老後に年金収入だけで生活しようとすると、家計の収支が赤字になる可能性があります。「老後資金はいくら必要なのだろう」「老後資金をどうやって貯蓄すればよいか」など不安に感じている人もいるでしょう。
生活に困窮しないようにするためには、早い段階から老後資金を準備することが重要です。
この記事では、老後の生活費について詳しく解説します。
- 老後資金の準備方法
- 不足しそうな金額や貯蓄方法
- 資産運用の方法
【監修】株式会社RKコンサルティング
河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
老後に年金収入だけで生活しようとすると、家計の収支が赤字になる可能性があります。「老後資金はいくら必要なのだろう」「老後資金をどうやって貯蓄すればよいか」など不安に感じている人もいるでしょう。
生活に困窮しないようにするためには、早い段階から老後資金を準備することが重要です。
この記事では、老後の生活費について詳しく解説します。
老後に必要な生活費は、独身か夫婦かでも異なります。総務省「家計調査報告」をもとに、1ヵ月の生活費を下表にまとめます。
費目 | 独身 | 夫婦 |
---|---|---|
家賃 | 1万2746円 | 1万5578円 |
食費 | 3万7485円 | 6万7776円 |
光熱・水道費 | 1万4704円 | 2万2611円 |
日常費 | 5,956 円 | 1万371円 |
服飾費 | 3,150円 | 5,003円 |
医療費 | 8,128円 | 1万5681円 |
交通費 | 1万4625円 | 2万8878円 |
教養・娯楽費 | 1万4473円 | 2万1365円 |
その他 | 3万1872円 | 4万9430円 |
合計 | 14万3139円 | 23万6693円 |
老後の生活費をまかなえるだけの年金がもらえれば問題ありませんが、そうはいかないのが実情です。65歳以上の年金生活をしている世帯の年金額の平均は、以下の通りです。
前述した1ヵ月の生活費と照らし合わせると、独身世帯では2万1643円、夫婦世帯では1万6275円の赤字になり、決して余裕がある状態とはいえません。
また、表では平均値なので家賃が1万5000円程度となっていますが、賃貸の場合は実際にはもっとかかる可能性があります。その場合、赤字はさらに膨らむことになるでしょう。
老後に足りない生活費を補うためには、ある程度の蓄えがないと厳しいのも実情です。60~69歳、70歳以上の金融資産保有額の平均は、以下のようになっています。
年齢 | 独身世帯 | 夫婦世帯 |
---|---|---|
60~69歳 | 1860万円 | 2427万円 |
70歳~ | 1786万円 | 2209 万円 |
ただし、これらはあくまで平均値です。必要な老後資金は人によって違います。
病気・ケガで長期療養を余儀なくされたり、老人ホームに入らざるを得なくなったりするなど、一度にまとまったお金が出ていく可能性もあります。「これだけあれば絶対大丈夫」という金額が不確かなのも、老後資金ならではの事情です。
老後資金を用意するためには、資産形成を行うのがおすすめです。ここでは、次の5つの方法を紹介します。
財形年金貯蓄とは、55歳未満の勤労者が金融機関などと契約を結び、給与から一定額を積み立てして、60歳以降に年金として支払いを受けるための制度です。毎月の給与からの天引きで貯めることになるので、預貯金が苦手な人でも取り組みやすいのが特徴です。
ただし、すべての企業でこの制度が取り入れられているわけではありません。
財形年金貯蓄を利用できるかどうかは、勤務先の担当部署(総務など)に確認が必要です。会社勤めをしており、年齢が20~40代など比較的若い人向けの制度といえるでしょう。
iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことです。自分で金額を決めて掛金を払い、金融商品で運用した後、原則として60歳以降に年金または一時金として受け取る仕組みになっています。
iDeCoのメリットは、積立時・運用時・受取時に税制優遇措置が受けられる点にあります。掛金は全額所得控除でき、金融商品の運用益も非課税。年金もしくは一時金を受け取る際も、一定額までは非課税です。
ただし、元本が保証されないため、運用状況によっては資産が減る可能性もあります。また、原則として60歳までは引き出せません。
iDeCoが向いているのは、安定した収入が見込める人、20代など比較的若い世代、退職金がない(もしくは少ない)人などです。
NISAとは、少額投資非課税制度のことです。
NISAのメリットは、一定の範囲内で運用益が非課税になるため、効率よく資産を増やせる点です。
本来、株や投資信託などの金融資産を運用して利益が出た場合、20.315%の税金がかかりますが、NISA口座を通じての運用であれば非課税です。ただし、あくまで投資であるため、元本割れするリスクはあります。
NISAは、18歳以上であれば口座を開設できます。早めに始めればそれだけ運用できる期間や金額も増えるので、20代・30代など若い世代の人にもおすすめです。利用可能年齢に上限はないため、40代以降であっても着実に資産を増やすことができます。
個人年金保険とは、公的年金・企業年金ではまかなえない老後資金をカバーする保険です。毎月掛け金を払っていくと、一定年齢(満65歳など)に達した時点から年金が受け取れるようになります。民間の保険会社が販売する保険商品の一種です。
毎月強制的に保険料を払うことになるので、預貯金が苦手な人にも向いています。加えて、個人年金保険料控除を受けられるので、結果として節税にもつながるでしょう。
ただし、インフレによって急激に物価が上昇した場合に、受け取る年金の価値が目減りする点に注意が必要です。また、早くに亡くなってしまった場合、受け取れる年金総額が支払った保険料を下回る可能性があります。
個人年金保険に加入できる年齢の上限は、商品により異なります。80代で加入できるものもあり、比較的幅広い世帯に向いている商品です。
年金の繰り下げ受給とは、老齢基礎年金・老齢厚生年金を65歳から受け取らずに、66~75歳に繰り下げて受け取ることです。
繰り下げた期間に応じて年金が増額される点がメリットです。65歳時点での年金額を100%とした場合、75歳まで繰り下げれば増額率は84%にも達します。
一方、年金受給の繰り下げをした場合、加給年金は受け取れなくなります。加給年金とは、65歳になって年金の受給権が発生した際、要件に当てはまる配偶者や子がいると上乗せされる年金のことです。
また、繰り下げ受給によって年金額が増えると、それに応じて税金や社会保険料も上がる点に注意してください
65歳が近づいてきた時点で、繰り下げ受給をすべきかどうか、専門家に相談することをおすすめします。
老後資金について相談できる窓口は、主に以下の通りです。
中でもおすすめなのがファイナンシャルプランナー(FP)です。お金の専門家であるFPならば、老後資金だけでなく、家計の見直しや住宅ローンなど、お金に関するあらゆる悩みを解決してくれます。
FPに相談するメリットは、自分に合った方法を提案してくれることです。金融に関する知識がない場合でも、聞けば丁寧に教えてくれるでしょう。
FPへの相談には有料のものと無料のものがあります。無料で相談できるマネードクターのFP相談については、こちらで詳しく紹介しています。
FPに老後資金の相談をするときは、事前の準備をしっかり行いましょう。有益なアドバイスをもらうために押さえておきたいポイントは、以下の通りです。
FPに相談する際には、収支の現状を正確に伝えましょう。FPが相談者に合った適切な提案をするために必要不可欠な情報です。
例えば、老後資金の相談であっても「40代で年収が1000万円台の人」と「20代で年収が400万円台の人」とではやるべきことが異なります。具体的には、以下について伝えられるようにしましょう。
込み入った話になると即答しづらい部分もあるので、事前にメモにまとめていくことをおすすめします。
税金や投資に関する知識をある程度は理解しておきましょう。
前述したiDeCoやNISAは、資産運用を行うことで一定の節税効果が得られる制度です。そのため、iDeCoやNISAについてFPが説明する場合、税金や投資の基本的な知識がないと理解できない部分も出てきます。
もちろん、わからないことは聞けば教えてくれますが、基本的な知識がある方が充実したやり取りになるでしょう。
できれば、複数のFPに相談してアドバイスをもらうようにしましょう。同じ相談であっても、FPによって提案してくれる解決策は異なります。
例えば、老後資金を準備する方法1つとっても、iDeCoやNISAを進めるFPもいれば、個人年金保険や財形年金貯蓄をすすめるFPもいます。それらの方法をすすめる理由が、自分に合っているかどうかを判断するためには、複数のFPに相談して色々な意見を聞くことが重要です。
老後であっても、それなりに生活費はかかります。年金だけですべてをまかなうことができない可能性もあるため、ある程度の貯蓄を準備してから老後を迎えたいところです。
そのためには、自分に合った貯蓄方法を見つけ、早いうちからコツコツと積み上げていきましょう。貯蓄の方法としては、財形年金貯蓄、iDeCo、NISA、個人年金保険、年金受給の繰り下げなどがあります。
「自分に合う方法がわからない」という人は、一度FPに相談してみることをおすすめします。
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