自動車を所有していると必ず付いて回る車検費用や点検費用は、自動車の維持費のなかでかなり高い費用です。
「これまで何気なく払ってきたけれど実際の相場はいくらなの?」「安く済ませられるならそれに越したことはない」などと考える方も多いでしょう。
そこで今回は、自動車の車検費用や点検費用の平均額と、安く済ませる方法についてご紹介をしていきます。
安く済ませる際のデメリットや注意点なども併せて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
車検費用の相場はどれくらい?自動車の点検費用を安くする方法!

車検と法定点検の違い
自動車が好きだったり、長年乗っていたりする人はご存知かもしれませんが、ふだん乗らない人や購入したばかりの人の中には、「車検」や「法定点検」は何をするものなのか詳しく分からないという人もいらっしゃると思います。そこで、まずは「車検」と「法定点検」とは何か、それぞれについて確認をしていきましょう。
車検とは
車検とは正式名称で「自動車検査登録制度」と言い、国で定められている保安基準に自動車が適合しているかどうかを確認するために定期的に行う検査や点検のことを指します。
ふだん何気なく乗っている自動車も消耗品ですので、気付かないうちに部品が損傷していることがあります。例えば、自動車が停止するためにはブレーキを踏む必要がありますが、その部品が損傷していれば走行中に壊れ、停止することができない可能性があります。また、命を守るエアバッグが不具合により開かなくて大けがを負ってしまうということもあり得るでしょう。このような事故を未然に防ぐために、検査や点検は定期的に実施しなければならないのです。
■車検の有効期限
車検は車種によって有効期間が異なりますが、一般的な自家用乗用車や軽自動車(3、5、7ナンバー)の有効期間は次のようになります。
回数 | 有効期間 |
---|---|
初回 | 3年 |
2回目以降 | 2年 |
出典:国土交通省|自動車の検査・登録ガイド
購入したばかりの新車の車検は、購入してから3年後、その後2回目以降は2年という期間で実施します。これは「新車は消耗していないので次の車検までの期間が長く、それ以降は消耗していくので期間が短くなる」と覚えておくと良いでしょう。
■車検にかかる費用
車検にかかる費用には次のようなものがあります。
費用 | 内訳 |
---|---|
法定費用 | 自動車重量税・自賠責保険・検査手数料(印紙代)などの費用 |
車検基本料 | 点検費用・事務手数料などの費用 |
交換部品代 | 交換が必要な部品があった際に発生する費用 |
その他費用 | 手数料・代車費用などの諸費用 |
車検の費用はこのように様々な内訳から成り立っています。また、上記の一覧からもわかるように、車検は自動車の検査だけではなく、税金を支払う意味合いもあるのです。法定費用は国によって定められた金額ですので安くなることはありませんが、点検費用や事務手数料などは業者の取り分によって変わるため、全体の費用が変動することになります。
車検費用を安くする方法については後述しますので、そちらを確認してください。
法定点検とは
続いて、法定点検について確認していきましょう。法定点検とは、自動車に故障や不備がなく、快適に運転できるかどうかを点検する作業であり、道路運送車両法第48条に実施することが義務として規定されています。期間は車検と異なり、「12ヶ月点検」「24ヶ月点検」があります。
「法定」という言葉が付くことで「受けないと車を運転できなくなる」という印象を持たれがちですが、法定点検には受けないことに対しての罰則規定などはないため、運転できなくなることはありません。なぜなら、法定点検は「自動車が問題なく快適に走行できるか」を確認するための点検だからです。
例えば、車検では排気ガスの検査は行いますが、エアクリーナーエレメント(フィルター)の検査は行いません。このエアクリーナーエレメントが詰まっていると、充分に空気が吸い込めず燃費が悪くなる可能性があります。つまり、自動車が本来の性能を発揮できず、ガソリン代がかさむことが起こり得るということです。このように、自動車が走行するうえでの危険性に直結しない点検ですので、受けないことに対する罰則規定がないと考えられるのではないでしょうか。
また、多くの場合「受けない」というのは「12ヶ月点検」のことを指し、一般的に「24ヶ月点検」は車検と同時に行います。したがって、所有している自動車の状態次第で12ヶ月点検を受けるか否かを判断して、その費用を浮かすことができるとも言えるでしょう。
■法定点検を受ける4つのメリット
「罰則がないなら受けたくない」と思われがちですが、法定点検を受けることで得られるメリットもあります。ここではそのメリットについて確認しておきましょう。
■車検にはない項目の検査を受けられる
法定点検では車検にはない項目も点検対象としています。そのため、前述したように整備不足による燃費性能の低下といった、不利益を回避することができるのです。
■メーカー保証が受けられる
12ヶ月点検を受けている場合、所有者に重大な過失さえなければ、点検項目に該当する箇所の不具合があった際にメーカー保証を受けることができます。
■査定評価額が上がる
各車両に備えられている「点検整備記録簿」に定期点検を受けていることを記載しておくことで、自動車の下取りや中古車買取りに出した際に査定額が上がります。これは、点検を受けていることで、「きちんと整備されている」という安心感が付加価値となるのです。
■事故時の法的責任が軽くなる可能性がある
こちらは「必ず軽くなる」とは言い切れませんが、自動車の整備不良が原因で事故を起こした際、法定点検を受けていることで運転者の法的責任が軽くなる可能性があります。
法定点検の相場は、1万円~1万7,000円ほどですので、上記のメリットも考慮して点検の実施を検討するようにしましょう。
車検の費用を安くする方法
ここからは、車検費用の相場や安くする方法についてご紹介をしていきます。また、その際のメリット・デメリットについても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
業者を選ぶ
車検は基本的に運輸支局で行いますが、国から指定工場と定められている場所でも受けることができます。車検を受けられる場所は以下のとおりです。
- 自動車ディーラー(トヨタ、ホンダなど)
- カー用品店(オートバックスなど)
- ガソリンスタンド
- 車検専門店(コバックなど)
- 整備工場
- ユーザー車検(運輸支局へ自分で持ち込む)
一般的には自動車を購入した自動車ディーラーに車検を依頼することが多いのですが、「引越し後、近くに認定工場を持つ自動車ディーラーがない」「同じ内容であるなら安く済ませたい」ということもよくある話です。
それでは、上で挙げた業者がどのような形で車検を行っているのか、特徴を順番にご説明していきます。
■自動車ディーラー
自動車ディーラーで実施する車検は最も費用がかかり、整備費用を加算すると15万円ほどになることもあります。しかしながら、車検を受けるのはディーラーで販売をしている自動車なので、その構造や取り扱いに詳しく、安心して任せることができます。
また、費用は高くなっていますが、「ガソリン満タンサービス」「洗車券プレゼント」などのお得なサービスが付いていることも多く、一目に金額だけで決めるのは早計かもしれません。代車の貸し出しをしているので、車検の期間も自動車が必要という人は、わざわざレンタカーを借りに行く手間も省けるほか、気になっていた車種に乗れる機会にもなるのです。
しかし、なかには整備工場が併設されていないディーラーもあるため、車検を申し込む際には事前に確認が必要です。
■カー用品店・ガソリンスタンド
車検費用の相場が2~6万円と安めのカー用品店やガソリンスタンドは、「カー用品を買いに来たついでに」「ガソリンを入れに来たついでに」といったように、手軽に車検の申し込みができるのがメリットと言えるでしょう。ただし、自動車ディーラーと比較すると、その車種に対する専門性は低くなるほか、依頼する店舗や担当者によって作業の質が異なることがあります。
また、ガソリンスタンドにおいては、スタンド内で車検を実施することができず、運輸支局に車両を持ち込む必要があります。そのため、車検が完了するまでに時間を要することがあります。自動車ディーラーと異なり、代車の貸し出しがないこともあるので、車検の期間も自動車を使用したい人はレンタカーなどを利用しなければならない可能性もあります。その場合は、レンタカーの費用を車検費用に加算して、ディーラーとどちらがお得なのか試算するようにしましょう。
■車検専門店
車検専門店は、車検を専門にしているということもあり「低価格」かつ「作業が早い」ことが最大のメリットです。しかしながら、あくまで「車検」の専門店ですので、故障個所の修理や部品交換に弱いというデメリットもあります。
車検に出す自動車に不具合がなければ非常にコストパフォーマンスが良いのですが、修理や部品交換が発生する場合には追加の費用や別の場所で作業が必要となり、時間を要することがあります。自動車の状態などを加味してから利用を考えると良いでしょう。
■整備工場
整備工場は大きく分けて「認定工場」と「指定工場」の2種類があり、どちらも分解整備や修理を行うことができます。しかしながら、車検については次のような違いがあります。
- 指定工場:場内で実施可能
- 認定工場:場内で実施不可
つまり、指定工場であれば時間もあまりかかりませんが、認定工場の場合は運輸支局へ車両の持ち込みが必要となるため、自動車が手元に戻ってくるまで時間がかかります。近くの整備工場への依頼を検討する場合は、その工場が「指定」なのか「認定」なのかを確認しておくと良いでしょう。
■ユーザー車検
ユーザー車検とは、自身で運輸支局へ車両を持ち込んで車検を実施する方法です。そのため、業者に支払う手数料が発生せず、法定費用のみが必要となるため、最も安く済ませられる方法です。
ただし、車両を持ち込む際の書類の準備や、車検において不備があった場合の調整や修理は自分で行わなければなりません。また、不備があった際には再度車検を受けなければならないので、逆に費用がかかってしまうこともあり得ます。費用は最も安いのですが、手間や知識を要するため、誰もが気軽に利用できる方法とは言えないでしょう。
業者別の車検費用・メリット・デメリット
業者 | 費用の相場 | メリット | デメリット |
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自動車ディーラー | 法定費用+約4~10万円 |
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カー用品店・ガソリンスタンド | 法定費用+約2~6万円 |
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車検専門店 | 法定費用+約3~8万円 |
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整備工場 | 法定費用+約3~8万円 |
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ユーザー車検 | 法定費用のみ |
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※法定費用は車の種別によって異なる(軽自動車:約3万円、小型自動車:約4.5万円、中型自動車:約5万円、大型自動車:約6万円)。
軽自動車の車検について
乗用車と軽自動車のどちらにおいても「自動車重量税」「自賠責保険料」「印紙代」がかかります。自賠責保険料や印紙代については大きな差はありませんが、重量税は数万円の差があるため、「車検費用の節約」の観点からは無視できません。
【軽自動車と乗用車の重量税】
新規 | 継続(2年) | ||
---|---|---|---|
軽自動車 | 9,900円 | 6,600円 | |
小型自動車 普通自動車 | 1000kg以下 | 24,600円 | 16,400円 |
1500kg以下 | 36,900円 | 24,600円 | |
2000kg以下 | 49,200円 | 32,800円 |
上記からもわかるように、重量税のみで最大約4万円の差があります。このことは、軽自動車のほうが「維持費が安い」と言われる一因にもなっている事実なのです。乗用車に対する強いこだわりや、購入すべき特別の理由がないようでしたら、軽自動車を選択するのが賢い節約方法であると言えるでしょう。
車検や点検費用込みのカーリースもある
車検費用や点検費用は、節約することができるとはいえ、たくさんのお金がかかることが分かりました。ここでは、カーリースやレンタカーといった、車検や点検のための費用がかからない「自動車の乗り方」をご紹介します。
カーリースとは、契約者が選んだ新車をリース会社が購入し、契約者は月々決められた金額を支払うことでその自動車を利用することができるというものです。簡単に言うと、「所有の名義はリース会社、使用者はあなた」ということです。一方レンタカーは、自分が利用したい期間に応じたレンタル料金をレンタカー会社に支払って、自動車を利用するものです。
レンタカーの場合、貸出の「時間」や「日数」によって金額が異なりますが、カーリースの場合は月々の金額が固定されています。その中には車検や点検費用が含まれていることもあるので、ローンを組むよりもお得に自動車を利用できる場合もあります。
車検費用込みのカーリースや、車のサブスクリプションについての詳しい解説は、以下の記事をチェックしてみてください。
まとめ
自動車の維持費のなかでも大きな割合を占める車検は、利用する業者を選択することで費用を抑えることができます。しかしながら、自動車の状態や経過年数によっては、部品交換や修理が必要となるため、節約を意識しすぎて重要な故障を見落としてしまった場合、事故につながるリスクが高くなります。業者選びの際は、それぞれの特徴と自身の自動車の状態をきちんと把握するようにしましょう。
また、車検費用は業者選びだけではなく、「軽自動車」を選択することや「カーリース」を利用することで抑えることも可能です。維持費やローンの支払いについて考える際は、車検だけではなく、自動車の所有の仕方も考慮するようにすると良いでしょう。