10月も節約傾向が続く。最低賃金引き上げや年収の壁解消など、経済対策の効果に期待

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

2023年10月6日に総務省が発表した「家計調査 2023年8月分」によると、2人以上の世帯における消費支出は29万3161円でした。

物価の変動を除く実質で見ると、2022年8月比で2.5%減少しています。

8月はどのような項目で消費が抑えられていたのでしょうか。

家計調査から見える結果をもとに、10月以降の消費動向について解説します。

支出が抑えられていた項目


出典:総務省「家計調査(家計収支編)2023年8月分」

消費支出の内訳としては「食費」が9万1014円で、実質2.5%マイナスとなりました。

食品価格の値上げが続く中、食費は11ヵ月連続で減少している項目です。

物価高の影響によって、支出を減らす動きが続いているといえるでしょう。

日本生活協同組合が2023年5月に実施した「節約と値上げの意識についてのアンケート調査」では、「ふだんの食事」について節約を意識している人が60.9%にのぼりました。

前年の同調査と比べて、18.8ポイント増加しており、食費への節約意識が一層高まっていることが伺えます。

一方、帝国データバンクの調査によると、食品の値上げは10月をピークに落ち着くと見られています。

しかし、食費への節約意識が浸透しているため、引き続き食費の消費支出は減少傾向が続くと考えられます。

教育費も減少傾向

「食費」以外の項目では、8月は「教育」の支出が6,999円と、実質13.6%減少しました。

習い事の月謝や塾の授業料などにかかる支出が減少しています。

物価高になると、教育費を抑える傾向は、2022年にも見られました。

住友生命が2022年10月に実施した「わが家の台所事情アンケート」によると、約4割の家庭が、子どもの習い事を「削減」もしくは「やめた」と回答しています。

教育費への支出が減少している状況も、物価高による家計の圧迫が影響しているといえるでしょう。

10月以降の消費動向はどうなる?

東芝データ株式会社が、約150万人のレシートデータから、全国のスーパーでの買い物動向を調査しました。

出典:東芝データ株式会社「全国のスーパーでの買い物平均購入金額や平均単価・平均購入数量」

2023年9月の1人1日1店舗あたりの平均購入金額は、2,728円でした。

2023年8月に比べて約3%のマイナスとなっています。

一般的に、消費支出が減少するのは「収入の減少」や「物価やサービス料の高騰」が主な要因です。

厚生労働省が調査している「毎月勤労統計調査」によると、2023年8月の実質賃金は昨年同月比でマイナス2.5%でした。

17ヵ月連続で実質賃金がマイナスとなっています。

物価高にもかかわらず、賃金が減っていることで、家計が圧迫されている状況が続いている状況が伺えます。

10月以降も、賃金の上昇がなければ、引き続き支出を抑える動きが続くといえます。

10月は、最低賃金の改定や年収の壁を解消する政策が発表されるなど、賃上げに向けた経済対策が行われています。

こうした対策が消費支出の増加につながるか、引き続き注目が集まります。

出典
  • 総務省「家計調査(家計収支編)2023年8月分」
  • 東芝データ株式会社「全国のスーパーでの買い物平均購入金額や平均単価・平均購入数量」

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