2024年度から、高所得の高齢者に対する介護保険料が引き上げられる見通しです。
厚生労働省は、11月6日に行われた社会保障審議会で、所得が高い65歳以上の高齢者の介護保険料を増額する案を大筋で了承しました。
増額分は、介護職員の賃上げや低所得者の介護保険料の負担軽減に使われる予定です。
この記事では、介護保険料が引き上げられる所得要件や、制度がいつからスタートするかについて解説します。
2024年度から介護保険料が値上げか。高所得者は保険料が最大2.6倍になるかも
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
2024年度からの介護保険料
現行制度では、合計所得に応じた区分を9段階に設定しています。
出典:厚生労働省「給付と負担について」(以下同)
2021~2023年度の保険料は、全国平均で毎月6,014円です。
現行制度で第9段階に位置している場合、毎月の保険料は1.7倍で、約1万円支払う必要があります。
2024年度からの制度では、合計所得が410万円以上の高齢者を対象に、新たに4段階の階層を設けて保険料を増額する見通しです。
現時点で、保険料の増額がどれくらいになるか明確に決まっていませんが、以下の案が例として示されています。
- 第9段階(320万円以上):1.7倍
- 第10段階(410万円以上):1.8~1.9倍
- 第11段階(500万円以上):1.9~2.1倍
- 第12段階(590万円以上):2.0~2.3倍
- 第13段階(680万円以上):2.1~2.6倍
負担する保険料が、最大で2.6倍になる可能性があります。
保険料の増額分は、介護職員の賃上げや、低所得者の介護保険料の負担軽減に使われる予定です。
一方で、第1段階から第3段階については、保険料負担を引き下げる見通しです。
介護保険料の新制度については、2024年度の開始を目指して引き続き調整が行われる見通しです。
2割負担の対象者も見直しへ
介護保険制度における、利用者の負担割合についても見直し案が提示されました。
現行制度では、高齢者の収入要件によって負担割合が1~3割の3段階に分けられています。
被保険者の上位20%にあたる「2割負担者」の範囲を拡大する方向で、調整が行われています。
「2割負担者」にあたる年収要件は、次の通りです。
- 単身世帯:280万円以上
- 夫婦2人世帯:346万円以上
社会保障審議会では、現状維持案のほかに、3つの拡大案が提示されました。
- 単身世帯:年収260万円以上、夫婦2人世帯:326万円以上
- 単身世帯:年収240万円以上、夫婦2人世帯:306万円以上
- 単身世帯:年収220万円以上、夫婦2人世帯:286万円以上
2割負担の対象者を拡大するかどうかについては、部会でも賛成意見と反対意見が分かれており、調整が難航する可能性もあります。
2024年に保険料や利用者の負担割合がどう変わるのか、引き続き注目が集まります。
- 厚生労働省「給付と負担について」