送または来店で日本政策金融公庫へ提出します。必要書類は以下の通りです。

  • 「ご融資のお知らせ(兼借用証書)」
  • 印鑑証明書
  • 合格を確認できる書類
    (合格通知書、入学許可書等)
  • 「預金口座振替利用届」
    (金融機関からの自動振替による返済を希望する場合)
  • 送金先口座の預金通帳

4.貸付(入金)
貸付金は、申込人名義の金融機関の口座に日本政策金融公庫から直接入金されます。

まとめ

国の教育ローンは、子ども1人につき最大350万円を借入できます。「子どもを進学させたいけれど、金銭的に余裕がない」家庭を救済する貸付制度です。

国の教育ローンは世帯年収に制限があります。世帯所得が低いほど審査に通りやすくなるので、収入が低いという理由で子ども進路に迷っている人は利用することをおすすめします。

この記事を参考に、まずは、審査に有利になるポイントを確認し、返済シミュレーションをしてみましょう。

国の教育ローンに落ちてしまった場合は、民間の教育ローンを検討しましょう。教育ローンを利用する場合も、国の教育ローンと同様に年収や勤続年数などをもとに返済能力が審査されます。こちらの記事では、教育ローンの審査について解説します。

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