政府は、介護職員の離職を防ぐ目的で、介護職員と看護補助者の賃金を月6,000円引き上げる考えを明らかにしました。
賃上げはいつからスタートする予定で、介護報酬や診療報酬は改定される見通しなのでしょうか。
この記事では、介護職員の賃金を引き上げる政策の概要や、開始時期について解説します。
介護職員・看護補助者、月6,000円の賃上げへ。2024年2月から企業に補助金
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
介護職を取り巻く現状
厚生労働省が2023年11月に発表した「毎月勤労統計調査」によると、一般労働者における2023年9月の現金給与総額は「全産業」で36万3444円、「医療福祉」で33万3513円でした。
医療福祉の給与は、ほかの産業に比べて低い状況といえます。
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」によると、2022年12月の介護職員における平均給与は31万8230円でした。
介護分野においては、賃金が低いことを理由とした離職者の増加が課題になっています。
公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」では、2022年度の離職率は14.4%でした。
賃上げの背景には、介護職員や看護補助者の離職に歯止めをかけるねらいがあります。
賃上げの概要
政府が検討している賃上げプランは、「2024年度の報酬改定」と「報酬改定までのつなぎ」の2つです。
介護職員や看護補助者の給与は、国が定める介護報酬や診療報酬によって決まります。
2024年度は、介護報酬と診療報酬を同時に改定する予定です。
それまでの「つなぎ」として、介護職員や看護補助者の賃上げを行った企業に対して、政府が月6,000円の補助金を支給します。
補助金の交付は2024年2~5月頃まで実施する予定です。
補助金が支払われている間は、介護報酬の改定は行われないので、介護サービス利用者の負担額が上がるといった心配はないでしょう。
ただし、介護報酬や診療報酬が改定された場合は、利用者負担が上がる可能性はあります。
介護報酬や診療報酬の改定については、こちらの記事「2024年度から介護保険料が値上げか。高所得者は保険料が最大2.6倍になるかも」で解説しています。
今回の賃上げ策が、介護職員の離職率低下につながるのか、注目が集まります。