「出生数」が過去最低の80万人を下回る結果に。生活に影響を及ぼす可能性も

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

厚生労働省が発表した「人口動態統計速報」によると、2022年の出生数は79万9728人でした。

出生数が80万人を下回るのは、調査を開始した1899年以来初めてとなります。

出生数が低下すると、生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

この記事では、出生数の低下がもたらす影響や、出生数が低下している原因について解説します。

出生数の低下がもたらす影響は

出生数が低下した場合に考えられる影響は、「社会保障費の増加」と「経済成長の停滞」です。

それぞれの項目について確認していきましょう。

社会保障費の増加

財務省の「国民負担率に関する調査」によると、2022年度の国民負担率は47.5%(実績見込み)でした。

社会保障費の負担率は18.8%で、総所得の約5分の1を占めています。


出典:財務省「国民負担率の推移」

出生数の低下は、将来的に社会保障費を負担する人口の減少につながるため、1人あたりの負担が増える可能性が高くなります。

社会保障費の負担が増加すれば、家計の圧迫に直結するため、生活にも影響するでしょう。

経済成長の停滞

出生数の低下は、経済成長を停滞させる可能性があります。

 
出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、15歳から64歳の生産年齢人口は、2021年で7450万人でした。

生産年齢人口は、1995年の8716万人をピークに、減少を続けています。

2029年には、7000万人を下回ると推計され、2065年には4529万人となる予測です。

生産年齢人口が減少していくと、労働力が低下し、経済成長が停滞する可能性があります。

経済成長が見込めないと、企業の成長も期待できないため、賃金が上がりません。

結果的に、生活水準が向上しない可能性があります。

なぜ出生数は減少を続けるのか

出生数が減少している要因は、大きく分けると2つあるとされています。

  • 婚姻数の減少
  • 経済的理由による出産意欲の低下

厚生労働省の人口動態調査によると、2022年の婚姻数は51万9823件でした。


出典:厚生労働省「人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻」

2000年は79万8138人で、以降は徐々に減少が続いています。

婚姻数が減少すれば、出生数も減少します。

また、現在の生活や将来に対する不安から、教育費などの確保ができないと考え、出産に消極的な人が増えています。

婚姻数を増やし、出生数を改善するためには、財政面や環境面などさまざまな改善が必要です。

政府は「異次元の少子化対策」を掲げていますが、すでに政府機関の推計より10年ほど早いペースで少子化が進んでいます。

社会生活の基盤が従来から大きく変化するなかで、今後どのような対策を講じるのかに注目していきましょう。

出典
  • 財務省「国民負担率の推移」
  • 内閣府「令和4年版高齢社会白書」
  • 厚生労働省「人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻」
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