結婚・出産で奨学金返済が免除されるかもしれない。現行制度では「死亡時」「身体障害時」のみ

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

自民党は、子育て世代の経済的負担を軽減する目的で、出産や多子世帯に対して奨学金の返済を減免する提言案まとめました。

衛藤少子化対策調査会長は、「多子化に向けて一番困るのは教育費が足りないこと」と指摘し、結婚や出産による奨学金の返済減免を主張しています。

この記事では、以下の項目について解説します。

  • 奨学金の返済方法
  • 奨学金が返済ができない場合の対処法
  • 奨学金の返済が免除される条件

奨学金の返済方法

奨学金の返済方法について確認してみましょう。

奨学金の返済は「定額返還方式」と「所得連動返還方式」の2つがあります。

  • 定額返還方式:月々の返還額が一定
  • 所得連動型返還方式:所得に応じて月々の返還額が変動

定額返還方式は、「月賦返還」と「月賦・半年賦併用返還」に分かれます。

  • 月賦返還:年12回に分けて奨学金を返済
  • 月賦・半年賦併用返還:年12回の返済に加えて半年に1回まとまった金額を返済

毎月の返済額が定額のため、返済の計画がたてやすくなります。

一方、所得連動型返還方式は、毎年の所得によって返済額が見直される方式です。

例えば、年収300万円の場合、月の返済額は約8,600円で、年収450万円の場合、約1万5400円となります。

所得に応じて返済額が決定するため、所得が低くても無理なく返済することができます。

奨学金が返済できない場合の対処法

奨学金が返済できない場合に利用できる制度は、月々の返済額を少なくできる「減額返還制度」と、返済を一時的に先延ばしする「返済期限猶予」の2つです。

いずれも、災害や傷病などにより経済活動が困難で、奨学金が返済できない場合に、利用することができます。

「減額返還制度」は、「定額返還方式」を返済方法に選んでいる人が利用できます。

「減額返還制度」を申請する場合の、収入や所得の目安は以下の通りです。

  • 給与所得者:年収325万円以下
  • 給与所得以外の所得がある人:年間所得225万円以下

1回の申請につき適用期間は12ヵ月で、最長15年まで延長ができます。

一方「返済期限猶予」は、「定額返還方式」と「所得連動返還方式」どちらを選んでいても利用できます。

「返済期限猶予」を申請する場合の、収入や所得の目安は以下の通りです。

  • 給与所得者:年収300万円以下
  • 給与所得以外の所得がある人:年間所得200万円以下

返済を待ってもらえる通算の期間は10年です。

奨学金の返済が免除される条件

奨学金が免除される条件は、以下の2つです。

  • 死亡
  • 精神もしくは身体の障害

精神もしくは身体の障害による免除を願い出るには「症状が固定している(回復の見込みがない)」「労働能力が喪失している」状態である必要があります。

免除の申請には、「返還することができなくなったことを証明する書類」と「主治医の診断書」が必要です。

「出産で奨学金減免」には批判も

3月13日、自民党の衛藤少子化対策調査会長は、結婚や出産を条件に奨学金の返済を免除する私案を発表しました。

「地方に帰って結婚すれば奨学金の3分の1、1人目を出産したら3分の1、2人目の出産に残りの3分の1を免除する」という内容です。

少子化対策の一環として、若い人たちが結婚や出産に踏み切りやすくするために提案されました。

しかし、奨学金を免除する条件を「結婚」や「出産」にしている点に、批判が相次いでいます。

政府は、今回の案を、3月末にまとめる「異次元の少子化対策」のたたき台として反映させる方向です。

今後、奨学金の返済条件に出産が加わるのか、引き続き注目しましょう。

出典
  • 独立行政法人 日本学生支援機構「死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」
  • 独立行政法人 日本学生支援機構「定額返還方式(月々の返還額が一定の返還方式)」
  • 独立行政法人 日本学生支援機構「返還月額の算定<令和4年10月25日新規掲載>」

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