2022年から金融教育が始まるなど、学校現場でもお金の勉強をしようという動きが活発になっています。お金の勉強は生きるうえで不可欠である以上、早めに始めるに越したことはありません。
この記事では、子どもがお金の勉強をする際に気を付けるべきことや、具体的な方法について解説します。「うちの子にもお金の勉強は必要なの?」と思っている人は、ぜひ参考にしてください。
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【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩
一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。
2022年から金融教育が始まるなど、学校現場でもお金の勉強をしようという動きが活発になっています。お金の勉強は生きるうえで不可欠である以上、早めに始めるに越したことはありません。
この記事では、子どもがお金の勉強をする際に気を付けるべきことや、具体的な方法について解説します。「うちの子にもお金の勉強は必要なの?」と思っている人は、ぜひ参考にしてください。
お金の勉強は、小学生から積極的に取り組むべきことの1つです。
「小学生だとまだ早いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、小学校家庭科の学習指導要領には、「物や金銭の使い方と買物」という項目が盛り込まれています。
遅くとも、お小遣いを与えるタイミングではお金の教育を始めておきたいです。
子どものお金に対する興味・関心、子どもが実際にお金に触れるタイミングによって、お金の教育を始める時期は変わりますが、小さい頃からお金の使い方で失敗を経験しながら、お金との付き合い方を学ぶのが良いでしょう。
また、日本はほかの先進国と比較して、金融リテラシーが低いという問題を抱えています。この状況を打開すべく、金融庁や日本証券業協会、全国銀行協会などの業界団体も、小学生向けにお金の知識を学べる機会や、教材の提供に取り組んでいます。
金融リテラシーとは、お金に関する知識や情報への理解、判断力のことを言います。
金融広報中央委員会の調査*によると、同委員会が設定した金融知識・判断力に関する問題に対して正答率が高い人(高リテラシー層)は、資産運用のトラブルを回避しやすい特徴があるとしています。
以下は正答率が高い人の行動特性・考え方と、その影響・結果の傾向です。
出典:金融広報中央委員会|「金融リテラシー調査 2019年」の結果|(図表33)正答率が高い人の特徴を元に作成
このように、お金にまつわるトラブルを回避するためには金融リテラシーを養うことが重要です。
金融リテラシーというとやや身構えるかもしれませんが、まずは家庭でできる範囲のお金の教育を始めてみてはどうでしょうか。
また、同調査によると、「学校等で金融教育を受けた人の割合」は、高リテラシー層が11.9%で、全サンプルの平均が7.2%という結果が出ています。
つまり、何らかの金融教育を受けていると将来的に金融リテラシーが備わりやすく、お金をうまく使えるようになると言えます。
お金をうまく使うには金融教育が重要と解説しましたが、同調査によると家庭で金融教育を受けた人は約20%という結果が出ています。
また、学校等で金融教育を受けた人は約7%と、さらに少ない結果となっています。
出典:金融広報中央委員会|「金融リテラシー調査 2019年」の結果|(図表52)金融教育の経験(家庭)/(図表51)金融教育の経験(学校等)
こういった結果を見ると、金融教育を学校だけに任せてしまっていては、子どもの金融リテラシーを養うことは難しいと言えるでしょう。
小学生がお金の勉強をすべき理由は、以下の通りです。
お金の勉強をするのは、第一にお金の価値や大切さを理解するためです。お金を得るためには、通常、対価としての労働が必要になります。子どものうちから「労働の対価としてお金を受け取れる」という仕組みを知っておけば、「何もしなくてもお金がもらえる」と誤解せずに済むでしょう。
働いてお金を得てくれる家族への感謝の気持ちも芽生えるため、親子間のコミュニケーションにも役立つはずです。
金銭感覚を身につけるためにも、お金の勉強をすることは有効です。自分の欲求をコントロールし、考えながら使う習慣も身につきます。
過度に禁欲的になる必要はありませんが、お金は有限である以上、優先順位をつけて使わなくてはなりません。正しく優先順位を決めるためには、正しい金銭感覚を身につけることが重要です。
価値のあるものは何か、何にお金をかけるべきかの勘所をお金の勉強を通じて考えられるようにしておきましょう。子どものうちに正しい金銭感覚を身につけておけば、大人になってから金銭トラブルに巻き込まれるリスクを軽減できます。
お金の勉強は幅が広く、小学生にはやや難しい内容も含まれています。まずは、最低限理解しておくべきこととして、以下の知識を学びましょう。
お金の役割を学ぶことは、「そもそもお金とは何か」を知るうえで重要です。
お金の役割は、以下の3つです。
例えば、スーパーでお菓子を買う場合、値段を見てそれに応じたお金を支払わなければなりません。この場合、お金は価値の尺度であり、交換(決済)手段として使われます。
硬貨や紙幣の種類を教えることも、立派なお金の勉強です。
特に昨今、電子マネーやクレジットカードなど、キャッシュレスの決済手段が幅広く用いられるようになりました。そのため、小さい子どもの場合、「現金を見たことも触ったこともない」可能性があります。
そのため、硬貨や紙幣の種類を知っておくことが必要です。知識がないと、金額の大小や総額を求めることができず、ゆくゆく困る場面が出てくるかもしれません。本物の硬貨や紙幣を使うことに抵抗があるなら、おもちゃの硬貨や紙幣から始めてみましょう。
買い物をする際の支払い(決済)方法を教えることも重要です。さまざまな支払方法の基本的な使い方と仕組みを教えましょう。
例えば、以下の流れで話をし、実際に子どもに使わせながら学んでいくのも1つの方法です。
特に、キャッシュレス決済は、現金のやり取りをせずに簡単な操作で支払ができます。そのため、「お金が減らない」と誤解する子どももいるかもしれません。しかし、後払いや先払いなどを行う必要があるため、最終的にはお金が減ることを伝えておきましょう。
お金の稼ぎ方を教えることは、「お金は自動的に入ってくるものではない」と認識し、有効な使い方を考えるうえで重要です。
お金を稼ぐ方法の例は、以下の通りです。
フリーマーケットなら、子どもでも保護者のサポートのもと挑戦できます。子どもだけで出店できるフリーマーケットを運営しているNPOもあるので、参加してみてもよいでしょう。
為替レートと円高・円安の概念についても学ぶ必要があります。これらの概念が理解できると、ものの値段や価値は、日本国内だけではなく、海外からも影響を受けていることがわかるようになるでしょう。
為替レートとは、簡単にいうと「円をほかの国の通貨(例:米ドル)に交換する場合の割合」のことです。「1ドル=120円」などと表記します。そこから例えば、「1ドル=110円」となった場合は円のドルに対する価値が上がったため円高、「1ドル=130円」となった場合は円のドルに対する価値が下がったため円安となる仕組みです。
同じ1ドルのお菓子を買う場合でも、「1ドル=110円」であれば110円で買えますが、「1ドル=130円」になれば130円出さないと買えません。実際に勉強するときは、このようにわかりやすい例を用いつつ、子どもの理解度を確かめながら話をしてみてください。
小学生がお金の勉強をする際は、小学生向けに作られている教材を使うのがおすすめです。ここでは、教材を使うことを前提にした以下の勉強法を紹介します。
王道ともいえるのが、本やドリルなどの教材で学ぶ方法です。
この方法のメリットは、比較的安価で始められるうえに、選択肢も多いことです。お金の勉強の重要性が近年クローズアップされているためか、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家が執筆・監修した本やドリルなどの教材が広く出回っています。
一方、教材の選び方を誤ると、子どもが関心を持ってくれない可能性がある点はデメリットです。子どもと一緒に選び、関心を持ってくれそうかチェックしてみましょう。
うんこお金ドリル(生活編)
子ども向けの人気ドリルシリーズ『うんこドリル』と金融庁が共同で作成したドリル。お金の役割や経済の仕組みといった基本的な知識をスライドとドリルで学べる
テキストベースのWebページで学ぶ方法も広く用いられています。この方法も、本やドリルの場合と同様、幅広くコンテンツが出回っているため、子どもに合ったものを選べるのがメリットです。
ただし、子どもに合わないページを選んでしまうリスクもあります。また、Webページの情報が古かったり、間違っていたりした場合は、誤った知識を身につけてしまいかねない点にも注意しなければなりません。「いつ、誰が作ったものか」を必ず確認してください。
お金の話あれこれ
日本銀行の公式Webサイトにて公開しているコンテンツ。お金の豆知識やお札に登場した人物、動物などについて詳しく解説されている
知るぽると
知るぽるとは金融広報中央委員会が運営しているお金に関する情報サイトです。
未就学児や小学生を対象にした「キッズページ」では、お金をテーマにしたアニメやゲームが公開されています。
にちぎん☆キッズ
日本銀行が運営するサイトで、小学校高学年を対象にした漫画「にちぎん☆キッズ―マンガでたのしく学ぼう、お金のイロイロ!」をダウンロードすることができます。
「お金ってなに?」「お金のながれ」「お金のかち(物価の安定)」の3つのテーマで構成されています。
アプリでも、子ども向けのお金の勉強ができるものがたくさんあります。動画やゲームなど楽しいコンテンツを通じて勉強ができるため、子どもが飽きにくいのがメリットです。
しかし、テキストベースのWebページと同様、情報が古かったり、誤っていたりするリスクも考えられます。「いつ、誰が作成したものか」確認するとともに、情報が古い場合は最新の情報を一緒に調べるなど、フォローを行うことが大切です。
カネールのKIN★YOUランド
金融庁がWebサイト上で公開。タマゴはこび、金融カルタなどのクイズやゲームで楽しみながら学べる
YouTubeなどの動画投稿サイトで公開されている動画を使ってお金の勉強をするのも1つの方法です。無料で見られるうえ、選択肢が多いので、好みや考え方にあったコンテンツを選ぶことができます。また、お金をテーマにした絵本の読み聞かせなど、小学生はもちろん、幼稚園児でも利用できるコンテンツもあるのでチェックしてみてください。
ただし、動画を見ただけで勉強した気になってしまい、実際にはあまり知識が身につかないケースもあります。動画を見たあと、その内容についてどう考えたか親子で話し合うとよいでしょう。
お金について学べるボードゲームやカードゲームもたくさん出回っています。「モノポリー」「人生ゲーム」といった有名なゲームのほか、FPなどの専門家が作成・監修して独自で販売しているものなど、選択肢の幅も広いです。
子どもと楽しみながら学べるのがメリットですが、ルールを理解していないと楽しめない点には注意してください。
また、ゲームを楽しむだけでなく、そこから何を学ぶかが重要です。子どもから感想を聞き、日常生活で取り入られる工夫がないか親子で話し合ってみることをおすすめします。
さまざまな方法でお金の勉強をすることはできますが、日常生活の実践を通じて学ぶのも非常に有益です。「お金について考える」ことを実体験できるため、知識が定着しやすくなります。
日常生活を通じてお金について学ばせるために、親が意識的にできることの例は以下の通りです。
小学生のうちからお金の勉強をすることは重要ですが、やり方を間違えると逆効果です。「お金の勉強なんてつまらない、意味がない」とネガティブな印象を持たないためにも、以下の注意点を守りましょう。
お金の勉強をする際は、理解度に合わせてゆっくりと教育すること心がけてください。年齢に合わせて教育するのが望ましいですが、理解度には個人差があります。すぐに理解して次に進める場合もあれば、なかなか難しい場合もあるかもしれません。
理解していないのに先に進むと子どもが混乱してしまい、お金の勉強自体に消極的になるリスクがあります。教えるたびに「どこかわからないところある?」「どう思った?」など、質問しながら理解度やリアクションをチェックしましょう。
自分で考えてお金を使うのも実践的な勉強としておすすめですが、単にお小遣いを与えるだけでは意味がありません。子どもによっては、「何もしなくてもお小遣いがもらえる」と誤解をする恐れがあります。
こうした誤解を防ぐためには、お手伝いによる報酬制・給料制にするなど、工夫してみるのがおすすめです。
例えば、「お風呂掃除をしたら1回50円」など、手伝った内容によって金額を決め、それに応じてお小遣いを与えるとよいでしょう。目に見えるメリットがあるため、子どものやる気を促すだけでなく、「お金を稼ぐためには、人に価値を提供することが必要」という事実を体験とともに学べます。
子ども自身が自分の頭で考えて買い物をしようとするときは、その意思を尊重することが大切です。
例えば、「1,000円あげるから好きなものを買っていいよ」と伝え、実際に1,000円をあげたとしましょう。すると、子どもは「どう使えば納得できるか」を考えながら使おうとするはずです。
ここで「そんなくだらないもの買っちゃダメ」「こっちにしたら?」など、子どもの意思を否定するのは禁物です。「親がいうことに従っていればよい」と、自分で考えてお金を使うことを放棄しかねません。
迷ったり、困ったりしているようでも、「お母さんはこっちの方が好きだけど?」「同じようなものが家にあったかもね」など、子どもの意思を阻害しない程度のアドバイスにとどめることをおすすめします。「失敗も学習のうち」というくらいの気持ちで、子どもの意思を最優先しましょう。
お金の知識は生きていくうえで重要なので、早いうちから勉強を始めるのは有意義でしょう。しかし、それ以上に重要なのは「子どもに合った方法で、無理なく楽しく」取り組むことです。「お金の勉強はつまらない」という印象を持ってしまうと、挽回するのは難しくなります。
子どもの個性に合った方法を見つけて、楽しみながら取り組むのがコツといえます。大人にとっても、良い学び直しの機会になるかもしれません。
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