「大規模な金融緩和」継続へ。住宅ローンの金利や生活にどのような影響があるかを解説

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

日本銀行(以下日銀)の植田総裁は、2023年4月28日に実施された金融政策決定会合で、「大規模な金融緩和を引き続き継続する」意向を表明しました。

同時に、「副作用に配慮しつつ持続的な枠組みを探っていく」と金融緩和政策の修正の可能性についても示唆しています。

日銀の金融政策は、住宅ローン金利や日常生活にどのような影響があるのでしょうか。

また、金融緩和における「副作用」とはどのような現象なのでしょうか。

この記事では、日銀の金融緩和が住宅ローン金利に及ぼす影響や、金融緩和の副作用について解説します。

住宅ローン金利への影響

日銀は「2%の安定的な物価上昇(インフレ)」を早期に達成させるため、以下の金融緩和策を実施しています。

  • 短期金利はマイナスを適用
  • 長期金利は国債の買入れでゼロ%程度を維持

金融緩和について、日銀の植田総裁が記者会見で発言した概要は以下の通りです。

  • 大規模な金融緩和を継続する
  • 現状では長期金利を抑え込む政策は適当
  • 副作用に配慮しつつ、持続的な枠組みを探る
  • マイナス金利政策は金融緩和のベース。継続が適当
  • 適切なタイミングで正常化を行う

住宅ローンの金利に、今後どのような影響があるかを確認していきましょう。

変動金利の見通し

変動金利は、現時点では一気に上昇する可能性は少ないでしょう。

変動金利は短期金利に連動して上下するため、マイナス金利が適用されている状況が続く場合、低金利の状態が継続します。

とはいえ、このままの低金利の状態が必ず続くとは言い切れません。

世界的にはインフレの加速を抑えるため、金利の引き上げが実施されています。

日本の金利が低い状況が続くと、金利の高い通貨にお金が集まり、円安が進行するリスクが高まります。

円安が進行すると、資源調達コストの高騰や輸入品の値上げといった、国内の家計の負担が増える可能性があります。

こうした状況を回避するために、いずれは利上げに踏み切る可能性があります。

固定金利の見通し

固定金利は上昇する可能性があります。

日銀は、長期金利を低く抑えるため、国債を買い続けている状況です。

大量の国債を買い入れる対策は、債券市場の機能低下を招いていると懸念されています。

今後、国債の買入れが持続できなければ、長期金利を引き上げて、国債の売却を実施する可能性があります。

住宅ローン金利の選定にあたっては、日銀の政策を確認するだけでなく、借入額や返済計画をよく検討したうえで選択することをおすすめします。

住宅ローンの金利タイプ選択については、こちらの記事「住宅ローンの金利相場|金利タイプ別のメリット・デメリットやどんな人に向いているか」も参考にしてみてください。

日銀の金融緩和で生じる「副作用」

日銀の植田総裁は、「金融緩和によって生じた副作用について1年から1年半程度をかけて点検していく」と発表しています。

「金融緩和によって生じる副作用」とされているものは、次の3点です。

国債市場の機能低下
大量の国債を日銀が買い入れすることで、国債の取り引きが減少する。

銀行の経営体力の低下
銀行の貸出金利が低下して、銀行の収益を圧迫する。地方銀行などを中心に、経営が苦しくなる可能性がある。

経済活動の低下
低金利が続くと、銀行の貸し渋りによって、企業や個人の経済活動が低下する可能性がある。

金融緩和策は「2%の安定的なインフレ」を達成させるために実施されていますが、今後はこうした「副作用」や、生活への影響を考慮しながら、政策を評価していく必要があります。

キーワードで記事を検索