政府は6月13日に「異次元の少子化対策」の具体策を発表しました。
今後の3年間で集中的に取り組む項目に、「男性の育休取得率」を向上させるための方策も盛り込まれています。
出生時育児休業(以下産後パパ育休)中の育児休業給付金を「手取り10割相当」に引き上げする見通しです。
この記事では、育児休業給付金の現行制度と、どう変わるかについて解説します。
産後パパ育休の育児休業給付金が手取り10割相当に。2025年度からは夫婦で育休が当たり前に?
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
産後パパ育休と育児休業給付金
産後パパ育休は、2022年10月1日に、男性の子育て参画を促進する目的で創設されました。
産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、1歳までの育児休業とは別に育児休業を取得できる制度です。
出典:厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」
取得例にあるように、産後パパ育休は2回にわけて取得することができます。
また、産後パパ育休を取得して以下の要件を満たしていると、出生時育児休業給付金が支払われます。
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)完全月が12ヵ月以上ある
- 休業期間中の就業日数が、最大10日(10を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること。
- (期間を定めて雇用される人の場合)子の出生日から8週間を経過する日の翌日から6ヵ月を経過する日までに、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと。
出典:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
出生時育児休業給付金の計算方法や、支給上限額は、以下の通りです。
- 計算方法:休業開始時賃金日額×休業期間の日数×給付率(67%)
- 支給上限額:28万4964円
- 社会保険料:免除
休業開始賃金日額とは、直近6ヵ月の賃金を180で割った金額です。
例えば、直近6ヵ月の賃金が270万円だった場合、休業開始賃金日額は1万5000円です。
上記の条件で、産後パパ育休を14日利用した場合の出生時育児休業給付金は、以下の通りです。
1万5000円×14日×67%=14万700円
給付率は67%ですが、育休中は社会保険料が免除になるため、実質手取りの8割相当の金額が給付されています。
育児休業給付金が10割相当額に
新たな制度では、出生時育児休業給付金の「給付率」が67%から80%程度に引き上げられます。
それにより、社会保険料の免除分を含めると、給付金の支給額は「手取りで10割相当」になります。
先述した事例(直近6ヵ月の賃金が270万円)の場合、給付金がいくらになるのか計算してみましょう。
14日休んだ場合
- 現行制度:1万5000円×14日×67%=14万700円
- 新制度:1万5000円×14日×80%=16万8000円
28日休んだ場合
- 現行制度:1万5000円×28日×67%=28万1400円
- 新制度:1万5000円×28日×80%=33万6000円
現行制度では、支給上限額は28万4964円ですが、新制度での支給上限額は未定です。
また、女性の育児休業給付についても、28日間を限度に、給付率を引き上げる方針です。
さらに、時短勤務でも給付を受けられるよう制度を見直す予定です。
詳しくはこちらの記事「育児時短就業給付の詳細」を参照してください。
なお、出生時育児休業給付金の給付率の引き上げは、2025年度からの実施を目指して検討が進められています。
2023年4月から男性の育休取得状況の公表が義務化
男性の育休取得に注目が集まっていますが、実態はどのような状況なのでしょうか。
2023年4月から、従業員1,000名以上の企業に対して、男性の育休取得状況の公表が義務化されました。
セレクションアンドバリエーション株式会社は、男性の育休取得に関する調査研究データをもとに「令和元年時点における男性労働者の育児休業の実態」を公表しました。
出典:セレクションアンドバリエーション株式会社「令和元年時点における男性労働者の育児休業の実態」
その結果、妊娠中と出産後のどちらの場合でも、従業員の人数が多くなるにつれて、休暇取得率が高くなる傾向が見られました。
今後は、企業規模にかかわらず、男性の育休取得ができる体制を整備ができるかどうかも、ポイントになります。
まとめ
産後パパ育休を取得したうえで要件を満たすと、出生時育児休業給付金が支払われます。出生時育児休業給付金の給付率が67%から80%に引き上げられることになりました。これにより、支給額が「手取り10割相当」に増えます。
出生時育児休業給付金の給付率の引き上げは、2025年度からを目指して検討が進められています。