【平均給与】上場企業では過去20年で最高額に。中小企業でも2014年以来最高水準の賃上げ。それでも実質賃下げという現実も

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

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総務省が2023年7月28日に発表した「2020年基準消費者物価指数(東京都区部2023年7月分速報)」によると、総合指数は105.5で、前年同月比で3.2%の上昇が見られました。

物価が上昇する中、給与水準はどのように推移しているのでしょうか。

この記事では、上場企業の平均給与について帝国データバンクの調査結果をもとに解説します。

平均給与の動向

帝国データバンクが、約3,800社を対象に「平均年間給与額」についての調査・分析を実施しました。

出典:帝国データバンク「上場企業の「平均年間給与」動向調査(2022年度決算)」(以下同)

調査によると、2022年度の平均給与額は「638万円」でした。

過去20年で最高額となり、2021年度の624万円と比べて14万円増加しています。

平均給与が前年度より増加した企業は68.9%にのぼりました。

さらに、4社に1社は「30万円以上」年間給与が増加したと回答しています。

帝国データバンクの調査では、上場企業の平均給与は2023年度も上がると見込んでいます。

上場企業に限定すると平均給与は上昇していましたが、企業規模別でみるとどのような状況なのか、確認していきましょう。

中小企業の平均給与の状況

連合が調査した2023年春闘の中間報告によると、従業員300人未満の中小企業の賃上げは4,982円で、2022年と比べると3,210円増加しています。

従業員数の少ない企業でも賃上げが行われています。

とはいえ、物価上昇に比べると、賃金の伸びは下回っています。

日銀が発表した2023年度の消費者物価指数の見通しは、7月時点で2.5%であったのに対し、今回の春闘による賃上げ分の加重平均は2.12%でした。

つまり、今後の物価上昇に対して、賃金上昇率は下回っており、実質賃金はマイナスに振れているといえます。

2023年の春闘で賃上げをした中小企業の割合や、賃上げ額は、2014年以降で最も高くなりました。

とはいえ、上場企業に比べると経営体力が弱い傾向にある中小企業が、賃上げをいつまで維持できるかはわかりません。

実質賃金のマイナスに振れている状況を加味した賃上げが行われるか、引き続き企業の取り組みが重要になるでしょう。

また、物価高騰が長引けば、企業努力だけでなく、政策による支援も必要になるでしょう。

今後、実質賃金をプラスにするために、どういった支援が行われるのか注目が集まります。

出典
  • 帝国データバンク「上場企業の「平均年間給与」動向調査(2022年度決算)」

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