「介護費用はいくら必要になるか」「在宅介護でかかる自己負担額はどのくらいか」「介護施設の入居費用は施設によってどう違うのか」……。
親の介護を考えて将来が心配になったことがある方は多いのではないでしょうか。
介護が必要になった場合、在宅で介護するか、介護施設に入居するかによってかかる費用も大きく異なります。
今回は在宅介護と施設介護にかかる費用の違いや、捻出方法、負担を軽減する方法について解説します。
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「介護費用はいくら必要になるか」「在宅介護でかかる自己負担額はどのくらいか」「介護施設の入居費用は施設によってどう違うのか」……。
親の介護を考えて将来が心配になったことがある方は多いのではないでしょうか。
介護が必要になった場合、在宅で介護するか、介護施設に入居するかによってかかる費用も大きく異なります。
今回は在宅介護と施設介護にかかる費用の違いや、捻出方法、負担を軽減する方法について解説します。
まず、介護サービスの基盤となる公的介護保険制度についておさらいしておきましょう。
公的介護保険制度とは、高齢者の介護を社会全体で支え合い、老後の不安を軽減することを目的に、2000年に創設された制度です。40歳になったら国民の全員が加入し、保険料を支払うことが義務付けられています。認知症や寝たきりなど、介護が必要な状態であると認定された場合には、1~3割の自己負担で公的介護サービスを利用できます。
公的介護保険の加入者(被保険者)は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳までの医療保険加入者である第2号被保険者に分けられます。
公的介護サービスを利用できるのは、第1号被保険者は要因を問わず要支援・要介護認定を受けた方なのに対し、第2号被保険者は老化に起因する16種類の特定疾病(末期がんや脳血管疾患など)が要因で要支援・要介護の認定をされた場合に限られます。
特定疾病の範囲
出典:厚生労働省|特定疾病の選定基準の考え方より作成
公的介護保険の利用者は年々増加傾向にあり、厚生労働省の調査*によると、1ヶ月間に公的介護サービスを利用する人は2016年度には550万人を突破しました。
出典:厚生労働省|平成29年度 介護保険事業状況報告(年報)概要
65歳以上の第1号被保険者が公的介護サービスを利用する際の負担割合は原則1割、所得が一定以上ある方は2割、現役世代と同程度の所得がある方は3割となります。
負担割合の判定は以下のフローチャートに沿って、(1)本人の合計所得金額、(2)世帯の合計所得金額の順で確認します。合計所得金額とは、基礎控除や配偶者控除などの所得控除をする前の所得金額のことを指しますが、(1)と(2)では年金収入の扱いが異なります。
年金収入は、(1)では公的年金等控除を控除した上で雑所得として合算されていますが、(2)では公的年金等控除を控除する前の金額をそのまま利用します。そのため、単身世帯の方でも(1)と(2)の判定基準には公的年金等控除に相当する金額の差があります。
すでに要介護・要支援の認定を受けている方は、市区町村から毎年交付される「負担割合証」で負担割合を確認できます。
出典:厚生労働省|
現役並みの所得のある方は、 介護サービスを利用したときの 負担割合が3割になりますより作成
公的介護サービスを利用するには、まず要支援・要介護の認定を受ける必要があります。お住まいの市区町村に申請すると、主治医の意見や認定員の調査を反映した一次判定、介護認定審査委員会による二次判定を経て、日常生活を送るためにどの程度の支援・介護が必要か認定されます。要支援・要介護状態の区分の目安は下記のとおりです。
出典:厚生労働省|要介護認定の仕組みと手順より作成
要支援・要介護認定された後は、ケアマネージャーが(介護支援専門員)作成したケアプランに基づいて以下のような公的介護サービスを受けることができます。
1.在宅サービス
2.施設サービス
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(2024年3月末までに廃止予定)、介護医療院への入所
3.地域密着型サービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
介護に必要な費用は公的介護サービスの利用料だけではありません。在宅介護、施設介護のどちらを選んでも、公的介護保険が適用されないサービスについては、全額自己負担でまかなうことになります。ここでは、在宅介護と施設介護にかかる費用の違いについて解説します。
在宅介護を家族だけで行うのは負担が大きいため、要介護度に応じて公的介護サービスの力を借りて行います。公的介護サービスの自己負担額は利用料の1~3割ですが、公的介護サービスには要介護度に応じて利用限度額が設定されており、限度額を超過した分については全額自己負担となります。
さらに、紙おむつをはじめとする消耗品代や、タクシー代や配食サービス代といった外部サービスの利用料がかかってきます。
厚生労働省の調査を元に、1ヶ月間に利用する介護サービスの平均費用、利用限度額、限度額を超えている人の割合をまとめたのが下記の表です。要介護度が進むほど介護費用も多くかかりますが、利用限度額は要介護度ごとに標準的に必要と考えられるサービスの組み合わせを元に設定されているため、限度額を超えている方は全体の2.3%に留まります。
1人あたり 平均費用 (月間) |
自己負担額平均(月間) | 利用限度額(月間)※見直し後 | 利用者に占める支給限度額を超えている人の割合※見直し前 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
1割の場合 | 2割の場合 | 3割の場合 | ||||
要支援1 | 18,918円 | 1,892円 | 3,784円 | 5,675円 | 50,320円 | 0.4% |
要支援2 | 33,434円 | 3,343円 | 6,687円 | 10,030円 | 105,310円 | 0.2% |
要介護1 | 74,507円 | 7,451円 | 14,901円 | 22,352円 | 167,650円 | 1.7% |
要介護2 | 104,047円 | 10,405円 | 20,809円 | 31,214円 | 197,050円 | 3.6% |
要介護3 | 156,020円 | 15,602円 | 31,204円 | 46,806円 | 270,480円 | 3.0% |
要介護4 | 189,613円 | 18,961円 | 37,923円 | 56,884円 | 309,380円 | 4.0% |
要介護5 | 235,565円 | 23,557円 | 47,113円 | 70,670円 | 362,170円 | 5.0% |
全体 2.3% |
出典:厚生労働省|第168回 社保審 介護給付費分科会 第168回(平成31年2月13日)「2019年度介護報酬改定について」、第145回 社保審 介護給付費分科会(平成29年8月23日)「区分支給限度基準額」より作成
※2019年10月1日の消費増税に合わせ、利用限度額が引き上げられました。ただし、「利用者に占める支給限度額を超えている人の割合」は見直し前の実績となります。
介護が必要な期間は「平均寿命」から「健康寿命(健康上の問題による日常生活への影響がない期間)」を差し引くことで推測することができます。厚生労働省の資料*を元に算出すると、男性は8.84年、女性は12.35年となり、平均して10年前後は介護が必要な期間が続くと考えられます。
出典:厚生労働省|健康寿命のあり方に関する有識者研究会 報告書(2019年3月)より作成
仮に要介護5の状態が10年続いた場合、1割負担でも自己負担額は300万円近くに上ります。さらに、介護保険が適用されないおむつ代や外部サービスの利用料もかかります。介護期間が10年かそれ以上続くことを想定した準備が必要です。
一度介護が必要な状態になると、症状が進行することはあっても寛解することは少ないのが現状です。適切な生活支援やリハビリテーションを行うことで症状の進行スピードを少しでも遅くすることが、本人やそれを支える家族にとって重要です。
同居している家族がいないために在宅介護が難しい、「要介護5」など症状が重く24時間ケアが必要……といった場合には、介護施設の入居も視野に入れなければなりません。介護施設の居住費や食費には介護保険が適用されませんので、一般的に在宅介護よりもお金がかかります。
実際どのくらいのお金が必要なのでしょうか。介護施設利用時にかかる費用の相場は下記のとおりです。この表の月額利用料には、施設介護サービスの利用料、居住費、食費、日常生活費(日用品、嗜好品)、医療費なども含まれます。
公的/ 民間 |
施設の種類 | 入居一時金の相場 | 月額利用料の相場 |
---|---|---|---|
公的施設 | 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 0円 | 6~15万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 9~20万円 | |
介護療養型医療施設 | 0円 | 6~15万円 | |
介護医療院 | 0円 | 8~14万円 | |
※ | ケアハウス(軽費老人ホームC型) | 一般型:0~数十万円 | 一般型:7~16万円 |
介護型:数十~数百万円 | 介護型:16~30万円 | ||
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~35万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~35万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数十万円 | 10~30万円 | |
グループホーム | 0~数百万円 | 15~30万円 |
※注:ケアハウスの運営団体は地方自治体や社会福祉法人、民間の事業会社とさまざまです。ケアハウスには、主に自立した高齢者を対象とした「一般型」と、要介護高齢者を対象とした「介護型」があります。
公的介護施設の場合、入居時の一時金は不要で、月額利用料は入居者本人と扶養義務のある家族の支払い能力に応じて決まります。また、収入や資産が一定以下の方に対しては自己負担上限額が定められており、上限を超える居住費と食費に関しては公的介護保険からまかなわれます。
民間の介護施設の場合、居住費や食費などの月額利用料は施設側が自由に決められます。そのため、立地や設備、サービスによって金額には大きな幅があります。
なお、おむつ代は公的介護施設では介護給付に含まれていますが、民間の介護施設では全額自己負担となります。
介護には多額のお金がかかりますが、親と子のどちらが負担すべきなのでしょうか。また、どうやって捻出すれば良いのでしょうか。
介護にかかる費用は、原則として介護サービスを受ける本人が負担します。介護に必要な費用は、要介護者となる親本人の貯蓄や年金からまかない、どうしても足りなくなった場合のみ、子どもが援助しましょう。
子どもが親の介護費用を長期間負担し続けるのは厳しく、誰が介護を担い、費用を負担するのかをめぐって兄弟姉妹間でトラブルに発展するケースも珍しくありません。また、介護費用は親本人が負担するとしても、親のお金の用途を子どもが勝手に決めて良いわけではありません。
介護費用を親のお金でまかなうことについては、あらかじめ本人の了解を得る必要があります。いざ介護が必要になったとき家族が混乱したり、子どもの負担が重くなったりしないよう、親が健康なうちに家族で話し合う時間を作りましょう。
「公的介護保険だけでは不安」という場合には、民間の介護保険に加入することも検討しましょう。民間の介護保険に加入していれば、介護が必要になった際に介護一時金や介護年金、あるいはその両方を受け取ることができます。
「介護サービス」が提供される公的介護保険とは異なり、「現金」が支給されるところが民間の介護保険の心強い点です。介護一時金は介護用ベッドの購入費用やリフォーム費用、介護施設への入所費用に、介護年金は公的介護サービスの利用料や公的介護保険適用外の介護費用の補てんに利用できます。
「生活が苦しく、どうしても介護費用が払えない」という方は、下記のような介護費用の軽減措置制度を利用できる場合があります。
高額介護サービス費の払い戻し制度は、公的介護サービスの自己負担額が上限を超えたときに、超過分を高額介護サービス費として払い戻す制度です。
高額介護サービス費の支給対象となる方には、自治体から申請書が送付されますので、必要事項を記入して提出する必要があります。払い戻しの対象となるのは、公的介護サービスの利用料のみで、介護施設の居住費や食費、福祉用具購入費、リフォーム費は対象外です。
対象者 | 自己負担の上限(月額) | |
---|---|---|
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 14万100円(世帯) | |
課税所得380万円(年収約700万円)~課税所得690万円(1,160万円)未満 | 9万3,000円(世帯) | |
住民税を課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 4万4,400円(世帯) | |
住民税を課税されている方がいない世帯の場合 | 2万4,600円(世帯) | |
前年の所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方 | 2万4,600円(世帯) 1万5,000円(個人) | |
生活保護を受給している方など | 1万5,000円(世帯) |
出典:厚生労働省|月々の負担の上限(高額介護サービス費の基準)が変わりますより作成
払い戻される高額介護サービス費は次の計算式で算出できます。
本人の自己負担額 - 本人の自己負担上限額 = 高額介護サービス費
介護サービスを受ける人が1人で、自己負担額の上限が1万5,000円、実際に自己負担した額が2万円の場合は以下のようになります。
20,000円 - 15,000円 = 5,000円
介護サービスを利用する方が世帯に2人以上いる場合は、次の計算式を用います。
(世帯全体の利用者負担額-世帯の自己負担の上限額) × 本人の自己負担額 ÷ 世帯全員の利用者負担額 = 高額介護サービス費
自己負担額の上限が4万4,400円の世帯で、夫婦2人がそれぞれ公的介護サービスを利用し、夫の自己負担額が2万円、妻の自己負担額が3万円となった場合に払い戻される金額は以下のようになります。
介護保険負担限度額認定証の交付制度は、居住費や食費の負担が大きく、施設の入居が難しい場合に利用できる制度です。所得と預貯金などに関する要件を満たせば、介護保険負担限度額認定証が交付され、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型病床)利用時に支払う居住費と食費が軽減されます。介護保険施設であればショートステイの利用でも負担額が軽減されます。
書類は市町村のホームページからダウンロードするか、市町村の窓口と地域包括センターで受け取ることができます。認定証の有効期限は1年間のため、毎年更新が必要です。
介護サービスを利用したくても、所得が低く生計を立てることが困難という方に対しては、公的介護サービスを利用する時の自己負担額が1/4軽減される「生計困難者等に対する負担軽減事業」があります。生活が困難な方の中でも、老齢福祉年金受給者は自己負担額の半額、生活保護受給者は全額が免除されます。
所得と預貯金などの一定の要件を満たした方には、軽減確認証が交付されます。自己負担額の軽減対象は、管轄の都道府県や市区町村に「利用者負担軽減措置事業」の実施を申請した社会福祉法人が提供しているサービスに限られます。軽減されるのは、介護サービスの利用料と施設の居住費・食費です。
公的介護サービスの助けを借りて行う在宅介護よりも、居住費や食費の負担が大きい施設介護のほうが介護費用の自己負担額は大きくなります。介護費用は親のお金でまかなうのが基本ですが、民間の介護保険や各種の軽減制度を利用することで負担額を抑えることも可能です。いざ介護が必要になったときに備えて、無理のない介護の計画を立てたいという方はファイナンシャル・プランナー(FP)にご相談ください。
なお、介護費用を含めた老後資金やセカンドライフの備えについては、以下の記事を参考にしてみてください。
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