教職員は奨学金の返済を免除へ。奨学金の返済減免制度について解説

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

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文部科学省は、教職員として就職した人に対して貸与型奨学金の返済の免除・軽減を実施する方針を発表しました。

教職員の奨学金の返済免除制度は、以前にはありましたが1998年に廃止されています。

教職員の奨学金の減免を実施する背景には、どのような理由や課題があるのでしょうか。

この記事では、奨学金の返済減免制度について解説します。

教職員の奨学金の返済を減免する目的と課題

文部科学省は、奨学金の減免を制度化し、教員の人材確保をすすめたい考えです。

近年、教職員の人材不足は問題視されており、2021年度に実施した公立校教員の採用倍率は3.7倍で、過去最低の水準になりました。

奨学金の返済を減免する対象者の条件は、教職大学院を修了するなど高い専門性がある人を中心にこれから検討する見通しです。

なお、1998年まで適用されていた教職員の奨学金返済が免除される「返還特別免除制度」の条件は、以下の通りです。

  • 大学院の第一種奨学生に採用となり、奨学金の貸与を受けた
  • 大学・短期大学・高等専門学校の1年次に入学し第一種奨学金の貸与を受けた

奨学金の返済が免除される制度が設けられると、教職員を志望する人の割合が向上する可能性はあるでしょう。

一方、制度化にあたっては課題もあります。

奨学金を利用せず教職員になった人とのバランスや、根底にある働き方の問題への対処も必要になるでしょう。

現行の奨学金の減免要件

ここからは、教職員でなくても、奨学金が減免できる要件について解説します。

奨学金の軽減要件

奨学金の返済額が軽減できる制度は「減額返還制度」と「返還期限猶予」の2種類があります。

  • 減額返還制度:毎月の返済額を少なくできる
  • 返還期限猶予:返済を一時的に先延ばしできる

それぞれの制度を利用する場合、一定の収入要件を満たす必要があります。

減額返還制度

  • 給与所得者:年間収入325万円以下
  • 給与所得者以外:年間所得225万円以下

返還期限猶予

  • 給与所得者:年間収入300万円以下
  • 給与所得者以外:年間所得200万円以下

ただし、いずれの制度も返済総額が減るわけではありません。

奨学金の免除要件

奨学金の返済が免除される要件は、次の通りです。

  • 死亡
  • 精神もしくは身体の障害

「精神もしくは身体の障害」による免除の適用を受けるには、「症状が固定している」「労働能力が喪失している」状態である必要があります。

免除の申請には、主治医の診断書と相談が必要です。

奨学金については、教職員だけでなく、子育て世帯に対する負担軽減策も検討されています。

子育て世帯に対する奨学金の負担軽減策については、こちらの記事「奨学金制度も利用条件が拡充」を参考にしてください。

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