1月7日、東京都は、都内で働く介護職員を対象に、月1万~2万円の「居住支援手当」を支給することを決定しました。
介護事業所で働く約15万4000人の職員と、約1万5000人のケアマネジャーが対象となる見通しです。
この記事では、東京都が独自で実施する「居住支援手当」の概要や、国が実施予定の対策について解説します。
東京都が介護職員に最大月2万円を支給。介護人材の確保と定着が目的
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
【東京都】介護職員に最大月2万円を支給
東京都は、都内で働く介護職員に対して、月1万~2万円の「居住支援手当」を支給します。
職員に対して直接支給する形ではなく、「居住支援手当」を設けた法人に対して支給されます。
支給額は月1万円で、同じ法人で働く5年目までの職員には、1万円を加算して支給します。
障害福祉サービス事業所で働く介護職員にも、同様の手当を支給します。
「居住支援手当」は、2024年度から支給を開始する予定です。
団塊の世代が75歳以上になる2025年には、東京都では、介護人材が約3万人不足するとされています。
「居住支援手当」によって都内に居住するための費用を軽減することで、人材の確保を後押しするねらいがあります。
介護職員の給与水準と国の対策
出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員等ベースアップ等支援加算を取得している事業所では、2022年12月の介護職員の平均給与が31万8230円でした。
出典:厚生労働省「介護人材の処遇改善等」(以下同)
2021年の同月調査時よりも約1万7000円増えていますが、それでもほかの産業と比較すると、給与水準は低い傾向があります。
また、介護業界では、35歳以上の平均勤続年数がほかの産業を下回っており、定着している人材が少ないことがうかがえます。
政府の試算によると、介護職員は2025年度に約243万人、2040年度には約280万人が必要とされており、深刻な人材不足が起こることが予想されています。
介護職員の給与水準が低い状況を改善し、人材を確保するために、2024年2月から職員の賃金を6,000円引き上げる見通しです。
当初は、2024年5月までの一時的な措置として実施する予定でしたが、6月以降も恒久的に行う方向で調整しています。
ただし、この月6,000円の賃上げが、どこまで介護職員の定着につながるかは不透明です。
深刻な人員不足を前に、どのような対策が取られるか、引き続き注目が集まります。
- 厚生労働省「診療報酬改定について」
- 厚生労働省「介護人材の処遇改善等」