政府は、経済的に困窮している高齢者を支援する目的で、「住居確保給付金」の支給要件を拡大すると発表しました。
この記事では、住居確保給付金の対象者や給付額、手続き方法について解説します。
住居確保給付金で家賃が支給される。2025年4月から対象世帯が拡充へ
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
住居確保給付金とは
住居確保給付金は、世帯の収入額が一定の水準を下回っている世帯に対して、家賃相当額を給付する制度です。
期間は原則3ヵ月間です。
2回まで延長可能で、給付期間は最大9ヵ月となります。
出典:厚生労働省「住居確保給付金」
住居確保給付金の支給要件
給付金を受給するには、収入や資産にかかわる要件と、求職活動にかかわる要件をそれぞれ満たす必要があります。
収入と資産にかかわる要件は、以下の通りです。
- 生計維持者が離職・廃業後2年以内
- 給与が離職・廃業と同程度に減少している
- 世帯収入が、基準額(※1)と家賃の合計を超えていない
- 世帯の預貯金額が、自治体で定めた額(※2)を超えていない
(※1)住民税非課税の均等割りが非課税となる額の1/12
(※2)基準額の6ヵ月分。100万円以内
求職活動にかかわる要件は、以下の通りです。
- 月2回以上のハローワークへの求職申込、職業相談
- 週1回以上の企業等への応募
自営業者の場合、上記の要件の代わりに、事業再生のための活動ができる場合があります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響による休業によって、収入が低下した人も支給対象としています。
住居確保給付金の給付額
住居確保給付金は、世帯員や自治体によって給付額が異なります。
例えば、東京都杉並区の給付額は、以下の通りです。
出典:杉並区「住居確保給付金の支給事業」をもとに作成
住居確保給付金の申請方法
給付金を受給するには、最寄りの自立相談支援機関に申請が必要です。
申請には、以下の書類が必要になります。
- 本人確認書類
- 収入が確認できる書類
- 預貯金額が確認できる書類
- 離職・廃業や就労日数・就労機会の減少が確認できる書類
支給が決定した場合、自治体から賃貸人等に代理給付を行います。
出典:厚生労働省「住居確保給付金」
支給対象を拡大へ
住居確保給付金の支給件数は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020年度に13万4946件(前年の約34倍)まで増加しました。
以降、新規支給件数は減少傾向にあります。
- 2021年度:4万5671件
- 2022年度:2万4272件
- 2023年度:6,070件(2023年10月時点)
政府は、経済的に困窮している高齢者が増加していることを受け、「住居確保給付金」の支給対象を拡大する方針です。
住居確保給付金は「仕事を失った人」が対象となっていますが、以下の費用にも利用できるようにする見通しです。
- 高齢者が家賃の安い住居に転居する費用
詳細はまだ明らかになっていませんが、2025年4月1日に関連法案が施行される見通しです。
- 厚生労働省「住居確保給付金」
- 杉並区「住居確保給付金の支給事業」