厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によると、2022年8月末現在で、要介護と認定されている人は全国で696万9000人います。
介護を必要とする人が今後も増えると予測されている一方で、介護職員の不足が叫ばれています。
介護職員の平均年収や、介護業界の実態を解説します。
介護従事者、平均年収367万円という現実。10月よりベースアップ支援も開始
介護職の平均年収は400万円に満たない
株式会社ベター・プレイスは、20代から60代の介護職を対象に「仕事に対するやりがい及び、お金に関する意識に対する実態調査」を実施しました。
出典:ベター・プレイス調べ 「仕事に対するやりがい及び、お金に関する意識に対する実態調査」(以下同)
調査の結果、「仕事にやりがいを感じている」と回答した人が88%にのぼりました。
一方で、96%の介護業界従事者が、将来のお金について不安を「感じている」「やや感じている」と回答しています。
また、将来不安を感じている理由については、33%の人が「現在の給料では貯蓄ができないから」と回答しています。
さらに、「物価の値上げが激しく、今後もこの状況が続くと考えると生活に不安を感じるから」と回答した人も52%いました。
貯蓄ができない収入状況に加えて、家計が圧迫されている状況が、さらに将来の不安を増大させているといえるでしょう。
実際に、今の仕事を長く続けるために必要だと思う条件として「賃金が上がっていくこと(暮らしに困らないよう)」と回答している人が、全体の78%にのぼりました。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、介護事業の平均給与は25万4800円でした。
賞与と合わせても、年収は367万6000円です。
やりがいのある仕事と感じている人が9割弱いる中で、事業所の63.0%が人材不足に陥っているほど、介護業界は人手不足が深刻です。
十分な賃金が支払われていないことが、介護業界の人材不足の原因の一つになっているといえるでしょう。
介護職の賃上げ政策
2022年2月から、介護職員の改善を図るために「介護職員処遇改善支援補助金」がスタートしました。
介護職員の収入を「3%(9,000円)」程度引き上げるために国から補助金を支給する制度です。
10月からは、「介護職員処遇改善支援補助金」を引き継ぐ形で、介護報酬の臨時改定が行われ、「介護職員等ベースアップ等支援加算」が新設されています。(サービス区分と加算率は下表の通り)
出典:厚生労働省「令和4年度介護報酬改定について」
高齢化が進む日本において、需要が高まるばかりの介護業界。
将来のお金の不安を抱えている人が96%という実態の中で、金銭的支援にどの程度効果が期待できるのか、注目が集まります。
- ベター・プレイス調べ「仕事に対するやりがい及び、お金に関する意識に対する実態調査」
- 厚生労働省「令和4年度介護報酬改定について」