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高校生の扶養控除がなくなるかも。児童手当の増額分より、税負担が増える可能性あり

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

「こども未来戦略」として打ち出された児童手当の拡充案は、2024年12月から支給が始まります。

高校生まで支給期間が延長される一方で、政府は高校生の扶養控除の廃止・縮小を検討しています。

扶養控除が廃止・縮小されると、高校生の子どもがいる世帯は、税負担が増える可能性が高まります。

この記事では、扶養控除が廃止・縮小された場合の影響について解説します。

扶養控除の縮小案とは?

扶養控除とは、同一世帯で扶養している親族がいると、所得税の負担が軽減される制度です。

扶養控除は、16歳以上で以下の4点を満たすと対象となります。

  • 配偶者以外の親族または都道府県知事から養育を委託された児童(里子)や市町村長から養護を委託された老人
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でない

扶養控除の要件を満たせば、1人あたり38万円の所得控除が受けられます。

しかし、児童手当の支給が高校生まで拡充することに伴い、政府は高校生の扶養控除額の減額を検討しています。

児童手当の増額については、こちらの記事「2024年10月から児童手当が大幅増額。多子世帯で第3子以降の支給額は月3万円に」を参考にしてください。

扶養控除が廃止または減額された場合のシミュレーション

扶養控除が廃止または減額されて、児童手当の支給額以上に税負担が増えれば、実質の負担増となります。

扶養控除が廃止された場合と、減額された場合でそれぞれシミュレーションしてみましょう。

扶養控除が廃止された場合

まず、扶養控除が廃止された場合、税負担がどのくらい増えるのかシミュレーションします。

【条件】

  • 年収:700万円
  • 家族:妻(共働き)と子(高校生) 
  • 給与所得控除:181万円
  • 社会保険料控除:年収の15%で計算(75万円)

扶養控除がある場合

  • 所得税:28万8500円
  • 住民税:36万8000円
  • 合計:65万6500円

扶養控除がない場合

  • 所得税:36万4500円
  • 住民税:40万1000円
  • 合計:76万5500円

扶養控除がなくなると、年間で約11万円の負担増になることがわかります。

児童手当が年間で12万円給付(高校生は月1万円の給付予定)されても、実質のプラスは年間1万円になります。

扶養控除が減額された場合

次に、扶養控除が減額される場合、税負担がいくらになるのかシミュレーションしてみましょう。

【条件】

  • 年収:700万円
  • 家族:妻(共働き)と子(高校生)
  • 給与所得控除:181万円
  • 社会保険料控除:年収の15%で計算(75万円)
  • 扶養控除:25万円(現行のおよそ3分の2に減額)

扶養控除がある場合

  • 所得税:28万8500円
  • 住民税:36万8000円
  • 合計:65万6500円

扶養控除が減額された場合

  • 所得税:31万4500円
  • 住民税:38万1000円
  • 合計:69万5500円

合計で年間約4万円の負担増となりました。

児童手当が年間で12万円給付されても、実質のプラスは年間8万円になります。

扶養控除が廃止、または減額されると、収入が高い世帯ほど税負担が重くなり、児童手当が支給されても結果的に負担が増す可能性があります。

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