物流業界の人手不足が懸念されている「2024年問題」の対策として、政府は10月6日「物流革新緊急パッケージ」を了承しました。
「物流革新緊急パッケージ」では、再配達の割合を減らすための方策などが盛り込まれています。
この記事では、2024年問題の概要と物流革新緊急パッケージについて解説します。
「置き配」「コンビニ受取」でポイントが付与される。物流革新緊急パッケージが実証事業開始へ


【記事執筆】FP
川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
2024年問題の概要
2024年問題は、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」が適用されることにより、物流業界に以下のような影響が生じる問題の総称です。
- ドライバーの人材不足
- ドライバーの収入減少
- 運送業者の売上の減少
労働基準法では、労働時間について月100時間未満、年間で720時間が上限とされていますが、物流や医療など一部の事業については猶予されていました。
2024年4月からは、物流業界でも労働時間の上限が適用されることになり、ドライバー不足が起きるといわれています。
出典:内閣官房「物流革新に向けた政策パッケージのポイント(案)」(以下同)
政府のシミュレーションでは、このまま対策を講じないと2024年度は14%、2030年度には34%の輸送力が不足すると指摘されています。
輸送力の実態をみると、1運行にかかる平均拘束時間のうち、荷待ちや荷役に約3時間を要していることがわかります。(※荷待ち:送り主や物流施設の都合で待機している時間、荷役:荷物の積み下ろしに要する時間)
こうした実態を受け、「物流革新緊急パッケージ」では、荷待ちや荷役の時間の削減を中心とした対策が実施される見通しです。
物流革新緊急パッケージの概要
「物流革新緊急パッケージ」に盛り込まれている対策は、以下の通りです。
- 荷役作業の自動化・機械化
- 倉庫の脱炭素化
- EV(電動車)トラック導入の推進
- 再配達率の半減に向けたインセンティブの付与
- トラックの大型化等によるモーダルシフト
- 自動運転の促進
例えば、「再配達率の半減に向けたインセンティブの付与」については、「コンビニ受取」や「置き配」を選択した利用者にポイントを付与する実証事業を行います。
また、「ゆとりのある配送日時を指定した利用者」へのポイント付与についても、実証事業を行います。
ヤフー株式会社は、最短お届け日より遅い配達日を選んだ利用者に、PayPayポイントを付与するサービスを行っています。
こうしたサービスを展開している事業者への支援についても検討する見通しです。
2024年問題を間近に控え、どのような対策がとられるのか、「物流革新緊急パッケージ」に注目が集まります。
- 内閣官房「物流革新に向けた政策パッケージのポイント(案)」