2022年10月から、身近な暮らしに関するさまざまな法律や制度が改正されました。
特に、お金にまつわる法改正や制度の見直しは、家計や暮らしに直結するため、クローズアップされています。
10月から、日々の生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
今回は、お金にまつわる法改正や制度変更を、8つ厳選して解説します。
【家計にかかわる制度改正まとめ】10月から変わる制度8選
2022年10月から改正された法律と制度
2022年10月に変更される法律や制度で、お金にまつわる改正を下表にまとめました。
ジャンル | 改正になる内容 | 変更点に関する概要 |
---|---|---|
子育て | 児童手当の制限 | 児童手当が受給できない所得の上限額を新設 |
育休中の社会保険料免除 | 育休取得における社会保険料の免除要件が変更 | |
給与・働き方 | 社会保険適用 | 社会保険を適用する事業所と短時間労働者の要件が拡大 |
雇用保険料 | 労働者の雇用保険料率が引き上げ | |
最低賃金の改定 | 新しい最低賃金での運用が全国でスタート | |
医療 | 診療報酬の改定 | 紹介状なしで特定の病院を受診した場合の定額負担が増加 |
後期高齢者の窓口負担 | 後期高齢者の窓口負担が2割に引き上げ | |
老後 | iDeCo | 企業型確定拠出年金との同時加入要件が緩和 |
子育てに関する制度改正
より子育てに従事できる制度改正がある一方、高所得者への給付金支給に制限が設けられました。
- 児童手当の制限
- 育休における社会保険の免除
児童手当の制限
児童手当は、中学校卒業までの児童を養育している人に支給されるものです。
支給額は以下の通りです。
<支給額>
- 3歳未満:一律15,000円
- 3歳以上小学校修了前:10,000円(第3子以降は15,000円)
- 中学生:一律10,000円
10月からの改正により、児童手当の支給に所得上限が加わりました。
出典:内閣府 児童手当制度のご案内
これまでは、所得制限限度額未満であれば、上記の金額が支給され、限度額を超えた場合は、特例給付金として一律5,000円が支給されていました。
今回の改正により、新たに「所得上限限度額」が設けられました(上表参照)。
所得上限限度額を超えた場合、一律5,000円の支給も行われません。
育休中の社会保険料免除
これまでは、短期間の育休を取得した場合は、社会保険の保険料は免除されませんでした。
改正後は、「同一月内に14日以上の育休取得」であれば、社会保険料が免除される要件が追加されました。
出典:日本年金機構 育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しの概要
また、賞与月に育休を取得する場合、1ヵ月を超える取得であれば、賞与に係る保険料も免除されます。
出典:日本年金機構 育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しの概要
今回の改正で、これまで問題視されていた2つの問題点が解消されました。
- 月をまたがずに育休取得をしても社会保険料が免除されなかった点
- 賞与の社会保険料免除を目的とした短期間の育休取得が行なわれていた点
今回の制度改正により、家庭の状況に合わせて育休を取得しやすくなったと言えます。
給与や働き方に関する制度改正
次に、給与や働き方に関する3つの制度改正について解説します。
- 社会保険適用拡大
- 雇用保険料の引き上げ
- 最低賃金の値上げ
社会保険適用拡大
2022年10月より、社会保険の適用となる事業所が拡大されました。
これにより、短時間労働をしている人も、特定の条件を満たしていれば社会保険に加入しなければなりません。
社会保険が適用される事業所の要件と、加入対象者の条件は下表の通りです。
出典:厚生労働省 厚生年金ガイドブック 事業主向け
9月以前は配偶者の社会保険の扶養内で働いていたパート・アルバイトの人も、上図にある条件に当てはまる場合は、社会保険に加入する必要があります。
雇用保険料
雇用保険料は、新型コロナウイルスによって雇用保険からの支出が増大したことを背景に、20年ぶりに引き上げられました。
雇用保険料は、企業側と労働者側のそれぞれが負担する決まりですが、今回の改正で負担率が下表に変更されます。
一般の事業 | 労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 |
---|---|---|---|
改正前(2022年9月30日まで) | 0.3% | 0.65% | 0.95% |
改正後(2022年10月1日から) | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
出典:厚生労働省 令和4年度雇用保険料率のご案内
仮に月給が50万円だと、改正前後で労働者負担は1,000円増加します。
- 改正前:50万円×0.3%=1,500円
- 改正後:50万円×0.5%=2,500円
雇用保険料率の引き上げによって、給与から天引きされる雇用保険料も増加します。
その結果、手取り額が少なくなるので、気を付けましょう。
最低賃金の引き上げ
月から、最低賃金が引き上げられました。
10月から適用される最低賃金のポイントは、次の3点です。
- 47都道府県で30円~33円の引き上げ
- 改定後の全国加重平均額は961円。前年に対する引上げ額は過去最高の31円
- 最高額は1,072円、最低額は853円
時給で働いているアルバイトやパートの人は、今回の改正で勤務先の最低賃金が引き上げられているか、確認しておきましょう。
医療に関する制度改正
医療に関する制度では、以下の改正が行われています。
- 紹介状なしで特定の病院を受診した場合の定額負担が増加
- 後期高齢者の窓口負担が2割に引き上げ
診療報酬の改定
診療報酬の改定によって、紹介状なしで特定の病院を受診すると、初診と再診の定額負担が増加します。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
対象病院 | ・特定機能病院 ・地域医療支援病院(一般病床200床以上に限る) |
・特定機能病院 ・地域医療支援病院(一般病床200床以上に限る) ・紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る) |
初診料 | 医科5,000円 歯科3,000円 |
医科7,000円 歯科5,000円 |
再診料 | 医科2,500円 歯科1,500円 |
医科3,000円 歯科1,900円 |
出典:厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要 外来Ⅰ
後期高齢者の窓口負担
後期高齢者の窓口負担が2割に引上げられました。
75歳以上で課税所得が28万円以上になる人のうち、以下の条件に該当していると2割負担となります。
- 単身世帯の場合「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上
- 複数世帯の場合「年金収入+その他の合計所得金額」が合計320万円以上
老後
最後に、老後のお金に関係するiDeCoの制度改正について解説します。
これまで企業が実施している確定拠出年金(企業型DC)に加入していると、iDeCoは規約上加入できませんでした。
今回の改正で、特定の条件を満たすとiDeCoの同時加入が掛金上限2万円まで可能になります。
- 各月の企業型DCの事業主掛金額と合算して5万5000円以内であること
- 掛金が各月の拠出であること
- 企業型DCでマッチング拠出(※)を利用していないこと
※マッチング拠出とは、企業型DCにおいて企業の掛金に従業員が上乗せして拠出できるしくみ
企業型DCで取り扱っていない運用商品をiDeCoで補える点がメリットです。
ただし、開設する口座の管理費が増えるため注意してください。
10月の法改正や制度変更で生活も見直しを
10月から改正されるお金にまつわる制度について、ジャンルごとにまとめて解説しました。
お金にまつわる制度が変わる時は、生活に変化や影響がないか確認することが大切です。
何気なく生活していると、家計の収入減や、思いがけない支出が生じる場合があります。
今回の改正された内容を踏まえて、制度の上手な活用方法を検討しつつ、日々の生活も見直してみましょう。
- 内閣府 児童手当制度のご案内
- 日本年金機構 育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しの概要
- 厚生労働省 厚生年金ガイドブック 事業主向け
- 厚生労働省 令和4年度雇用保険料率のご案内
- 厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要 外来Ⅰ
- 厚生労働省 後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直しについて
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト 2022年の制度改正の概要