2022年10月から、診療時に提示した保険証で窓口の追加負担額が変わります。
マイナンバーと健康保険が一体化した「マイナ保険証」と従来の保険証で、診療報酬の改定が行われました。
従来の健康保険証とマイナ保険証を利用した場合、診療報酬が改定される内容と、背景にある医療DXについて解説します。
【マイナ保険証】10月から変わる診療報酬。窓口負担はどうなる?
マイナ保険証を取り巻く診療報酬の変遷
現行制度では、マイナ保険証を利用した場合、利用しない場合と比べて窓口の追加負担が重くなります。
現行制度:診療報酬(初診)の3割を負担する場合
電子的保健医療情報活用加算 | マイナ保険証を利用する | 従来の保険証を利用する |
---|---|---|
診療報酬の点数(初診)(※1) | 7点 | 3点 |
診療報酬の点数(再診) | 4点 | なし |
診療報酬の点数(調剤) | 3点(月1回) | 1点(3ヵ月に1回) |
診療報酬(初診)/ 3割負担 | 70円 / 21円 | 30円 / 9円 |
診療報酬(再診)/ 3割負担 | なし | なし |
診療報酬(調剤)/ 3割負担 | 30円 / 9円 | 10円 / 3円 |
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第527回)」より作成
※1)診療報酬とは、医療サービスの対価として医療機関が受け取るもの
※2)公定価格とは、診療報酬の点数のこと。点数は医療行為ごとに定められている。1点は10円
診療報酬(初診)の3割負担額で比較すると、マイナ保険証を利用した場合、利用しない場合より12円負担が増えます。
システム導入のコストや患者への説明が必要となり、かえってコストが増えてしまいました。
上記の問題を早期に解消するため、厚生労働省は現行の診療報酬制度(電子的保健医療情報活用加算)を9月いっぱいで廃止します。
新たな診療報酬制度(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)では、マイナ保険証を利用した場合の追加負担が軽くなる制度に改定されました。
10月以降:診療報酬(初診)の3割を負担する場合
医療情報・システム基盤整備体制充実加算 | マイナ保険証を利用する | 従来の保険証を利用する |
---|---|---|
診療報酬の点数(初診) | 2点 | 4点 |
診療報酬の点数(再診) | なし | なし |
診療報酬の点数(調剤) | 1点(6ヵ月に1回) | 3点(6ヵ月に1回) |
診療報酬(初診)/ 3割負担 | 20円 / 6円 | 40円 / 12円 |
診療報酬(再診)/ 3割負担 | 40円 / 12円 | なし |
診療報酬(調剤)/ 3割負担 | 10円 / 3円 | 30円 / 9円 |
マイナ保険証を利用した場合と利用しない場合を、改正前後で比較すると下表の通りになります。
窓口追加負担(3割負担) | マイナ保険証を利用する | マイナ保険証を利用しない | ||
---|---|---|---|---|
改正前 | 改正後 | 改正前 | 改正後 | |
初診* | 21円 | 6円 | 9円 | 12円 |
再診* | 12円 | なし | なし | なし |
調剤* | 9円 | 3円 | 3円 | 9円 |
ただし、マイナ保険証を利用すればどの医療機関や薬局でも窓口負担が軽くなるわけではありません。
施設基準を満たしていない病院でマイナ保険証を利用しても、診療報酬は引き下がりません。
そのため、従来の保険証しか使えない医療機関や薬局で診療を受けている人は、負担が重くなります。
さらに、病院側の環境も整っているとはいえません。
2022年7月時点で施設基準を満たしているのは全体の31.1%にとどまっています。
2024年4月までにマイナ保険証を利用できる施設基準を満たさないと、ペナルティとして保険診療が行えなくなる可能性も示唆 されています。
なぜ「マイナ保険証」にこだわるのか?
厚生労働省は、患者の健康保険の資格情報や診療情報を、医療機関間で共有できる「オンライン資格確認」の推進を、医療DXの基盤に位置づけています。
出典:厚生労働省 全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための基盤について
そして、マイナ保険証は「オンライン資格確認システム」の推進には欠かせない要素です。
しかしながら、全体的に体制整備は、まだ不十分と言わざるを得ません。
マイナ保険証のメリットを国民に示し、医療機関との連携を強める必要があります。
- 日本医師会 なるほど!診療報酬
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第527回)
- 厚生労働省 全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための基盤について