政府は2023年6月13日に「異次元の少子化対策」の具体策として、「こども未来戦略方針」を発表しました。
今後3年で集中的に取り組む項目には、「出産費用の保険適用」も盛り込まれています。
この記事では、出産費用の保険適用と、出産に関する経済的負担軽減策について解説します。
2026年度から出産費用が保険適用へ。地域によっては負担増になる場合も?
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
出産費用に関する支援策
出産費用にかかわる支援策は、次の案が検討されています。
- 出産費用の見える化
- 出産費用の保険適用
- 保険適用の自己負担分の助成
まず政府が実施する対策は「出産費用の見える化」です。
これは、2023年4月に実施された出産育児一時金の引き上げ(42万円から50万円)に伴い、病院が出産費用の値上げをすることを防ぐ狙いがあります。
出産費用は、地域や医療機関で異なりますが、厚生労働省の調査によると、全国の出産費用の平均値は45万4994円でした。
出典:厚生労働省「出産育児一時金について」(以下同)
政府は、出産育児一時金が出産費用の平均値よりも少ないという実態を受けて、出産育児一時金の引き上げを実施しました。
しかし、医療機関が出産費用の値上げをしてしまえば、本末転倒となってしまいます。
そうした事態を防ぐために、2024年度から医療機関ごとに出産費用を公表する方針です。
次に、「出産費用の保険適用」について検討します。
導入時期に関しては具体的な時期は決まっていませんが、2026年度の実施を目指して検討を進める予定です。
しかし、出産費用が保険適用となった場合、3割の自己負担が発生するため、出産育児一時金が出産費用を上回っている地域では、かえって自己負担が増えてしまう可能性があります。
こうした課題を解消するために、自己負担が発生しない制度についても検討が進められています。
現在実施されている出産費用の経済的負担軽減策
2023年6月現在、実施されている出産費用の負担を軽減する策は、以下の通りです。
- 出産育児一時金
- 出産・子育て応援交付金
- 妊婦健診助成
出産育児一時金
子どもを出産すると受け取れる一時金が「出産育児一時金」です。
出産育児一時金は、2023年4月より42万円から50万円に引き上げられました。
出産・子育て応援交付金
出産・子育て応援交付金は、妊娠時と出産時に、それぞれ5万円ずつ合計10万円相当の給付が受けられる制度です。
出産や育児用品の購入費の補助や、育児サービスの利用ができます。
妊婦健診助成
妊婦健診助成は、各自治体で助成を行う支援策です。
居住地の役所に妊娠届を提出して「妊婦健康診査受診票」を受け取ります。
受診票を提出すれば、検査項目を公費負担してくれるので、妊娠がわかったら活用しましょう。
なお、「こども未来戦略方針」は多岐にわたります。
そのほかの支援策についてはこちらの記事「【こども未来戦略方針】3年間で実施する「加速化プラン」まとめ」を参照してください。
- 厚生労働省「出産育児一時金について」