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医療費控除でいくら戻る?計算方法と控除額のシミュレーション

執筆者:佐藤 憲亮

【記事執筆】税理士佐藤 憲亮

「お客様との対話を大事に」をモットーに、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。税務記事や税務論文の執筆もおこなっている、書くことが好きな税理士。税理士事務所で12年の実務経験を積み、2020年に税理士登録。

どんなに気をつけていたとしても病気やけがなどは避けることができないものです。病院にかかって多くの医療費が必要となることもあります。「医療費の負担を少しでも軽くしたい」「医療費控除はいくら受けられるのか」という疑問を持っている人もいるでしょう。

1年間で一定額以上の医療費を負担した場合は、医療費控除の適用を受けることができます。手術などで多額の医療費がかかった場合や、治療のために長期の通院が必要となる場合、医療費控除を受けられる可能性があります。

この記事では、医療費控除の概要や計算方法について解説します。

  • 医療費控除の対象となる医療費
  • 医療費控除の計算方法
  • 確定申告書への記載方法

医療費控除の概要

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に、自身や生計を一にする配偶者や子どもなど、親族の治療のために支払った医療費について、所得から控除することができる制度です。

(※同居で生活費を同じにしている場合や、別居で仕送りしているなどで生活費を負担していること)

一定の計算方法により算出した金額が、200万円を限度として控除されます。

医療費控除の適用を受けるための要件は、その年に治療を受けて支払いが完了している必要があります。そのため、12月31日時点で未払いになっている治療費はその年の医療費控除には含まれません。ただし、クレジットカードで支払った場合は、カード利用料の引き落としが年をまたいだとしても、カード決済をした日が支払いをした日となります。

例えば、5万円の治療費を現金で支払う場合、3万円を12月31日までに支払い、残りの2万円を翌年に支払ったときは、3万円分がその年の医療費控除の対象となります。

また、医療費控除は年末調整で受けることができず、翌年3月15日までに確定申告をすることでその適用を受けることができます。確定申告を忘れてしまった場合でも、過去5年はさかのぼって申告することができます。

医療費控除の対象になるものならないもの

医療費控除は治療のために支払ったものが対象となります。医療費控除の対象となるもの、対象とならないものは以下の通りです。

対象となる医療費
  • 医師または歯科医師による診療または治療の対価
  • 治療または療養に必要な医薬品の購入の対価
  • 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(治療にかかるもの)
  • 保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価(家政婦に病人の付き添いを頼んだ場合の療養上の世話の対価)
  • 助産師による分べんの介助の対価
  • 介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価
  • 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
  • 医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの
  • 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
  • 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金
対象とならない医療費
  • 健康診断、人間ドック、予防接種などの予防費用
  • 保険外の被せ物や詰め物(美容を目的とするもの)
  • 医師等の指示により処方された医薬品以外のもの
  • 薬機法2条1項に規定する医薬品以外のもの
  • 疲れをとるため等の施術、予防のための施術
  • 家政婦に対する所定の料金以外の心付け
  • 親族等に付き添いがあった場合の付添料
  • 身の回り品の購入費用
  • 実家で出産するために実家に帰省する交通費
  • 出前、外食等にかかる食事代
  • 日常生活費
  • 特別なサービス費用
  • 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車代
出典:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」

医療費控除の計算方法と注意点

医療費控除の計算方法は以下の通りです。最高200万円の所得控除を受けることができます。

[支払った医療費の額 ]-[保険金等で補填された額]-10万円

(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、[総所得金額等]×5%

「保険金等で補填された額」は、生命保険から給付される入院給付金、健康保険から給付される高額療養費や出産一時金などのことをいいます。また、保険金等で補填される金額は、その保険金の給付の要因となった医療費を限度として差引くので、医療費を超える部分の金額はほかの医療費からは差引くことはできません。

医療費控除のシミュレーション

では、医療費控除によって、どの程度所得税が減税されるのかをシミュレーションしてみましょう。

医療費控除がある場合の所得税額と、医療費控除がない場合の所得税額を比較することで、減税効果を算出します。なお、ここではわかりやすくするため、医療費控除以外の所得控除は考慮せずに計算します。

事例1:支払った医療費が50万円

  • 所得金額:500万円
  • 支払った医療費:50万円
  • 保険金等で補填された額:20万円(保険金等の給付対象となる医療費30万円)
医療費控除がある場合の所得税額

医療費控除:
(50万円(医療費)‐20万円(保険金))‐10万円 = 20万円(医療費控除額)

課税所得:
500万円(所得金額)‐20万円(医療費控除額)=480万円(課税所得)

所得税額:
480万円×20%‐42万7500円(計算上の控除額)=53万2500円(所得税額)

医療費控除がない場合の所得税額

500万円×20%‐42万7500円=57万2500円

したがって、医療費控除を受けることで、57万2500円-53万2500円=4万円の減税効果があります。

なお、医療費控除の計算上、保険金等で補填された額は医療費控除の対象から外れるので、事例1では30万円の医療費から保険金等20万円を差引いて計算しています。

事例2:支払った医療費が300万円

  • 所得金額:500万円
  • 支払った医療費:300万円
  • 保険金等で補填された額:50万円(対象となる30万円)
医療費控除がある場合の所得税額

医療費控除:
(300万円(医療費)-30万円(保険金))-10万円=260万円≧200万円(限度額)=200万円(医療費控除額)

課税所得:
500万円(所得金額)-200万円(医療費控除額)=300万円(課税所得)

所得税額:
300万円×10%-9万7500円(計算上の控除額)=20万2500円(所得税額)

医療費控除がない場合の所得税額

500万円×20%‐42万7500円=57万2500円

したがって、医療費控除を受けることで、57万2500円-20万2500円=37万円の減税効果があります。

医療費から控除する、保険金等で補填された額の限度額は、保険金の給付原因となった医療費からのみ差引くので、医療費30万円を限度として控除します。また、医療費控除の限度額は200万円なので、200万円を超えた金額は切り捨てとなります。

事例3:支払った医療費が10万円

  • 所得金額:150万円
  • 支払った医療費:10万円
  • 保険金等で補填された額:0円
医療費控除がある場合の所得税額

医療費控除:
10万円(医療費)‐(150万円(合計所得金額)×5%)=2万5000円(医療費控除額)

課税所得:
150万円(所得金額)‐2万5000円(医療費控除額)=147万5000円(課税所得)

所得税額:
147万5000円×5% = 7万3750円(所得税額)

医療費控除がない場合の所得税額

150万円×5%=7万5000円

したがって、医療費控除を受けることで、7万5000円‐7万3750円=1,250円の減税効果があります。

医療費控除額を算出する際に差引く金額は、「10万円」と「総所得金額等×5%」のいずれか低い方の金額です。所得金額が200万円未満であれば、総所得金額等×5%の方が有利となります。

医療費控除の明細書をエクセルで作成する方法

ここでは、確定申告で医療費控除の適用を受けるために必要な資料、医療費の集計方法、確定申告書への記載方法などを解説します。

準備資料

医療費控除の明細書を作成するため、下記の資料を準備しましょう。

  • 健康保険組合から送付される「医療費のお知らせ」
  • 医療費の領収書
  • 確定申告書の記入用紙(国税庁の確定申告作成コーナーから入力する場合は不要)
  • マイナンバーカード、又は個人番号通知カード
  • その他確定申告に必要な資料

医療費の領収書は、確定申告をする際に必ずしも添付する必要はありません。「医療費控除の明細書」や「医療費のお知らせ」を確定申告書に添付することにより、領収書の添付を省略することができます

国税庁の「医療費集計フォーム」の利用方法

医療費控除を申告するには、その年に支払った医療費の領収書を集計する必要があります。集計は、国税庁ホームページにある「医療費集計フォーム」(Excelファイル)を利用する方法がおすすめです。

医療費集計フォームのダウンロード

集計表をダウンロードし、医療を受けた人、医療機関ごとに入力していきます。入力したExcelファイルは国税庁の確定申告書作成コーナーから、医療費控除の明細を作成する際にデータを取り込むことも可能です。

先述の通り、領収書の代わりに「医療費のお知らせ」を利用することもできますが、健康保険組合によっては「医療費のお知らせ」が届くのが遅く、1月から9月までの医療費分しかそろわない場合があります。そのときは10月から12月までの医療費については、「医療費集計フォーム」で集計する必要があります。

また、「医療費のお知らせ」は健康保険を利用した医療費のみが記載されており、自費診療分は記載されていません。そのため、自費診療分の医療費は年間分を「医療費集計フォーム」に入力するようにしましょう。

確定申告書への記載方法

確定申告書作成コーナーで「医療費集計フォーム」を取り込む場合は、医療費控除額が自動で計算されますが、手書きで申告書に記入するときは「医療費控除の明細書【内訳書】」を利用します。

医療費控除の明細書
出典:国税庁「医療費控除の明細書【内訳書】」

「医療費のお知らせ」が手元にある場合は、「1.医療費通知に記載された事項」(黄色部分)に医療費の自己負担額と実際に支払った額を記入します。

「医療費のお知らせ」がない場合は、医療費集計フォームで集計し、「2.医療費の明細」(赤枠部分)に医療を受けた人ごと、医療機関ごとに金額を記入します。

上記の金額をもとに、下記の手順で医療費控除額を計算します。

  1. 医療費の合計額(AとB)を記入
  2. 差引金額Cを記入
  3. 所得税申告書第一表の「所得金額等」の合計額をDに転記
  4. D×0.05の金額をEに記入
  5. Eの金額と10万円のうち、いずれか少ない金額をFに記入
  6. C-Fの金額をGに記入
  7. Gの金額を所得税申告書第一表の「医療費控除」欄に記入

これで医療費控除額の計算、申告書の記載は完了となります。

なお、医療費控除額を算出するには、先に所得金額を確定する必要があるので、順序を間違えないようにしましょう。

まとめ

この記事では、医療費控除の対象となるものならないもの、医療費控除の適用を受けた場合の減税効果のシミュレーション、医療費控除の確定申告の方法を解説しました。

医療費控除を受けるには、年間分の医療費を集計し、書類をそろえて確定申告をする必要があります。「医療費のお知らせ」を利用することで集計作業や確定申告の作業が簡素化できます。「医療費のお知らせ」はなくさずに保管しておくようにしましょう。

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