【最低賃金】10月から引き上げへ。パートの年収は変わらず、労働時間は減っている

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

10月に入ると、各都道府県における最低賃金が改定されます。

2023年度の最低賃金は、全国加重平均額で1,004円となり、初めて1,000円を超えます。

10月から賃上げする企業もありますが、中小企業は、最低賃金の引き上げをどのように感じているのでしょうか。

この記事では、10月から引き上げられる最低賃金が、中小企業や生活に与える影響について解説します。

全国の最低賃金はこちらの記事「【2023年10月】全国の最低賃金一覧」を参照してください。

最低賃金の引き上げを中小企業はどう感じているのか?

株式会社ネットオンは、中小企業の人事・採用担当者に「最低賃金引き上げに関するアンケート」を実施しました。

出典:株式会社ネットオン「最低賃金引き上げに関するアンケート」(以下同)

その結果、63.3%が「賃金を引き上げる予定」と回答しています。

また、約4割の企業は「最低賃金を下回っているので賃上げを実施する」と回答しています。

最低賃金の引き上げによって、企業の業績に関係なく従業員の給与水準を見直す必要があるので、中小企業にとっては負担になっているといえるでしょう。

実際に、賃金を引き上げる予定の中小企業のうち、90.2%が「負担に感じる」と回答しています。

企業にとって負担となるのは、賃金だけではありません。

賃金が上がることによって、アルバイトやパートで働く人たちの「働き控え」が発生することも課題です。

最賃が上がると「働き控え」が生じる

最低賃金が上昇した場合、アルバイトやパートで働く人は、働く時間をいままでより短く調整する可能性が高くなります。

労働時間の調整を引き起こす原因が「年収106万円の壁」です。

「106万円の壁」とは、勤務先の事業規模や雇用条件に応じて社会保険への加入が必要になる年収ラインです。

「106万円の壁」を超えると、社会保険料の負担が発生し、手取り額が減少する可能性があります。

野村総研の「年収の壁による働き損の解消を―有配偶パート女性における就労の実態と意向に関する調査」によると、夫の年収が500万円で、妻の年収が106万円を超えた場合、世帯の手取りが24万円減少することがわかっています。

また、妻の年収が106万円を超えた場合、元の手取り額と同じ水準にするには、年収を138万円まで上げる必要があります。

こうした課題があるため、アルバイトやパートで働く人は、賃金が上がると、年収が「106万円の壁」を超えないように、労働時間を調整します。

野村総研の同調査によると、パートタイム労働者の年収はほぼ横ばいで推移している一方、1人あたりの月間労働時間は約80%(※)まで減少しています。(※2000年を100としたとき)

こうした問題を解消するには、賃金の引き上げだけでなく、手取り額が増える仕組みづくりも、同時に必要になるでしょう。

政府は、「年収の壁」の撤廃に向けて、支援策を実施する見通しです。

詳しくはこちらの記事「「年収の壁」解消へ。従業員1人につき最大50万円の助成金」を参考にしてください。

出典
  • 株式会社ネットオン「最低賃金引き上げに関するアンケート」

キーワードで記事を検索