政府は「異次元の少子化対策」の一環として、2028年度までに雇用保険の加入要件を拡大する方向で検討を始めました。
雇用保険の加入要件が拡大すると、どのような働き方をしている人に影響があるのでしょうか。
この記事では、雇用保険の現行の加入要件や、制度の見直しをする背景、雇用保険に加入した場合のメリット・デメリットについて解説します。
雇用保険の加入要件が見直しへ。育児休業給付が受けられるようになるが、手取りが減るかもしれない


【記事執筆】FP
川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
雇用保険の加入要件
雇用保険の加入要件は以下の通りです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
パートやアルバイトといった働き方を問わず、上記の要件を満たせば加入対象となります。
雇用保険に加入していると、失業等給付や育児休業給付などの各種給付を受けることができます。
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
雇用保険の見直し背景
出典:厚生労働省「雇用のセーフティネットの在り方について」(以下同)
厚生労働省の調査によると、労働時間が週20時間に満たない雇用労働者は約718万人です。
雇用形態は、「パート・アルバイト」(80.2%)が最も多く、「正規の職員・従業員」(9.1%)と続きました。
また、性別構成比は、男性が27.3%、女性が72.7%です。
雇用保険の加入要件を見直すことで、パートやアルバイトとして働く、子育て世帯の女性も育児休業給付を受けられるようにし、出産や子育てを後押しする狙いがあります。
雇用保険に加入するメリット・デメリット
雇用保険に加入した場合に考えられるメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:失業等給付や育児休業給付が受けられるようになる
- デメリット:雇用保険料の支払いにより手取りが減る
失業等給付や育児休業給付が受けられる点は、雇用保険に加入するメリットといえるでしょう。
雇用保険に加入すると、雇用保険料の支払いが発生します。
これまで雇用保険料の支払いを避けるために、就業時間をセーブしていた人にとっては、手取り金額が減ってしまう可能性があります。
手取り金額の減少分をカバーするために就業時間を増やすと、次は社会保険への加入が必要になる可能性もあります。
社会保険は、次の要件を満たすと加入が必要になります。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8000円以上
- 2ヵ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
社会保険料を支払うことになれば、さらに手取り金額が減少する可能性があります。
政府は今後、加入対象となる所定労働時間をどの程度引き下げるかを議論し、2024年に法案の提出を目指す見込みです。
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
- 厚生労働省「雇用のセーフティネットの在り方について」