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奨学金は本当に借りない方がいい?借金との違いと注意点

執筆者:マネーFix 編集部

【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩

一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。

奨学金は大学生の約半数が利用しています。学生にとって心強い存在ですが、返済の大変さから「借りない方がよい」という意見もあるようです。

この記事では、奨学金を借りない方がよいといわれる理由を解説します。奨学金を借りた方がよいケースと借りない方がよいケース、奨学金の返済シミュレーションも紹介します。

奨学金制度ってどんな制度?

奨学金制度とは、経済的な理由で修学が難しい学生を金銭的にサポートする制度です。日本では1943年に大日本育英会が設立されて奨学金制度がスタートし、その後、日本学生支援機構(JASSO)となりました。

奨学金制度を運営している機関・団体は、JASSO以外にも数多く存在します。 しかし、JASSOは、奨学金制度の提供元として特に認知度が高く、多くの学生に利用されています。この記事ではJASSOが運営する奨学金について紹介します。

JASSOの奨学金には以下の3種類があります。

  • 給付型奨学金(返済不要)
  • 貸与型第一種奨学金(要返済・利息なし)
  • 貸与型第二種奨学金(要返済・利息あり)

給付型奨学金(返済不要)

給付型奨学金は返済不要の奨学金です。その特徴は次の通りです。

  • 世帯収入が一定の基準を満たす低所得世帯が対象
  • 世帯収入要件に該当すれば、学ぶ意欲を重視
  • 入学金・授業料の免除・減額を受けられる

従来は成績が大きな審査基準となっていましたが、2020年に開始した新制度では、世帯収入など、成績以外のポイントでも審査されるようになりました。

貸与型第一種奨学金(要返済・利息なし)

貸与型第一種奨学金は、無利息で借りられる奨学金です。無利息のため、後述する貸与型第二種奨学金よりも審査基準は厳しめとなっています。

貸与型第一種奨学金の審査基準は、次の通りです。

  • 経済状況:657万円(世帯人数3人)~922万円(世帯人数5人)
    ※給与所得以外 286万円(世帯人数3人)~514万円(世帯人数5人)
  • 学力:5段階評価の評定平均値が3.5以上など

貸与型第二種奨学金(要返済・利息あり)

貸与型第二種奨学金は、利息が発生します。無利息の貸与型第一種奨学金と比べると、審査は甘いです。

貸与型第二種奨学金の審査基準は、次の通りです。

  • 経済状況:1009万円(世帯人数3人)~1300万円(世帯人数5人)
    ※給与所得以外 601万円(世帯人数3人)~892万円(世帯人数5人)
  • 学力:平均水準以上の学力があることなど

奨学金は借りない方がいいといわれる理由

「奨学金は借りない方がよい」という意見の背景には、以下のような理由があると考えられます。

  • 貸与型奨学金は借金である
  • 返済の義務は保護者ではなく学生本人にある
  • 使い道は学生自身が管理する必要がある
  • 契約段階では返済計画が立てにくい

貸与型奨学金は返済義務がある借金と同じ

貸与型奨学金に返済義務があることは前述の通りです。しかし、実際には返済義務があることを知らずに借りている人も多いようです。

「令和元年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」(日本学生支援機構)では、延滞者は無延滞者と比較して「返済義務の認知度が低い」という結果が示されています。具体的には、延滞督促を受けてから初めて返済義務を知った人が8.2%に上ります。

借金であることを理解し、きちんと返済計画を立てれば奨学金の有用性は高いです。一方、その内容をきちんと理解せずに借りて後悔する可能性があるなら、奨学金は借りない方が賢明です。

返済の義務は保護者ではなく子ども本人にある

教育ローンの返済義務が保護者にあるのに対して、奨学金は学生本人にあります。保護者に相談してサポートしてもらうこともできるかもしれませんが、基本的には卒業後に働きながら自分で返済する形になります。

また、奨学金の返済期間は最長20年間続く可能性があります。

このような学生本人にかかる経済的・精神的な負担も、「奨学金を借りない方がよい」といわれる理由の1つと考えられます。

使い道は学生自身が管理する必要がある

奨学金の使い道に明確な規定はありません。奨学金は学生本人の口座に振り込まれるため、一部の学生は交際費や娯楽費などに使ってしまい、学業に支障をきたすケースもあります。

このような危険性から、奨学金を借りない方がよいと考える人もいます。

契約段階では返済計画が立てにくい

奨学金の契約時は、契約者である学生の卒業後の進路や就職先は決まっていません。働いた際の収入がわからないので、月々の適切な返済額を割り出すことは難しいのが現実です。

通常のローンは、働き口や安定収入のない状態で審査に通ることはないため、収入が未確定の状況で借りられる奨学金は特殊な借金といえます。

このような特殊性もまた、奨学金を借りない方がよいといわれる理由の1つです。

奨学金を借りた方がいいケース

奨学金はその性質をよく理解して利用すれば、次のようなメリットがあります。

  • 教育ローンよりも金利が低い
  • 在学期間中は返済不要

これらのメリットを活かせるなら、奨学金を積極的に検討してよいでしょう。ここからは、奨学金を借りた方がよい具体的なケースを紹介します。

世帯収入が低い

進学の意欲があるにもかかわらず、経済的な理由で困難な場合は、奨学金を借りるとよいでしょう。

特に世帯収入が低い場合、給付型奨学金や貸与型第一種奨学金の要件に該当する可能性が高く、返済不要あるいは無利息で奨学金を利用できます。

有利息の奨学金であっても、教育ローンよりも金利が低いため、進学費用を借りたい場合に利用しやすいでしょう。

家族に頼ることはできないが進学意欲が高い

奨学金は在学期間中は返済不要なので、卒業後に働き始めてから返すことできます。進学意欲はあるものの親の支援が得られない学生にとってはありがたい制度です。

また、学びたい内容や入学したい大学によっては、親が経済的に支援できる範囲を超えてしまうケースがあります。 具体的には、「医学部に進学したい」「私立の○○大学に行きたい」「海外留学したい」などのケースです。

このようなケースでも、奨学金を借りることで経済面をカバーし、希望を実現できる可能性があります。

奨学金を借りない方がいいケース

貸与型奨学金は借金と同じなので、利息の有無にかかわらず、気軽に借りることは避けてください。

ここからは、奨学金を借りない方がよい具体的なケースを紹介します。

世帯収入にある程度余裕がある

世帯収入にある程度余裕があり、学力が5段階評価の評定平均値で3.5未満の場合、利息のある貸与型第二種奨学金しか利用できない可能性が高いです。

一般的なローンと比較して利息負担は少ないですが、経済的に余裕があるなら奨学金を借りる必要はないでしょう。

学費以外の用途でも使いたい

奨学金は使い道が明確に規定されておらず、細かくチェックされることもありません。そのため、娯楽や交際費に利用することもできますが、それは借金をして遊んでいるのと同じです。

進級や卒業に支障をきたす可能性があるため、奨学金は借りない方が得策です。

奨学金の返済シミュレーション

最後に、奨学金をいくら借りるべきかと、返済額のシミュレーションを紹介します。しっかりプランを立て、卒業後もスムーズに返済できるようにしてください。

大学生活にかかる費用

大学生活にかかる費用は、下表の通りです。

国公立大学 私立大学
年間 月間 年間 月間
実家暮らし 国立:98万7100円
公立:99万3000円
国立:8万2258円
公立:8万2750円
170万4800円 14万2067円
1人暮らし 国立:172万1800円
公立:168万9000円
国立:14万3483円
公立:14万750円
241万4300円 20万1192円
出典:令和2年学生生活調査結果|日本学生支援機構

私立大学は国公立大学と比較して学費が高く、1.5倍前後の費用がかかることがわかります。

奨学金は最大いくら借りられる?

貸与型第一種奨学金、貸与型第二種奨学金の月々の借入上限額は、それぞれ以下の通りです。

貸与型第一種奨学金の月額上限
国公立大学 私立大学
実家暮らし 4万5000円 5万4000円
ひとり暮らし 5万1000円 6万4000円
貸与型第二種奨学金の月額上限

2万~12万円(1万円ごと)

※私立の医学部・歯学部:2万~16万円
※私立の薬学部・獣医部:2万~14万円

貸与型第一種奨学金と比較して、貸与型第二種奨学金の方が多くの金額を借りることができますが、利息が発生する点に注意してください。

奨学金はいくら借りるのが妥当?

実家暮らし、ひとり暮らしのそれぞれのケースについて、奨学金をいくら借りるべきかをシミュレーションしました。アルバイトをして月に8万円の収入を得る想定で、国公立大学、私立大学に通った場合に必要となる奨学金の目安は下表の通りです。

  国公立大学 私立大学
費用月額 バイト代 奨学金月額 費用月額 バイト代 奨学金月額
実家暮らし 国立:約8万2000円
公立:約8万2000円
8万円 国立:2万円
公立:2万円
約14万2000円 8万円 6万円
ひとり暮らし 国立:約14万3000円
公立:約14万円
8万円 国立:6万円
公立:6万円
約20万円 8万円 12万円

貸与型奨学金の返済シミュレーション

貸与型奨学金を利用した場合の返済額をシミュレーションしてみましょう。

貸与型第一種奨学金の返済シミュレーション
奨学金月額 奨学金総額 返済期間(回数) 月々の返済額 返済総額
2万円 72万円 108回 6,666円 72万円
3万円 108万円 144回 7,500円 108万円
4万円 144万円 156回 9,230円 144万円
5万円 180万円 156回 1万1538円 180万円
6万4000円 230万4000円 168回 1万3714 円 230万4000円
貸与型第二種奨学金の返済シミュレーション
奨学金月額 奨学金総額 返済期間(回数) 月々の返済額 返済総額
2万円 72万円 108回 6,801円 73万4518円
4万円 144万円 156回 9,492円 148万746円
6万円 216万円 168回 1万3247円 222万5558円
8万円 288万円 192回 1万5516円 297万9181円
10万円 360万円 240回 1万5639円 375万3449円
12万円 432万円 240回 1万8767円 450万4187円
出典:奨学金貸与・返還シミュレーション|日本学生支援機構

大学卒業後の初任給の平均

大学卒業後は、自分の収入から返済していくことになります。大学卒業後の初任給の平均は、以下の通りです。

平成30年 20万5000円
令和元年 20万8000円
令和2年 21万円
令和3年 21万円
令和4年 21万円
出典:学卒者の初任賃金│東京労働局

卒業後、ひとり暮らしをする人は、家賃や水道光熱費なども想定に入れておく必要があります。そこに奨学金の返済が加わると、経済的に余裕がなくなる可能性もあります。その場合は、実家に住んだり、ルームシェアしたりする方法も検討するとよいでしょう。

まとめ

「奨学金を借りない方がいい」といわれる理由を解説しました。奨学金は、学ぶ意欲がある学生にとっては有益な制度です。ただし、貸与型奨学金については返済義務があることを理解し、将来の返済負担や月々の返済額がどれくらいになるか、あらかじめ把握してから利用することをおすすめします。

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