残価設定ローンとは?メリット・デメリットやマイカーローンとの違いをシミュレーション

執筆者:マネーFix 編集部

【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩

一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。

自動車の購入時に、「残価設定ローン」を提案されるケースがあります。残価設定ローンを利用すると、返済額が抑えられる可能性がある一方、車の乗り方によっては損をする人もいるため、注意が必要です。

この記事では、今後自動車を購入・乗り換える可能性のある人はぜひ知っておきたい残価設定ローンについて、仕組みやメリット・デメリット、通常のマイカーローンとの違いなどを解説します。

残価設定ローンとは?

マイカーローンには複数の種類があります。残価設定ローンとそれ以外のローンの違いは、下表の通りです。

残価設定ローン ディーラーローン 自社ローン 銀行マイカーローン
概要 ディーラーローンの一種 ディーラー提携のローン会社が提供するローン 自動車販売会社が独自に提供するローン 銀行などの金融機関が提供するカーローン
審査基準 信用情報 信用情報 独自基準 信用情報
審査難易度 比較的通りやすい 比較的通りやすい 通りやすい 厳しい
金利 ディーラーローンよりもやや低い やや高い やや高い 低い

残価設定ローンとは、車両価格から残価(残存価格)を差し引いた金額に対して組まれるローンで、「残価設定型クレジット」とも呼ばれています。

残価とは、将来の下取り価格のことであり、これを差し引くため月々の返済額が安くなる仕組みです。

残価設定ローンはディーラーローンの一種なので、審査では信用情報が照会されます。ただし、通常のローンよりも借入金額が少なくなり、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が抑えられるため、通常のディーラーローンよりも審査では有利です。

残価設定ローンのメリット

残価設定ローンのメリットは、以下の2点です。

  • 数年で車を乗り換えることができる
  • 月々の支払額を減らすことができる

数年で車を乗り換えることができる

残価設定ローンの契約期間終了後は、新たな残価設定ローンを組んで、別の車に乗り換えることができます。

残価設定ローンの利用者は、3~5年ごとに乗り換える傾向があります。乗り換えに際しては、車に問題がなければ、当初設定した残価での下取りとなり、追加費用もかかりません。

なお、残価設定ローンの契約期間終了後は、乗り換え以外にも、以下のような選択肢があります。

車の返却

免許返納などの理由で乗り換えをしない人は、ディーラーに車を返却し、残価精算を行います。

同じ車に乗り続ける

車に愛着が湧いた場合などは、契約期間終了後に残価を支払うことで、車に乗り続けることが可能です。ただし、残価の支払いにはまとまった資金が必要となります。

月々の支払額を減らすことができる

契約期間によっても変わるものの、残価の金額は新車価格の30~50%です。この残価を差し引いた金額でローンが組まれるため、一般的なカーローンよりも月々の支払額を減らすことが可能です。

残価設定ローンのデメリット

残価設定ローンには、以下のようなデメリットもあります。

  • 所有権を持つことができない
  • 銀行マイカーローンと比べると金利は高め
  • 契約途中の乗り換えは同じメーカーの車になる

所有権を持つことができない

残価設定ローンを組んだ場合、車の所有権はディーラーにあるケースが一般的です。

契約期間中は車の売却などが勝手にできず、契約期間終了後は、残価を支払わない限り自分の車にはならないので注意が必要です。

銀行マイカーローンと比べると金利は高め

残価設定ローンは、3~5%程度が金利相場といわれており、銀行マイカーローンと比較するとやや高めです。

ただし、短期での乗り換えであれば、支払総額にそこまで大きな影響を与えるわけではありません。

契約途中の乗り換えは同じメーカーの車になる

残価設定ローンは、契約途中に車の乗り換えが可能なケースもありますが、次に乗る車に残債が上乗せされます。

このようなケースでは、乗り換え可能な車が「同じメーカーの車のみ」となる点に注意してください。

残価設定ローンと通常のディーラーローンを比較

ここからは実際に、残価設定ローンと通常のディーラーローンをシミュレーションして比較します。

【条件】

元金:300万円

頭金:50万円

金利:4.5%

支払い期間(回数):5年(60回)

残価率:「元金-頭金」に対して50%、ボーナス払いなしで計算

残価設定ローン ディーラーローン
初回の支払額 28,414円 46,608円
毎月の支払額 28,414円 46,608円
支払総額 1,676,426円 2,796,480円

通常のディーラーローンと比較して残価設定ローンの方が、毎月の支払額を2万円弱抑えられることがわかります。

残価設定ローンがおすすめの人はどんな人?

残価設定ローンは、以下に当てはまる人におすすめです。

  • 月々の返済額を抑えたい人
  • 頭金を支払うのが難しい人
  • 所有権が自分になくても困らない人
  • 3~5年ごとに新車に乗り換えたい人
  • 車をカスタマイズしない人
  • 走行距離があまり長くならない人
  • 車を傷つけたり、事故を起こしたりする心配が少ない人

契約期間終了後は、新たな残価設定ローンを組めるので、数年で車を乗り換えたい人に向いています。

ただし、車を返却する前提なので、走行距離や車のカスタマイズなどに制限があります。そのため、長い走行距離を走ったり、車を好きにカスタマイズしたりしたい人は残価設定ローンに向きません。

まとめ

残価設定ローンはディーラーローンの一種で、残価(将来の下取り価格)を差し引いた金額に対して組まれるローンです。月々の返済額を抑えて車を購入できる点が最大のメリットです。

残価設定ローンと通常のディーラーローン、どちらがおすすめかは車の乗り方で変わります。残価設定ローンは、数年で車を乗り換えたい人に向いています。車の返却が前提なので、同じ車に長く乗りたいなら、通常のディーラーローンを利用しましょう。

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