ニッセイ基礎研究所が「2024年度の年金額」について調査した結果、物価や賃金の上昇分に追いつかず、実質目減りする見通しになると発表しました。
2024年度の年金額が実質目減りした場合、2023年度から2年連続となります。
なぜ実質の目減りとなるのでしょうか。
この記事では、目減りの要因となっているマクロ経済スライドと、年金支給額について解説します。
年金支給額、2024年度は目減りか。厚生年金が年約1万1000円減るかもしれない
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
マクロ経済スライドとは?
年金支給額は、物価や賃金の変動率に応じて変動します。
通常、物価や賃金が上がると、年金支給額も増加します。
しかし、物価や賃金の上昇率と同じ水準で支給額が増え続けると、将来世代の保険料負担が重くなるリスクがあります。
そこで、「マクロ経済スライド」という仕組みが採用されています。
出典:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~」(以下同)
「マクロ経済スライド」によって、現役世代の人口や平均余命の伸びを加味し、年金の給付水準を自動的に調整しています。
物価や賃金が上昇したとしても、年金額の伸び率を調整する(物価や賃金の上昇ほど増やさない)ことによって、財源の範囲内で給付を行っています。
ニッセイ基礎研究所によると、2024年度は、物価や賃金の伸びに合わせて年金支給額が増額するものの、マクロ経済スライドの発動によって、増額幅が抑えられる見通しです。
その結果、実質0.4%分、目減りすることが予想されます。
では、実際に支給額がいくらになるのか確認してみましょう。
年金支給額はどう変わる?
2022年度における基礎年金の満額と、夫婦2人分の標準的な厚生年金の年金額は以下の通りです。
- 基礎年金:月6万6250円
- 厚生年金:月22万4482円
2023年度の賃金は3.0%上昇したため、マクロ経済スライドの調整が入らない場合、年金支給額は以下の通りになります。
- 基礎年金:6万8238円
- 厚生年金:23万1216円
マクロ経済スライドによって、マイナス0.4%が調整された結果、年金支給額は以下の金額に目減りします。
- 基礎年金:6万7973円(調整前比▲266円)
- 厚生年金:23万318円(調整前比▲898円)
基礎年金は年間約3,000円、厚生年金は年間約1万1000円が目減りした計算となります。
マクロ経済スライドの調整は、物価や賃金の上昇を受けて、2027年度まで続く見通しです。
つまり、公的年金の支給額は引き続き2027年度まで抑えられることになります。
2024年度の年金額は、2024年1月中旬に公表される予定です。
年金の給付水準がどのように調整されるのか、注目が集まります。
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