政府が発表した「異次元の少子化対策」のたたき台では、さまざまな子育て支援策が盛り込まれました。
たたき台の中には、子育て世帯に対する住宅購入の支援策についても盛り込まれています。
この記事では、住宅購入に関する支援策が打ち出された背景や、支援策の概要について解説します。
フラット35の金利が引き下げへ。「18歳未満の子どもがいる」「夫婦のどちらかが39歳以下」の世帯が対象


【記事執筆】FP
川辺 拓也
3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。
住宅購入の支援策とは?
子育て世帯への住宅に関する支援策として、以下の2点が打ち出されました。
- 公営住宅やURへ優先的に入居できる取り組み
- 住宅購入にかかわる負担の軽減
ここでは、「住宅購入にかかわる負担の軽減」について解説します。
具体的には、「フラット35」の金利が引き下げられます。
支援の対象となるのは、以下のケースに当てはまる世帯です。
- 18歳未満の子どもがいる世帯
- 夫婦どちらかが39歳以下の世帯
すでに住宅ローンを利用している世帯は対象となりません。
また、多子世帯に対しては、金利をさらに引き下げる方向で検討しています。
さらに、所得による制限は設けない方針です。
「フラット35」の金利は、2023年4月時点で年1.90%(※)です。(※借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、最も多く提供されている金利)
「異次元の少子化対策」のたたき台では、金利の具体的な引き下げ幅は明記されていません。
金利の下げ幅と適用期間が、今後どのようにまとまるか注目です。
住宅ローンの金利引き下げを実施する背景
返済計画が立てやすい「フラット35」の金利を引き下げて、住宅の購入を促進することが政府の狙いです。
住宅金融支援機構が2023年3月に「住宅ローン利用者の実態調査」の結果を発表しました。
「住宅取得に踏み切れない理由」については、全体の31.2%が「将来の収入や生活への不安」と回答しました。
出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用予定者調査(2022年10月調査)】」
年収別に見ると、年収600万円以下の世帯では、「将来の収入や生活への不安」「自己資金・頭金が不十分」などの金銭面が、住宅購入に踏み切れない主な理由となっています。
次に、金利タイプ別の利用状況を見てみましょう。
出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2022年10月調査)】」
「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2022年10月調査)】」によると、住宅ローンの金利を「全期間固定型」にした人の割合は全体の10%でした。
固定金利の場合、住宅ローンを返済している期間中も金利が変動しないため、金融情勢によって返済額が変わらない点がメリットです。
しかし、低金利が続いていると、変動金利と比べて、金利や返済額を割高に感じてしまうため、選ばれにくい傾向があります。
2023年4月の固定金利は年利で1.90%ですが、具体的にどの程度の金利引き下げを実施するのか、注目が集まります。
なお、フラット35について詳しく知りたい人は、こちらの記事「フラット35は他のローンとどう違う?|メリット・デメリットや種類別の金利比較」も参照してみてください。
- 住宅金融支援機構「フラット35」
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用予定者調査(2022年10月調査)】」https://www.jhf.go.jp/files/400365095.pdf
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2022年10月調査)】」https://www.jhf.go.jp/files/400365161.pdf