国税庁は、タワーマンションを利用した節税対策、いわゆる「タワマン節税」に対し、2024年1月をめどにルールの見直しを実施する予定です。
主に富裕層から人気のタワマン節税ですが、どのように見直されるのでしょうか。
この記事では、タワマン節税の概要と見直しが検討されている内容について解説します。
【タワマン節税】ルールの見直しへ。タワマンの相続税が高くなるかもしれない


【記事執筆】FP
川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
なぜタワマン節税が活用される?
タワマン節税とは、時価と相続税評価額(※)の差を利用した節税対策です。
(※相続続を行う際に、国税庁が定めた財産の評価基準額)
タワーマンションを相続する場合のメリットは、以下の3点です。
- 専有面積で按分するため土地の相続税評価が低い
- 貸家にしていれば固定資産税評価額を減額できる
- 場所や階層によっては実勢価格(※)が相続税評価額より高い
(※実際の取引が成立する価格)
専有面積で按分するため土地の相続税評価が低い
マンションの物件は、専有面積によって按分されます。
そのため、一戸建てより、土地の相続税評価額が低く、相続税を抑えることができます。
貸家にしていれば固定資産税評価額を減額できる
投資用物件として貸家にしていると、固定資産税評価額が減額されます。
減額される割合は、下表の通りです。
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
場所や階層によっては実勢価格が相続税評価額より高い
実勢価格が相続税評価額より高くなる点は、タワマン節税最大のメリットといえるでしょう。
例えば、1億円で購入したタワーマンションの相続税評価額が6,000万円だった場合で考えます。
相続する財産としては6,000万円の評価ですが、実際に市場で売買される価格は、都心や居住に人気のエリアなら、1億円のままかもしれません。
この場合、相続後にマンションを売却すれば、4,000万円は無税で相続したことになります。
実勢価格は、高層階ほど高額なため、タワマン節税では高層階を利用するほど節税効果が高くなります。
上記のようなメリットを生かし、相続する予定の現金でタワーマンションを購入し、相続税の課税負担を下げる方法が利用されています。
次に、タワマン節税の問題点や、国税庁の是正方針について確認しましょう。
タワマン節税の是正方針
タワマン節税の問題点は、高層階の物件ほど節税効果が高い点にあります。
一般的に、タワーマンションの市場価格は高層階ほど高くなりますが、相続時の評価額は、部屋の広さが同じだと階層に関係なく同じになります。
つまり、部屋の広さが同じ場合、市場価格の高い高層階を購入するほど、節税効果が大きくなります。
出典:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について 資料」
2023年1月に行われた「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」では、東京都のマンションにおける市場価格と相続税評価額の乖離率が3.20倍になっていることが指摘されています。
こうした状況を受け、国税庁は、高層階ほど恩恵を受ける相続税評価額と市場価格の差を利用した節税に歯止めをかける見通しです。
具体的な見直し案として、「相続税評価額」の算定ルールを、「市場価格の4割前後」から「市場価格の6割」まで引き上げる方針です。
「市場価格の6割」は戸建ての相続税評価額の算定基準となっており、同程度の割合とすることで不公平感を解消する狙いです。
ルール変更が行われれば、タワマン節税を行っている富裕層だけでなく、居住目的で購入している中間層にも影響する可能性があります。
タワマン購入を検討している人や、タワマン居住者は、タワマンの相続税評価額の算定ルールについて、今後の動向を注視する必要があるでしょう。
- 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について 資料」