政府は、高齢化対策の中長期指針である「高齢社会対策大綱」を6年ぶりに改定します。
大綱には、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療保険の制度変更の検討を盛り込む見通しです。
この記事では、後期高齢者医療保険の見直し案について解説します。
【後期高齢者医療保険】3割負担になる人が増えるかも。いつから始まる?
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
現行の後期高齢者医療保険
75歳以上が加入する後期高齢者医療保険は、窓口負担の割合が所得に応じて異なります。
負担割合は1割、2割、3割のいずれかとなります。
所得の区分を以下の5つに分け、負担割合を決定します。
- 現役並み所得(課税所得145万円以上):3割負担
- 一定以上所得(課税所得28万円以上):2割負担
- 一般所得(課税所得28万円未満):1割負担
- 低所得Ⅱ(世帯全員が住民税非課税/年収約80万円超):1割負担
- 低所得Ⅰ(世帯全員が住民税非課税/年収約80万円以下):1割負担
後期高齢者医療保険の背景と見直し案
制度の見直しを検討する背景には、高齢化社会の進行によって医療費の支出が膨れ上がっている点があります。
公的医療保険制度は、国民から徴収する保険料や患者の窓口負担が財源となっています。
財源のうち、保険料は徐々に増加しています。
後期高齢者医療保険料は2年ごとに改定が行われており、2024年度の保険料は全国平均で月7,082円となっています。
2025年度は、月7,192円となる見込みです。
しかし、保険料を増やすだけでは、公的医療保険制度の維持には限界があります。
財務省が公表している2023年度の「国民負担率」は46.1%でした。
所得のおよそ5割が、税金や社会保険料の支払いに回っていることになります。
そのうち、社会保険料に回っている割合は18.6%で、税や社会保険料の負担を増やすには慎重な対応が必要です。
そのため、政府は、「現役並み所得」の範囲拡大を検討しています。
窓口負担が3割となる人の対象範囲を拡大することで、財源の確保をすることがねらいです。
いつから改定される?
現時点で、「現役並み所得」の基準がどこまで拡大されるかや、そもそも見直しをするのかどうかは決まっていません。
2028年度までに、後期高齢者医療保険の基準を見直すかどうかの判断をする見通しです。
後期高齢者の窓口負担が増えることになるのか、今後の動向に注目が集まります。
なお、2024年度と2025年度には、一定の収入を超える高齢者の保険料と、保険料の上限額が引き上げられています。
詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。