7月28日に日銀が実施した「金融政策決定会合」で、これまで0.5%程度としていた長期金利の変動幅の上限を、1%まで容認する方針が示されました。
金利操作を柔軟に運用する方針の決定に、市場で金利の上昇が起こっています。
7月31日の段階では、長期金利が一時0.605%まで上昇し、およそ9年ぶりの水準となりました。
この記事では、金利が変動する仕組みや、「住宅ローン」にどのような影響を及ぼすのか解説します。
住宅ローン金利が高くなる?長期金利が0.605%まで引き上げ。約9年ぶりの水準
【記事執筆】FP川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
金利が変動する仕組み
一般的に、長期金利の変動に影響しているのは「国債」の価格変動です。
長期金利は、10年国債の利回りを代表的な指標としており、市場で売買されて価格が変動すると、金利が変動します。
国債の価格が変動した場合の金利変動をまとめると、以下の通りです。
- 国債価格が上がる:長期金利が下がる
- 国債価格が下がる:長期金利が上がる
一般的に、国債は買われると価格が上がり、売られると価格は下がります。
これまでは、日銀が国債を買い取って市場金利を操作していましたが、今後は市場の動向を見ながら柔軟に介入する方針です。
今回、日銀が容認した内容を受けて「住宅ローン」に影響が生じるといわれています。
長期金利の変動によって、住宅ローンにどのような影響が生じるのか確認してみましょう。
住宅ローンへの影響は?
住宅ローンの金利は「固定金利」と「変動金利」の2つに分かれますが、国債の長期金利に影響するのは「固定金利」です。
そのため、長期金利が引き上げられると、住宅ローンの固定金利も上昇する可能性が高くなります。
8月1日時点の各銀行の10年固定ローンの金利をみると、各行とも金利が引き上げられています。
- 三菱UFJ銀行:年0.78%(0.09ポイント引き上げ)
- 三井住友銀行:年0.89%(0.1ポイント引き上げ)
- みずほ銀行:年1.2%(0.05ポイント引き上げ)
今後も長期金利が上がれば、住宅ローンの固定金利は上昇を続ける可能性があります。
一方、住宅ローンの変動金利は、短期金利と連動するため金利に変動はありませんでした。
しかし、固定金利が引き上げられたあとは、変動金利が上昇する可能性があります。
政府は「こども未来戦略方針」の一環として、子育て世帯の住宅購入を支援するために、フラット35の金利優遇を決めています。
ベースとなる住宅ローン金利が上昇すると、政策の効果が得られない可能性も考えられます。
詳しくは、こちらの記事「【フラット35】金利優遇へ。子育て世帯に向けて2024年度までに実施予定」を参考にしてください。
住宅ローンの金利が変動すると、新たに住宅を購入する人だけでなく、過去に変動金利で購入した人にも影響が出る可能性があります。
金利の動きに、引き続き注目していきましょう。