老後は現役世代のようにバリバリ働くことは難しくなるため、貯蓄を切り崩して生活するケースが多いです。そのため、老後を迎えるまでに、まとまった資金を用意しておく必要があります。
では、老後の資金はどれだけ必要なのでしょうか?
また、どのようにして資産形成すれば良いのかも気になるところです。この記事では、それらの疑問に答えているので、ぜひ参考にしてください。
【監修】株式会社RKコンサルティング
河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
老後は現役世代のようにバリバリ働くことは難しくなるため、貯蓄を切り崩して生活するケースが多いです。そのため、老後を迎えるまでに、まとまった資金を用意しておく必要があります。
では、老後の資金はどれだけ必要なのでしょうか?
また、どのようにして資産形成すれば良いのかも気になるところです。この記事では、それらの疑問に答えているので、ぜひ参考にしてください。
● 「老後」とは何歳からを想定していますか?
「65歳から」を老後と考えている人が41.3%で最も多い結果となりました。
続いて、「60歳から」「70歳から」をイメージする人が同程度の割合です。
これら以外の回答をした人が極めて少ないことからも、60~70歳頃から老後と捉える人が大半であることがわかります。
● 老後資金の使い道として想定する内容を教えてください
想定する老後資金の使い道について、最も回答が多かったのは「生活費」で、8割超でした。
次いで、「医療・介護費」が66.8%です。
そのほか、「介護保険料」「老人ホーム等の施設利用費」など、老後の暮らしに欠かせない項目の割合が高いものの、一方で「趣味・娯楽の費用」も37%と一定の割合が集まりました。
年代別に見ても、全体の傾向と大きな差はありません。
● 65歳までに老後資金(1人あたり)をいくら貯める予定ですか?(預貯金、金融資産含む)
65歳までにいくら貯める予定かについて、最も回答が多かったのは、「目標とする金額はない」で34.1%でした。
「500~1000万円未満」から「2000~2500万円未満」までの範囲で500万円単位に見ていくと、いずれの金額帯も9~10%となっており、大きな差はありません。
つまり、500万円から2500万円未満の範囲に散らばっていることがわかります。
また、1000万円単位で見ると、1000~2000万円未満が19.6%と最も多く、次いで1000万円未満が17.4%、2000~3000万円未満が12.8%となっています。
● 現時点で「目標とする老後資金」の約何%まで貯蓄できていますか?(預貯金、金融資産含む)
現時点で「目標とする老後資金」の約何%まで貯蓄できているかという質問に対しては、「0%(まだ老後資金のための貯蓄を開始していない)」が最も割合が高く23.9%、次いで「わからない」が18.7%、「1~10%未満」が12.2%という結果になりました。
8割以上貯蓄できている人は、全体の5.5%に留まっています。
年齢別に見ると、「0%」と答えた割合は30代・40代が26%なのに対し、50代は19.4%と少し下がります。
また、目標とする老後資金が50%以上の割合は、50代がほかの年代よりも高く24.2%でした。
目標とする資金額に近づいている人の割合が高い一方、「わからない」と答えた割合も50代が最も高く、21.1%でした。
● 老後資金を確保するために実施していることを教えてください
老後資金を確保するために実施していることとしては、「預貯金(円建て)」が圧倒的に高く、67.5%でした。
次いで「株式投資」が27.6%、「投資信託」が27.5%と並び、ほぼ同率という結果でした。
年齢別に見ても、最も高いのは「預貯金(円建て)」で、その次に「株式投資」「投資信託」が同程度の割合となっています。
4番目に割合が高かったのは、「確定拠出年金(iDeCo含む)」が19.4%でした。
「暗号資産(仮想通貨)」や「不動産投資」は、比較的若い世代の方が割合は高いです。
なお、「現在実施していることはない」と答えた人の割合は13.0%です。
9割近くの人が、老後に備えて何らかの準備をしていることがわかります。
老後に備える貯金の目安は、老後の収入や支出によって変わります。
詳細を見ていきましょう。
そもそも「老後」とは、いつからのことを指すのでしょうか。
この記事では、老後を「公的年金や退職金以外に準備した資金を生活費として使いはじめる年齢」と定義します。
生命保険文化センターの調査によると、貯蓄や個人年金保険、有価証券などの資産を使い始める年齢は平均65.9歳となっています。
では、いつから老後の準備を始めた方が良いのでしょうか。
結論からいうと、早ければ早いほど良いといえるでしょう。
なぜなら、老後の準備を始めるタイミングが早いほど、準備期間にかかる負担が小さくなるためです。
例えば、65歳までに1000万円を貯めようとする場合、50歳から準備を始めると月当たり5.5万円必要になりますが、40歳から準備を始めると月当たり3.3万円で済みます。
必要な老後資金について見ていく前に、まずは年齢別の平均貯蓄額および平均年収を確認してみましょう。
年齢 | 平均貯蓄額 | 平均年収 |
---|---|---|
60~69歳 | 2384万円 | 368万円 |
70歳~ | 2259万円 | 282万円 |
出典:総務省統計局 家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)「Ⅲ 世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況」
支出が年収を下回っていれば貯蓄は増えますが、逆に支出が年収を上回る場合は、貯蓄を切り崩して生活しなければなりません。
上表によると、70歳以上になると、60代よりも平均貯蓄額が減っていることがわかります。
必要な老後資金の額としては、おおむね2000万~3000万円が目安です。
ただし、大きな病気にかかったり、自力での生活が困難になって老人ホームに入居するなどして、人によってはさらに大きな出費が発生するケースがあります。
そのため、「これだけの資金があれば絶対に安心」という金額については一概にいえないことを念頭に置いてください。
老後資金を貯める方法は、以下の通りです。
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
定期自動送金・積立定期預金とは、通常貯金から自動的・定期的に積み立てる貯蓄方法です。
内容は、下記の通りです。
預入期間 | 3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年、4年、5年から選択可能 |
---|---|
1回あたりの積立金額 | 1000円以上(1000円単位) |
契約期間(※積立期間+据置期間) | 6ヵ月以上、10年以内 |
積立回数 | 最高108回 |
利子 | 預入期間3年未満:単利預入期間3年以上:半年複利 |
定期自動送金・積立定期預金のメリットは、普通預金よりも金利が高いこと。
簡単に引き出せなくはなりますが、余剰資金がある場合は、普通預金として預けておくよりもお得です。
一方、投資信託や株式などと比べると資産が増えにくいというデメリットもあります。
個人年金保険は、厚生年金のように企業を介して加入するのではなく、個人で民間の保険会社と契約して加入するタイプの年金です。
個人年金保険には、「確定年金」「有期年金」「終身年金」の3種類があります。
これらの違いは、下記の通りです。
確定年金 | 有期年金 | 終身年金 | |
---|---|---|---|
年金受取期間 | 10・15年など固定 | 10・15年など固定 | 被保険者の生存中 |
被保険者が死亡した場合の年金受取人 | 遺族の受取可能 | 遺族の受取不可※一部保証期間がある年金保険もある | 遺族の受取不可※一部保証期間がある年金保険もある |
個人年金保険のメリットは、2つあります。
1つ目は、老後の資金を安定して貯められること。
定めた期間は預金を引き出すことができないため、お金があれば使ってしまうというタイプの人でも安心です。
2つ目は、一定の条件を満たすことで保険料控除が受けられること。
条件は、以下の通りです。
ただし、インフレによって価値が下がるというデメリットがある点にご注意ください。
個人年金保険の金利よりもインフレによる物価上昇率が上回った場合、年金の価値が目減りします。
投資信託とは、投資の専門家に資金を預けて運用してもらい、投資額に応じて利益を分配してもらう資産形成方法です。
投資信託のメリットは、2つあります。
1つ目は、少額の資金で始められることです。
まとまった資金が必要な株式投資や不動産投資などとは異なり、投資家が運用する資金の一部を預けるだけで済みます。
2つ目は、資金の運用をプロに任せられることです。
株式や債券などへの投資は、当然素人よりプロの方が上手く行えるため、ご自身で資産運用するよりも資産を増やせる可能性が高くなります。
投資信託は、中・長期的な視点での運用に向いています。
一般的に、運用期間が短期間の場合、元本割れのリスクが大きくなるといわれています。
そのため、数日・数ヵ月・数年といった短期間で大きな利益を出したいと考えている人には不向きな投資方法かもしれません。
iDeCoとは、公的年金にプラスして受けられる私的年金制度です。
iDeCoは対象者ごとに拠出限度額が決まっているので、以下の表で確認しましょう。
対象者 | 拠出限度額/月 |
---|---|
自営業者等 | 6万8000円 |
国民年金任意加入被保険者 | 6万8000円 |
専業主婦(夫)等 | 2万3000円 |
厚生年金保険の被保険者のうち、企業型年金や厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合(公務員、私学共済制度の加入者を除く) | 2万3000円 |
厚生年金保険の被保険者のうち、企業型DCのみを実施している場合 | 2万円 |
厚生年金保険の被保険者のうち、公務員、私学共済制度の加入者 | 1万2000円 |
厚生年金保険の被保険者のうち、厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合 | 1万2000円 |
iDeCoのメリットは、税制優遇を受けられることです。
拠出金額を所得から差し引けるだけでなく、運用益が非課税で再投資され、年金受給時も所得控除を受けられます。
iDeCoのデメリットは、元本保証がないことと、原則60歳までは運用資金の引き出しができないことです。
そのため、安全に資産を増やしたい人や、余剰資金があまりない人はほかの資産形成手段の方が向いています。
家族構成別に、老後資金を貯めるためのポイントを紹介します。
夫婦なのか、独身なのか。夫婦なら子どもはいるのか。
また、独身なら実家暮らしか、それとも一人暮らしなのかなどによっても変わってきます。
夫婦で老後資金を貯めるには、早めに対策を始めた方が賢明です。
子どもがいる場合は教育費など出費がかさむため、老後資金として回せるお金が少なくなります。
早めに老後資金を貯め始める方が良いでしょう。
子どもがいない場合は、教育費や養育費がかからないぶん、経済的に比較的余裕が出ます。
しかし、将来的に高齢者施設などを利用する想定であれば、ある程度の資産を用意しておく必要があります。
持ち家がある場合は、リバースモーゲージを活用しても良いでしょう。
自宅を担保に借り入れをし、家主が死亡した場合に住宅を売却して残債を返済する制度です。
資金に余裕がある場合は、投資をしてみるのも1つの方法です。
ただし、さまざまな金融商品があるため、よく吟味する必要があります。
いつからいくらずつ貯めれば良いのかはケースバイケースであり、自分で考えるのはなかなか難しいかもしれません。
そのため、ファイナンシャルプランナーに相談してアドバイスをもらうのもおすすめです。
実家暮らしで、家賃や光熱費を家族で分担することができる場合は、生活費が抑えられるため、貯蓄しやすいはずです。
収入の半分程度を貯蓄に回すことを目指しましょう。
一方、1人暮らしの場合は生活費をすべて自分で賄わなければなりません。
したがって、1人暮らしなら収入の2割程度を貯蓄に回すことを目標にしましょう。
将来のために、どのくらいのペースで貯蓄をすべきか、いつまでにどの程度の貯蓄が必要なのかといった計画を立てたい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談してみるとよいでしょう。
老後資金は、2000万~3000万円程度は確保したいところです。
これだけの大金を一度に貯めるのは難しいので、なるべく早いうちから貯蓄を始めることをおすすめします。
また、投資やiDeCoなどを活用し、多少のリスクを負いながら資産を増やすことに挑戦するのも1つの方法といえるでしょう。
キーワードで記事を検索