産後の国民年金保険料免除期間が「4ヵ月」から「1歳まで」へ。異次元の少子化対策でフリーランスの育児環境を支援

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

3月31日、「異次元の少子化対策」のたたき台が発表されました。

さまざまな子育て世帯への支援策が発表された中で、フリーランスへの支援についても触れられています。

どのような制度が検討されているのでしょうか。

この記事では、フリーランスが抱える育児の課題と、政府の新しい子育て支援策について解説します。

フリーランスが抱える子育て課題

2020年に内閣官房が発表した「フリーランス実態調査結果」によると、フリーランスの人口は462万人(副業含む)でした。

フリーランスの注目度が高まる一方で、育児に関する問題点も指摘されてきました。

フリーランスが子育てで直面する課題は、以下の2つです。

  • 育児休業給付金が受けられない
  • 社会保険料が免除されない

フリーランスの収入や世帯の家計にも影響を与えるそれぞれの課題について、確認していきましょう。

育児休業給付金が受けられない

企業に雇用されていると、産前6週間と産後の8週間は就業しません。

また、子どもが1歳になる誕生日の前日までは、育児休業期間として休職できます。

休職中は、育児休業給付金が支払われるため、世帯の収入の減少幅は小さくなります。

フリーランスは企業から雇用されていないため、産休・育休制度がありません。

そのため、育児休業給付金も対象外になります。

社会保険料が免除されない

会社員として雇用されていると、育児休業中は社会保険料の負担が免除されます。

フリーランスの場合、国民年金保険料は出産日の前月から4ヵ月は免除されますが、国民健康保険料は免除されません。

育児で仕事ができない場合の収入減や、社会保険料の負担が発生する点から、出産をためらう人もいます。

こうした課題を解消するべく、政府から新しい支援策が発表されました。

政府によるフリーランスの子育て支援策

「異次元の少子化対策」のたたき台では、フリーランスへの子育て支援策として、次の2点が発表されました。

  • 社会保険料の免除内容を拡充
  • 育児給付制度の創設

それぞれの支援策について、概要を確認しましょう。

社会保険料の免除内容を拡充

社会保険料の免除に関しては、以下の2点が拡充する見通しです。

  • 国民年金保険料の免除期間の延長
  • 産前産後の国民健康保険料を免除

国民年金保険料の免除期間については、従来の4ヵ月から、「子どもが1歳になるまで免除とする」案で検討が進められています。

また、国民健康保険も産前産後4ヵ月間は保険料が免除される見通しです。

開始時期や財源のほか、男性を対象に含めるかについては、今後の議論で検討されます。

育児給付制度の創設

具体的な支援の内容は明らかになっていませんが、非正規労働者や自営業、フリーランスを対象とした「新しい育児給付制度」が創設される見通しです。

支給する条件や、給付金額がいくらになるのか、今後の制度設計にも注目が集まります。

政府は、2023年6月の「骨太の方針」で結論をまとめる予定です。

出典
  • 内閣官房「フリーランス実態調査結果」
  • 厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」
  • 日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」

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