E:投資のほかにも、例えば保険も今後の備えの1つかなと思うのですがいかがでしょう?そもそも、保険は20代のうちから入る必要があるのかな、という疑問もありまして。
FP:結論からいうと、20代で、特に独身であれば、保険は必要ないケースの方が多いです。もちろん、一概にはいえないですが。
生命保険に限っていえば、自分が死亡したときに経済的に困る人に対してお金を残すものなので、独身のうちは自分が亡くなったとしても困る人がいないんですよね。親を養っているとかなら別ですけど。
医療保険や、がん保険については、若い方でも気になる方が多いと聞きます。これも考え方なのですが、結局のところ20代だと、病気になる可能性は極めて低いのも事実です。特にがんなんて、20代でなる確率は0.1%よりも低いです。
究極的には、ギャンブルに近いところが正直あります。これはもう大昔、ヨーロッパの大航海時代からそうです。ギャンブル性があることは、保険の本質なんです。
だから医療保険やガン保険っていうと、起こる可能性の低い病気に対してお金をかけることになる、というのが私の持論ですね。
(病気になる)可能性が低いのなら、その分を預貯金に回す選択肢もあります。それでも入りたいということなら、安心感を得ることを優先する意味で引き止めませんが、私の方から若いうちに入っておいた方がいいという話はしないです。
E:自分がもし結婚したり、子どもが生まれたりしたら必要になりそうですが、独身だったら正直なくても大丈夫そうですね。
保険の中には貯蓄性があるものもあって、資産形成に関わってくるのかなと思っていたのですが…。
FP:貯蓄性のある保険商品は、あるにはあります。ただ、保険はそもそも、保障が本分ですので、貯蓄というのは後付といいますか。金融商品として、増やすものとして価値が高いかといわれると、必ずしもそうとはいいきれません。
バブル時代にあった「お宝保険」とか、ああいうのなら還元率が大きいですけど。現在は利率が下がり、基本的にあまり旨味はないです。それならNISAなどで、自分で資産運用した方がいいのではないでしょうか。
結局、保険会社が運用するか、ご自身で運用するかの差なので、貯蓄性のある保険は金銭的なメリットは正直薄いかなというところですね。
強いていうと、生命保険料控除で税制上の優遇が受けられるのはメリットですね。年末調整のときに会社に証明書を提出するアレです。資金に余裕があるのなら、生命保険料控除の枠の分だけやってみてもいいかもしれません。
E:あとは資産形成との関連で知りたいのが、ポイントの運用についてです。PayPayなどで、還元された分のポイントを資産運用に回すことができると聞きました。そういうのも20代のうちに始めておいた方がいいでしょうか?
FP:ポイント投資も投資方法の1つですね。証券口座を開設して金融商品を購入するのは敷居が高いと感じられたなら、そういったポイント投資とかで、もう少し気軽に投資を始めてみるのもいいと思います。
E:ポイント運用も、NISAやiDeCoとかと並列で捉えてもいいということですか?
FP:ポイント投資は投資を現金でするか、ポイントでするかの違いです。NISAやiDeCoが制度であるのに対し、ポイント投資はポイントを原資とする投資方法ですね。
E:ほかに、20代のうちからやっておくと役に立つ、というものはありますか?
FP:役立つという観点でいうと、確定申告は勉強になると思います。
私は、税理士事務所出身のFPなので、確定申告の時期に確定申告書を見て、業務していました。確定申告書には一通りどんな控除があるのかが書いてあって、あの中で税金の計算も行う書式になっているので、見ていると税金の仕組みが理解できるんです。
実際にやることはなくても、確定申告の仕組みや、やり方を勉強しておくだけでも、どんな控除があるかや税金の仕組みがわかるようになります。
E:ふるさと納税はやった方がいいですか?
FP:ふるさと納税は返礼品がもらえますので、メリットのある制度だと思います。20代のうちからやっておいて損はないですね。
ふるさと納税には、ワンストップ特例制度があります。先ほどの確定申告した方がいいという話にも通じますが、あえてそのワンストップ特例制度を使わないのもアリなのかなと思います。まあ、このあたりは考え方ですけど。
ふるさと納税を申告することで、確定申告をする1つのきっかけになります。必要ないのに確定申告をやりましょう、といってもピンとこないでしょうし、ちょうどいいかなと。
E:20代のうちから税金対策するというよりは、まずはどういう制度があるのかを知るためにふるさと納税をやってみるということですね。
FP:知識についてもそうなんですけど、キャリアアップのためにしっかり地盤固めをしておくことが大切かなと思います。20代をどう過ごすかで、その後の仕事は左右されると思いますので。
ケチケチして老後のためにお金を貯めるぐらいなら、書籍を買ったり、スキルアップしたりするために資金を使う方が、長い目で見るとよいのかなと思います。
E:セミナーに参加するのはどうですか?
FP:セミナーで勉強するのももちろん有効です。ただ、注意しないといけないのが、売り込みのあるセミナーが世の中に出回っていること。参加するなら、気をつけて選ぶようにしてください。
実際に私が相談を受けたお客さんで、そういうセミナーに参加された方がいました。不動産を扱う会社が主催だったそうで、そのまま口車に乗せられて、投資用物件を買わされてしまったと、後悔しているそうです。
売り込みがあっても、ちゃんと断ることができる、そういう芯がある人ならともかく、自信がないなという人は気をつけた方がいいかなと思います。