「130万円の壁」がなくなるかもしれない。年収130万円の社会保険料をシミュレーションしてみた

執筆者:川辺 拓也

【記事執筆】FP

川辺 拓也

3,000人を超える顧客からの相談実績をもとに、社会保障制度や家計に必要な金融知識を分かりやすく提供。2級ファイナンシャルプランニング技能士。金融全般から、お金に関する政策まで幅広く専門領域があり、複数の金融メディアに多数寄稿。

岸田首相は、2月1日の衆議院予算委員会で、社会保険料の負担が発生する「130万円の壁」の問題が働き控えにつながっていることを踏まえ、「制度を見直す」と述べました。

この記事では、「130万円の壁」についての概要と、政府がこれから支援策としてどのような対応をする見通しなのかを解説します。

130万円の壁とは?

いわゆる「130万円の壁」とは、社会保険に加入する義務が生じる年収ラインです。

一般的に、配偶者や親族の扶養内であれば自分で社会保険に加入する必要はありません。

しかし、通勤費や交通費も含めて年収が130万円以上になると、扶養から外れ社会保険に入る義務が発生することから、「130万円の壁」といわれます。

社会保険に加入する場合の主なメリットとデメリットは、以下の通りです。

【メリット】

  • 社会保険料を支払うため、厚生年金を受給できる
  • 扶養から外れるため、自分が稼ぎたい分を気にせず稼げる
  • 傷病手当金など受けられる社会保障が充実する

【デメリット】

  • 社会保険料の負担が必要になり、手取りが減少する
  • 配偶者の福利厚生が受けられなくなる

政府は、さまざまな政策の財源となる社会保険料を確保する目的で、社会保険の加入者を増やしたい狙いがあります。

しかし「130万円の壁」があることが働き控えを招き、社会保険の加入を阻害する要因にもなっています。

年収130万円の社会保険料をシミュレーション

年収130万円の場合、社会保険料はいくらになるのか計算してみましょう。

毎月の給与や賞与から支払われる社会保険料は、以下の項目で構成されています。

  • 健康保険料
  • 介護保険料(40歳以上の場合)
  • 厚生年金保険料

社会保険料は、各都道府県で保険料率が異なるので、ここでは東京都に在住している場合を想定します。


出典:全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)東京」より作成

年収130万円で社会保険に加入すると、年間19万円程度の社会保険料が必要です。

東京都在住で40歳未満の場合、月々の社会保険料は約1万5500円です。

40歳以上の人は介護保険料を支払う必要があるので、月々の社会保険料は約1万6400円です。

パートタイムやアルバイトで収入を得ている人は、手取り収入が目減りしてしまい、負担になる場合があります。

政府は、社会保険に加入することによって発生した保険料分を、一定期間につき穴埋めする給付案などを模索しています。

穴埋め期間や給付額について、詳細は今後検討される見通しです。

今後どのような制度へと変わるのか、引き続き注目が集まります。

出典
  • 全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」
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