日本学生支援機構が2022年4月に発表した「2020年度 学生生活調査結果」によると、大学生の49.6%が奨学金を利用しています。
奨学金の返済は、家計への負担にもつながり、将来のライフプランにも少なからず影響を及ぼすでしょう。
こうしたなか、社員の奨学金を企業が代わりに返済する「奨学金返還支援制度」を利用する企業が増加しています。
企業や社員にとって「奨学金返還支援制度」には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では、奨学金返還支援制度について解説します。
企業が奨学金を肩代わり。奨学金返還支援制度の導入企業が急増
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
奨学金返還支援制度とは
奨学金返還支援制度は、2つの支援方法があります。
- 企業が社員に返済額を支給
- 企業が日本学生支援機構に直接返済(2021年4月から)
2021年3月までは、社員に返済額を給与に上乗せして支給する方法で行われていました。
しかし、給与に上乗せすると「所得」として扱われるため、所得税や社会保険料の負担が増加するという問題が生じていました。
そのため、2021年4月から企業が機構に直接返済できるように、制度を変更しています。
奨学金返還支援制度は、原則として企業に就職した社員が対象です。
2023年7月末時点で972社が導入しており、今後1,000社を超える見通しです。
企業や社員へのメリット
奨学金返還支援制度を活用している企業にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。社員のメリットとあわせて確認していきましょう。
企業のメリット
企業のメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 人材を確保しやすい
- 企業イメージがアップする
- 法人税の控除を受けられる
企業が奨学金返還支援制度を導入していると、人材を確保しやすいメリットがあります。
奨学金の返済が負担になっている人であれば、返済を肩代わりしてくれる企業に就職を希望する可能性が高くなります。
企業のイメージアップにもつながるので、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。
社員のメリット
社員にとっては、奨学金を企業が肩代わりしてくれることによる「経済的な負担の軽減」が最大のメリットです。
また、2021年4月から、企業が奨学金を直接返済できるようになったことにより、所得税や初回保険料の負担が増加する課題も解消されています。
これらの負担増を心配することなく、制度を利用できる点もメリットといえるでしょう。
奨学金返還支援制度を利用している人は、2021年度は813人でしたが、2023年7月末時点で2,057人です。
奨学金返還支援制度は、企業や社員どちらにもさまざまなメリットがあります。
今後も導入する企業が増え、認知が進めば、利用者が増加するでしょう。