政府は経済対策の1つとして、「年収の壁」を解消するための対策を発表しました。
年収の壁とは、ある一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、手取り収入が少なくなる現象を指します。
この記事では、「年収の壁」を解消する対策「年収の壁・支援強化パッケージ」について解説します。
「年収の壁」解消へ。「年収の壁・支援強化パッケージ」で労働者1人あたり最大50万円の支援
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
年収の壁・支援強化パッケージ
年収の壁を解消するための経済対策として、厚生労働省は「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。
「106万円の壁」と「130万円の壁」の解消を目的に実施されます。
「106万円の壁」とは、従業員数が100人超の企業に週20時間以上勤務する場合、社会保険への加入が必要になる年収ラインです。
「130万円の壁」とは、上記以外の場合で、社会保険への加入が必要になる年収ラインです。
「年収の壁」を超えると、社会保険料の負担が発生し、手取り額が減少する可能性があります。
手取り額が減少することを避けるため、労働者の働き控えが起こり、労働力が不足する問題が生じています。
106万円の壁への対策
年収106万円の壁への対策は、「キャリアアップ助成金」と「社会保険適用促進手当」です。
「キャリアアップ助成金」は、労働者の収入をアップさせるなどの取り組みをし、実質的に保険料の肩代わりをした企業に対し、労働者1人あたり最大50万円の支援を行う制度です。
出典:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージについて」
キャリアアップ助成金は、最大3年間支給されます。
また、企業は労働者が社会保険適用される場合の保険料を、「社会保険適用促進手当」として最大2年間支給できるようになります。
社会保険適用促進手当は、給与や賞与とは別に支給する手当で、社会保険料の算定対象になりません。
130万円の壁への対策
一時的な増収であれば扶養から外れる年収になっても、扶養内にとどまれる制度が創設されます。
労働時間の延長によって、年収が130万円を超えたとしても、一時的な増収であれば扶養から外れないようにする制度です。
ただし、連続して2年までの適用となります。
「年収の壁・支援強化パッケージ」によって年収の壁を気にせずに社会保険に加入することができれば、労働者は以下のメリットも受けられるようになります。
- 社会保険料を支払うため、厚生年金を受給できる
- 傷病手当金など受けられる社会保障が充実する
パート・アルバイトの人たちの労働環境がどのように変化するのか、今後の動向に注目が集まります。
- 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージについて」