社会保険の加入要件の1つに、月8万8000円という基準があります。
残業をして、月8万8000円を1度でも超えると、社会保険に加入しなければならないのでしょうか。
この記事では、10月から拡大される、社会保険の加入条件を確認するとともに、月8万8000円を超えるとどうなるかについて解説します。
月収8万8000円を一度でも超えたら社会保険に加入しないといけない?8万8000円の場合の社会保険料はいくら?
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
10月から拡大する社会保険の加入条件
10月から、社会保険の加入要件は以下の通りになります。
出典:厚生労働省「社会保険適用拡大についてご案内します」(以下同)
10月から変更される点は、勤め先の従業員数が拡大される点です。
2024年9月までは、勤め先の従業員数が101人以上の人が対象ですが、10月以降は51人以上の企業に勤めている人が対象になります。
月収8万8000円を超えると社会保険への加入が必須?
社会保険に加入が必要かどうかは、所定内賃金が月8万8000円以上かどうかで判断されます。
所定内賃金とは、雇用契約書などであらかじめ決められた賃金や諸手当のことです。
通勤手当や、残業代、賞与などは所定内賃金には含まれません。
そのため、残業をして月の賃金が一時的に8万8000円を超えたとしても、すぐに社会保険に加入する必要はありません。
例えば、雇用契約書で「時給:1,200円」「週の所定労働時間:30時間」と定められていた場合、所定内賃金は以下のようになります。
1,200円×15時間×52週(1年)÷12ヵ月=7万8000円
所定内賃金が8万8000円以下なので、社会保険への加入は不要となります。
時給や所定労働時間が増え、雇用契約が見直された場合、所定内賃金が8万8000円以上になると、社会保険への加入が必須となります。
1,200円×20時間×52週(1年)÷12ヵ月=10万4000円
では、月収が社会保険への加入要件である最低ラインの8万8000円の場合、社会保険料はいくらかかるのでしょうか。
月額8万8000円で社会保険に入るといくらかかりますか?
社会保険に加入すると、以下の保険料が給与から天引きされます。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料(40歳以上のみ)
社会保険料は、事業主と従業員が折半して負担します。
仮に、東京都に在住する40歳のパートタイム労働者が社会保険に加入した場合、保険料がいくらになるか確認します。
協会けんぽで健康保険に加入している場合、東京都に住んでいる人の社会保険料(月額)は以下の通りです。
- 健康保険料:8,782円
- 介護保険料:928円
- 厚生年金保険料:1万6104円
- 社会保険料合計:2万5814円
保険料は事業主と従業員が折半して負担するため、給与から天引きされる保険料は1万2907円となります。
月収8万8000円の人が社会保険に加入した場合、1万2907円が天引きされ、手取りは7万5093円となります。
なお、厚生労働省は、2025年以降も社会保険の加入要件を拡大する方向で検討を進めています。
- 厚生労働省「社会保険適用拡大についてご案内します」