フラット35とは?銀行ローンとの違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

執筆者:マネーFix 編集部

【監修】株式会社RKコンサルティング河合 克浩

一般企業、外資系金融機関を経て、現在はファイナンシャルプランナー(FP)として年間150件超のお金の相談に対応。難しく感じる経済やお金の話をわかりやすく説明することに定評がある。夢を実現するため相談者に寄り添い、人生が豊かになるサポートを心がけている。

フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している長期固定金利の住宅ローンのことです。フラット35で住宅ローンを組む際、どのような金融機関を選択するべきか迷うかもしれません。

この記事では、フラット35とほかのローンとの違いや、メリット・デメリット、選ぶ際のポイントなどを紹介します。

フラット35とは?他の住宅ローンとどう違う?

フラット35とは、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携・提供している住宅ローンのことです。

フラット35の特徴

フラット35の特徴は、以下の通りです。

  • 全期間固定金利
  • 保証人が不要
  • 保証料がかからない
  • 繰り上げ返済手数料がかからない

最大の特徴は、返済期間中の金利が全期間固定である点です。借入時点で金利と返済額が確定するため、市中金利の影響を受けることがありません。

また、借入の際には保証人が不要で、繰り上げ返済の手数料もかかりません。

ほかの住宅ローンとの違い

フラット35とほかの住宅ローンの違いは以下の通りです。

  • 保証料がかからない
  • 団体信用生命保険(団信)への加入が任意

一般の住宅ローンの場合、死亡などの理由で、住宅ローンの返済ができなくなった場合のために、保証会社が残債の支払いをします。一方、フラット35では、住宅ローン債権を証券化し、投資家から資金を調達します。

返済できなくなってしまった場合のリスクは投資家が負うことになるため、保証会社は利用しません。そのため、フラット35では保証会社に支払う保証料が不要となります。

さらに、フラット35では団信への加入が任意です。一般的な住宅ローンでは、団信への加入が必須です。死亡などの理由で返済が不能になった場合、残された家族は団信を使って残債を返済します。フラット35で団信に加入していない場合、住宅の相続人に債務が残ります。

フラット35のメリット

フラット35のメリットは以下の通りです。

  • 金利が一定で返済計画が立てやすい
  • 前年の所得が審査対象のため自営業でも利用しやすい
  • 保証料・繰り上げ手数料が無料
  • 高性能住宅の金利が低くなる
  • 団信加入が任意

金利が一定で返済計画が立てやすい

フラット35は全期間固定金利となるため、返済期間中に金利が変動することはありません。市場金利の変動によって月々の返済額が変わることがなく返済計画が立てやすくなります。

金利の影響を受けず、中長期的に安定して返済をしたい人にとって大きなメリットといえるでしょう。

前年の所得が審査対象のため自営業でも利用しやすい

フラット35の所得の審査では「前年の所得」が対象となります。たとえば、事業をはじめたばかりの自営業者の場合、審査対象は事業を開始する前年の所得になります。

会社員から自営業者になった人にとってはメリットといえるでしょう。

保証料・繰り上げ手数料が無料

フラット35では、保証料や繰り上げの手数料が無料です。保証料は、住宅ローンの借入時に保証会社に支払う手数料のことです。繰り上げ手数料は、繰り上げ返済をする際にかかる手数料のことです。

フラット35では保証料・繰り上げ手数料が無料のため、通常の住宅ローンを組む際にかかるコストを抑えることが可能です。少しでもコストを抑えて住宅ローンを組みたい人にとって大きなメリットです。

高性能住宅の金利が低くなる

一定の条件を満たした高性能住宅の場合、通常よりも金利が低い「フラット35S」を利用することができます。フラット35SにはZEN、Aプラン、Bプランがあり、金利の引き下げ期間と引き下げ幅は以下の通りです。

プラン 金利引き下げ期間 金利引き下げ幅
ZEN 当初5年 0.5%
6年目~10年目 0.25%
Aプラン 当初10年 0.25%
Bプラン 当初5年 0.25%

(2023年3月1日現在)

フラット35Sの利用にあたっては、省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性の4項目の中から一定の要件を満たす必要があります。

団信加入が任意

一般的に、住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険(団信)に加入します。フラット35では団信への加入が任意です。死亡などの理由で、万が一返済ができなくなってしまった場合、住宅を相続した人が返済を行います。

なお、フラット35で団信加入をしない場合、借入額の金利が低くなります。

フラット35のデメリット

フラット35のデメリットは以下の通りです。

  • 市場金利が下がっても支払額が変わらない
  • 住宅が基準をクリアしていないと借入できない
  • 自己資金が少ないと金利が高くなる
  • こまめな繰り上げ返済ができない

市場金利が下がっても支払額が変わらない

フラット35は全期間固定金利です。市場金利の上昇に影響されない点は大きなメリットですが、市場金利が下がっても適用金利は下がりません。

市場金利の低下による返済額の減額という恩恵を受けられない点は、フラット35のデメリットといえるでしょう。

住宅が基準をクリアしていないと借入できない

フラット35はどんな住宅購入にも利用できるわけではありません。購入する住宅に対して、事前に物件の審査が行われます。購入住宅が審査基準を下回ると、フラット35の利用ができません。

主な審査基準は以下の通りです。

  • 適合証明書の有無
  • 建築年数
  • 延床面積
  • 火災保険の有無

自己資金が少ないと金利が高くなる

フラット35では、頭金が住宅購入価格の1割に満たない場合、金利が高く設定されます。自己資金が少ない人にとっては、金利が高くなるのでデメリットとなります。

こまめな繰り上げ返済ができない

金融機関の窓口で繰上げ返済の手続きを行う場合、返済できる金額は100万円以上です。こまめな繰上げ返済ができない点は、フラット35のデメリットといえます。

ただし、住宅金融支援機構のWebサイト「住・MyNote」から申し込みをすることで、最低10万円からの繰り上げ返済が可能です。

フラット35を選ぶポイント

フラット35を選ぶポイントは、以下の通りです。

  • 金利の低さを優先するなら保証型を選ぶ
  • 諸費用を含めた総支払額を確認する
  • 特典・サービスで選ぶ
  • 注文住宅の場合はつなぎ融資に対応しているか確認する

金利の低さを優先するなら保証型を選ぶ

フラット35には買取型・保証型の2種類があります。

買取型が住宅支援機構の定めた基準値の中で金利が決定されますが、保証型は各取り扱い金融機関によって金利が定められます。一般的には買取型よりも保証型の方が金利が低く設定されています。

金利の低さを優先したいなら、保証型を選ぶとよいでしょう。ただし、保証型を取り扱っている金融機関は限られています

諸費用を含めた総支払額を確認する

フラット35を選ぶ際は、融資に対する返済額だけでなく、諸費用を合計した総支払額まで確認しておくことが重要です。

たとえば、フラット35を利用して3000万円借りる場合の諸費用内訳は、おおむね下表の通りです。

諸費用内訳 かかる金額
融資事務手数料 3万~45万円
火災保険料 5万~40万円
印紙税 2万~6万円
登録免許税 3万~12万円
司法書士への支払い 6万円程度
物件検査手数料 5万円程度
合計 20万~115万円

ただし、これら諸費用は利用する金融機関によって異なるため、契約時に諸費用の内訳と融資額をしっかりと確認し、総支払額を算出してください。

フラット35の諸費用は、借入金額の1~4%程度を想定しておくとよいでしょう。

特典・サービスで選ぶ

金融機関によって、特典やサービスがある場合があります。

たとえば、楽天銀行でフラット35を契約する場合、返済口座を楽天銀行に指定することで特典として金利優遇を受けることができます。

フラット35契約時に利用できる特典は金融機関ごとにさまざまであるため、事前にどんな特典があるのか確認しましょう。

注文住宅の場合はつなぎ融資に対応しているか確認する

注文住宅購入の場合、土地代や、契約金、着手金が事前に発生します。自己資金に余裕がない場合は、「つなぎ融資」に対応している銀行を選ぶとよいでしょう。

つなぎ融資とは、住宅ローンが実行されるまでの間に必要になる資金を一時的に融資するものです。つなぎ融資を活用することで住宅ローン以外の諸費用を賄うことが可能です。

フラット35の金利比較

フラット35の中にも、金融機関や条件によってさまざまな商品があります。ここでは、フラット35の種類別に金利を比較します。

フラット35とフラット35Sの金利比較

一定の住宅性を満たすことで、フラット35よりも金利が低い、フラット35Sを利用することができます。たとえば、りそな銀行の住宅ローンの場合、フラット35とフラット35Sの金利は以下の通りです。

  • 借入期間:35年
  • 借入金額の比率:9割以内
  • 団体信用生命保険:有
商品名 フラット35 フラット35S(Aプラン) フラット35S(Bプラン)
金利 全期間:1.960% 当初10年:1.710%
11年目以降:19.60%
当初5年:1.710%
6年目以降:1.960%
住宅性能 - 免震住宅、認定低炭素住宅等 省エネ、耐震性などが優れた住宅等

(2023年3月1日現在)

フラット35Sを利用することで、はじめの5~10年は金利が2.5%引き下げられます。

さらに、太陽光発電システムなどを備えたZEH住宅の場合、当初5年金利が5.0%引き下げられる金融機関もあります。

プランは金融機関によって異なるので、Webサイトなどでよく確認をするようにしましょう。

買取型と保証型の金利比較

フラット35には、買取型と保証型の2種類があります。住宅ローン債権を証券化し、投資家から資金を調達するフラット35は「買取型」に分類されます。一方、保証型は、利用者がローン返済できなくなった場合、住宅支援機構が金融機関に保険金を支払います。

保証型を取り扱っている金融機関は数少ないですが、買取型よりも低い金利が設定されています。たとえば、クレディ・セゾンの住宅ローンの場合、金利の違いは以下の通りです。

  • 借入期間:35年
  • 借入金額の比率:9割以内
  • 団体信用生命保険:有
商品名 買取型 保証型
金利 2.26% 1.91%

(2023年3月1日現在)

融資率による金利比較

頭金の金額によって、適用金利が変わる商品もあります。融資率が低いほど金利は低くなります。たとえば、ARUHIの保証型住宅ローン、スーパーフラットの場合、金利の違いは以下の通りです。

商品名 融資率 金利:当初10年 金利:11年目以降
スーパーフラット6 60%以内 1.070% 1.570%
スーパーフラット7 70%以内 1.080% 1.580%
スーパーフラット8 80%以内 1.090% 1.590%
スーパーフラット9 90%以内 1.170% 1.670%

(2023年3月1日現在)

まとめ

フラット35には、全期間固定金利、保証料・繰り上げ手数料がかからないなどの特徴があります。この記事ではメリットやデメリットを解説しましたが、借りる人の状況によってはフラット35が最適の場合もあるでしょう。

一方、フラット35以外の住宅ローンを利用するほうが、得られるメリットが大きい場合もあります。各種住宅ローンを比較し、幅広く検討することをおすすめします。

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