サラリーマンのための節税対策|知っておきたい税控除のポイントを解説

執筆者:佐藤 憲亮

【記事執筆】税理士佐藤 憲亮

「お客様との対話を大事に」をモットーに、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。税務記事や税務論文の執筆もおこなっている、書くことが好きな税理士。税理士事務所で12年の実務経験を積み、2020年に税理士登録。

2023年に入ってから退職所得や金融資産の課税強化、扶養控除の見直しなどが検討されており、今後サラリーマン世帯の税負担が重くなることが予想されます。

税負担が重くなる時代を上手く乗り切るためには、サラリーマンであっても節税の方法を知っておき、タイミングをみて実行してすることが大事です。正しい知識を備え、できることから実行するようにしましょう。

この記事では、サラリーマンのための節税対策について解説します。税負担を軽減したいと思っている人は参考にしてください。

所得控除のポイント

所得税は個人の状況に応じた課税を原則としています。個人が負担している社会保険料や医療費などの一定金額を控除することができます。ここでは、所得控除ができる項目について解説します。

社会保険料控除

社会保険料控除は、自身や同一生計の親族が負担すべき社会保険料を支払った場合に受けられます。社会保険料には下記のものが含まれます。

  • 国民健康保険料
  • 健康保険料
  • 国民年金保険料
  • 厚生年金保険料
  • 後期高齢者医療保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 国民年金基金掛金
  • 厚生年金基金掛金
  • 農業者年金保険料

など

同一生計の親族とは、同居していて生活費の負担をしている親族や、別居であっても仕送り等をして生活費の負担をしている親族のことです。

人的控除

サラリーマンの節税対策においては、まずは人的控除を漏れなく適用できているかを見直すことが重要です。人的控除は要件を満たしていれば適用を受けることができるので、毎年状況にあった申告となっているかを確認しましょう。

人的控除の対象者や控除金額は下表の通りです。

名称 対象者 控除金額
寡婦・ひとり親控除 配偶者と死別、または離婚して扶養親族がいる 27万円(一定の要件を満たす場合は35万円)
勤労学生控除 学校に通いながら働く学生(合計所得金額が75万円以下) 27万円
障害者控除 自身が障害者、扶養親族が障害者 特別障害:40万円(身体障害1・2級、精神障害1級等)
普通障害:27万円(特別障害者以外)
同居特別障害者:75万円(特別障害者と同居)
配偶者(特別)控除 配偶者の所得が133万円未満 3万~38万円(配偶者の所得により変動)
扶養控除 同一生計の親族がいる 一般扶養:38万円(16歳~19歳未満、23歳~70歳未満)
特定扶養:63万円(19歳~23歳未満)
老人扶養:48万円(70歳以上、非同居)
同居老親等:58万円(70歳以上、同居)
基礎控除 すべての人に適用 合計所得金額が2400万円以下:48万円
合計所得金額2400万円超2450万円以下:32万円
合計所得金額2450万円超2500万円以下:16万円

医療費控除

治療を行うために医療費を支払った場合(同一生計の親族分を含む)、医療費の年間支払額が10万円を超えた金額(総所得金額が200万円未満の場合は、総所得金額の5%を超えた金額)が控除の対象となります。

社会保険適用外の医療費であったとしても、治療のために支払ったものであれば医療費控除の対象となります。ただし、美容のための費用(歯科でのホワイトニングなど)や予防のための費用(予防接種費用など)などは対象外となります。

また、特定一般用医薬品等購入費の合計額のうち、1万2000円を超えた金額(8万8000円を限度)が控除となる、セルフメディケーション税制の適用を受けることができます。ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用ができません。

住宅ローン控除

金融機関等でローンを組んで、自身が居住するための一定の住宅を取得した場合は、住宅ローン控除の適用を受けることができます。住宅ローン控除は定期的に税制改正が行われており、直近では令和4年に大きな改正がありました。住宅を取得した年によって要件や控除額等が異なります。ここでは令和4年改正前と後での比較表を記載します。

住宅ローン控除税制の改正前後比較
区分 改正前 改正後
住宅取得年 令和3年 令和4年、令和5年 令和6年、令和7年
住宅ローン控除可能期間 10年 13年 13年間
ローン控除率 1.00% 0.70% 0.70%
借入金適用限度額 認定住宅5000万円その他4000万円 【新築】
一般住宅(下記以外):3000万円
認定住宅:5000万円
ZEH水準省エネ住宅:4500万円
省エネ基準適合住宅:4000万円
【新築】
一般住宅(下記以外):2000万円
認定住宅:4500万円
ZEH水準省エネ住宅:3500万円
省エネ基準適合住宅:3000万円
【中古 1982年以降建築】
一般住宅(下記以外):2000万円
認定住宅:3000万円
【中古 1982年以降建築】
一般住宅(下記以外):2000万円
認定住宅:3000万円
住宅の床面積要件 50㎡以上 40㎡以上 40㎡以上
その年の所得制限額 3000万円以下 2000万円以下 2000万円以下
※本表は原則的な要件のみを記載しています。

小規模企業共済掛金控除

小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員が、廃業時や退職時の生活費のための資金を積み立てておくことができる共済制度です。掛金は月額1,000~7万円の範囲で自由に設定することができ、金額はいつでも変更可能です。掛金として支払いをした金額は、全額が控除の対象となります。

小規模企業共済は、原則的には「廃業した場合」「加入者が死亡した場合」「加入者が65歳になった場合(180ヵ月以上掛金を払い込んだ場合)」に利率に応じた付加金が加算され、解約返戻金を受け取ることができます。加入月数が12ヵ月未満の場合は、返戻金はゼロになる可能性があります。

解約返戻金は受け取った年の所得になりますが、その所得の種類は解約理由により変わります。廃業、死亡、65歳以上になったことにより解約する場合は「退職所得」、それ以外の人が任意解約した場合は「一時所得」となります。

なお、退職所得と一時所得の計算方法は以下の通りです。

【退職所得の計算方法】

(解約返戻金-退職所得控除)×1/2

【一時所得の計算方法】

((解約返戻金-必要経費)-50万円)×1/2

小規模企業共済は、原則的にサラリーマンは加入することはできません。しかし、サラリーマンとして働いている本業とは別に、副業で役員として役員報酬を得ている場合は加入できる可能性があります

その他の所得控除

そのほかにも、下記のような所得控除があります。

名称 内容 控除金額
生命保険料控除 生命保険、介護医療保険、個人年金保険 最高12万円(各4万円まで)
地震保険料控除 地震保険料 最高5万円
雑損控除 災害や盗難、横領によって損害を受けた場合 下記のいずれか多い金額
・損害額-総所得金額等×10%
・損失額のうち災-害関連支出金の金額-5万円
寄付金控除 一定の寄付をした場合 下記のいずれか少ない金額
・寄付金合計額-2,000円
・所得金額×40%

自身の状況に応じて、適用できる控除があれば申告をするようにしましょう。

寄付金や投資による節税対策

ふるさと納税、NISA、iDeCoなどの制度を活用することでも、税負担を軽減することができます。

ふるさと納税

ふるさと納税は、市町村に一定の要件を満たした寄付をした場合に、所得税と住民税の控除が受けられる制度です。支払った金額の合計額から2,000円を差し引いた金額が控除されます。

ただし、寄付金控除として所得税と住民税から控除することができる金額には上限があるため、上限を超えないように、ふるさと納税をする必要があります(上限を超えた金額は控除ができません)。

ふるさと納税の上限額は、年収によって変わります。ふるさと納税のポータルサイトで、細かくシミュレーションできるので活用しましょう。

NISA(少額投資非課税制度)

NISAとは、少額投資に係る株式譲渡所得や、配当所得を一定金額まで非課税とする制度です。現行制度では、「つみたてNISA」と「一般NISA」のうち、どちらかを選択して利用することができます。

2024年1月からは限度額が引き上げられ、保有期間が無制限になり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用も可能となります。現行NISAと新しいNISAの変更は下表の通りです。

出典:金融庁「新しいNISAのポイント」をもとに作成

iDeco(個人型確定拠出年金)

iDecoとは、私的年金として将来のために運用しながら老後資金等を積み立てておく制度です。iDecoの掛金は、社会保険料控除として所得控除の適用を受けることができます。掛金の金額は自身の状況に合わせて選択することができます。

ただし、老後資金のために運用して積み立てることが目的となっているため、原則的には60歳になるまでは引き出すことができません。

副業における節税対策

サラリーマンが副業により収入を得た場合は、原則的には「事業所得」ではなく「雑所得」になります。給与所得および退職所得以外の所得合計が年間20万円を超えたときに確定申告が必要となります。(※所得合計が年間20万円を超えない場合でも、医療費控除を受ける場合などは、確定申告が必要になります。)

事業所得か雑所得かの判断は、その副業が事業的な規模で行われているのか、反復・継続・独立して行われているのか、その売上で生計を維持しているのか等の観点から総合的に判断することとなります。

また、国税庁が発出した通達においては、年間300万円以上の収入があるのかも1つの基準とされています。総合的にみると、一般的に副業といわれるものの多くは「雑所得」に区分されることがほとんどです。

副業をするためにかかった経費は必要経費として認められるので、領収書等は保管しておき経費計上をするようにしましょう。

なお、副業が事業所得になる規模の場合は、青色申告特別控除の適用を受けることができます。税務署に開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出し、複式簿記の方式により帳簿をつけて期限までに申告書を提出することが必要です。

副業が事業所得になると判断される場合のメリットは以下の通りです。

  • 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる。
  • 税務署に提出した「青色専従者給与に関する届出」の範囲の金額で、家族に出した給与が必要経費になる。
  • 赤字となった場合の損失が翌年以降3年間繰り越すことができる。
  • 30万円未満の固定資産については一括で経費処理することができる。(年間300万円まで)
  • 売掛債権などが回収できなくなった場合の損失に備えて、一定割合で引当額を経費に計上することができる。

節税対策を考える場合の注意点

節税対策といっても、現金支出が必要なもの、申告をするだけで適用ができるものがあります。

手元に現金をより多く残すことだけを考えるのであれば、無理に節税対策をするよりも、なにもせずに納税した方が有利といえます。人的控除など、支出を伴わない節税対策はした方がよいですが、それ以外の節税対策は目的を見失わないように実行する必要があります。

まずは人的控除等の見直しや、副業にかかる所得の経費計上漏れがないか等を確認するようにしましょう。

まとめ

この記事では、サラリーマンのための節税対策を具体的に解説しました。社会保険料控除や人的控除の確認は、漏れが無いよう毎年必ず行うようにしてください。その他の節税対策については、状況に合わせて選択実行するようにしましょう。

税負担率は所得によって変わるため、所得金額と税負担をシミュレーションし、できることから対策するようにしてください。

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